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154 ガルスの街


夕刻になる頃になって俺達は無事にガルスの街へと到着することが出来た。

ただ入街する際に、屋根に乗っている鎧オークについて色々と聞かれたのは仕方がないことなのかもしれない……

そりゃあ荷馬車ならまだしも、屋根付き馬車の上に転がしてるだけだから見た目的にもアレだしねぇ?


何とか無事に入街の手続きを済ますことが出来た俺達は、鎧オークの報告をするために冒険者ギルドへ向かうことにしたのだが……



ザワザワザワ……



案の定、屋根の上の鎧オークを見て、街中の人達がざわついている。



「お母さん、あの馬車に死体が乗ってる!」


「シッ! 見ちゃいけません!」



確かにパッと見、人型で鎧とか着てるから死体と見間違えてしまっても間違いじゃない。でも、顔はつぶれているとは言えオークだ。そこのところ間違ってもらっては困る。

そんなこんなで何とか冒険者ギルドへと到着することが出来たのだが、もちろん冒険者ギルド前にも人だかりで大騒ぎになっている。



「レリウスよ、アレどうするんだよ!」


「えっと、どうしようね? シュウ君何かいい案でも無いかな?」


「無いよ? 流石に無茶ぶりすぎない?」


「だよね……」



とりあえず報告するにも馬車を降りなくちゃならない。



「あれ? もしかしてシュウか?」


「えっ?」



突然名前を呼ばれたので声がした方へと振り向くと、そこにアランさんが居た。

そーいやこっちの街の方へと移動していたっけ。



「アランさん!」


「何でシュウがこんなところに……それにその馬車の上に乗せているのって……まさかオークナイトか!?」


「これってオークナイトだったの? 単なる鎧を着たオークじゃ無くて?」


「あぁ、大きさはもちろんのこと、装備からして間違いないと思う。と言うか、この前のオーク討伐の時の上位個体じゃないのか? コレ。」


「えっと、その討伐に参加して無いから分かりませんけど……」



間違いなくその個体だろうけど、一応知らない前提なのでとぼけておく。



「そう言えばそうだったな。俺は直接会ってるから間違いないと思う。でも、どうやって倒したんだ?」


「えっと……一応レリウスが動きを止めた後に俺が魔法で動きを封じて止めを……かな?」


「シュウの魔法ならまだ分かるが、レリウスが動きを封じた? B級の冒険者でもコイツの攻撃を受け止め切れなかったのにか?」


「僕の力では止められなかったですよ。単に上手く不意を突いただけです。」


「それはどうやって……いや、詮索するのは野暮だな。すまん、俺達が倒せなかったのが悔しくてな。忘れてくれ。」


「いえ。僕もシュウ君が居なかったら、同様に此処には居なかったでしょうから、似たようなものです。」


「そうか。」


「お前ら、入り口の前でくっちゃべってないで早く入ってこい! 入口で屯ってたら邪魔でしょうがないだろ!!」



その時、冒険者ギルドの入り口から男性が出てきて怒り出した。



「ギルド長!」


「ギルド長?」



どうやら怒鳴っているのはギルド長らしかった。確かにガタイも良いし、強そうな人物だな。



「何をしている、早く来んか! アランもそいつらの知り合いなら一緒に来い!」


「仕方ないな。ほらシュウ行くぞ?」


「えっと?」


「行くしかないだろうね。」


「だな。」



行くのは確定か。仕方ない。



「あ、あの、ギルド長? ちょっと良いですか?」


「何だ?」


「馬車の中に依頼中の護衛対象が居るのですが、どうしたら良いでしょうか? 後、屋根のオークも。」


「護衛? だからこの馬車なのか。なるほどな。

 遭遇した時に一緒に居たのなら話を聞かせてもらいたい。可能であれば一緒に来て貰えるように頼んでくれ。」



まぁ、そうなるよな。俺は馬車の扉を開けてアリスへと確認することにした。



「アリス様、如何いたしましょうか?」


「それでしたら御一緒させていただきます。」


「助かります。」


「じゃあ全員来てくれ。オークは職員に対応させる。おい! 後を頼んだぞ。」


「わかりました。」



いつの間にかに来ていた冒険者ギルドの職員が返事をしていた。なら後は任せても良いのかな?



「ほらシュウ君、行くよ。」


「あ、はい。」



レリウスに呼ばれたので冒険者ギルドの中へと入ることにした。

そして俺達は2階の奥にあるギルド長室へと案内された。



「適当に座ってくれ。」



とは言ってもテーブル席でギルド長が対面に座ったら後は2人しか座れない。

ここはアランさんとアリスに座ってもらうのが良いだろう。



「アランさんと、アリス様が座ってください。」


「そうか。」


「分かりました。」



2人が席に着いて俺達はその後ろに立った。



「じゃあ、話を……」



バンッ!



「シュウ君! シュウ君! シュウ君~♪」



突然扉が開いたと思ったら誰かが飛んで抱き着いてきた。と言うか、こんなことする人は1人しか知らない。



「エ、エレンさん!? どうしたんですか?」


「だって、シュウ君が来てるって聞いたら居ても立ってもいられなくてぇ~♪」


「おいエレン、ギルド長の前だぞ。」


「ぶぅ! いいじゃない!」


「まぁ、エレンも関係者には違いないし、そのまま居ても構わんよ。」


「さすがギルド長、分かってる~♪」


「……ゴホン。話を進めるぞ。

 アラン、あのオークは例の討伐で遭遇したオークナイトで間違い無いか?」


「ああ。大きさと言い、装備と言い、間違い無いと思う。

 それに、あの様な個体がこの近辺に2体も居るとは思えないしな。」


「そうか……で、アラン達の討伐隊でも倒せなかったオークナイトをこいつらが倒した……と。ちなみにどうやっって倒したんだ?」


「えっと……」



レリウスが困った顔をしながら俺とサムを見てきた。言って良いのかどうか迷ってるみたいだな。



「安心しろ。ここでの話は他には漏らさん。だが、お前達みたいな若造で討伐出来したという確証が欲しいだけだ。」


「それでしたらお答えします。」



レリウスが遭遇した時から討伐までの話をすることになった。



「サム、例のあれを出してくれないか?」


「ちょっと待ってろ。」



サムがそう言うと、背負い袋からギルドカードを取り出した。



「コレは! ゴーンのか!? ここにギルドカードが有るってことはまさか!」


「ええ。彼はオークナイトに追いかけられていました。そしてそのまま……」


「そうか……」


「オークナイトは、その後に俺達のことも見つけたらしく、襲い掛かってきました。

 馬車を走らせて逃げたのですが、馬が疲れて動けなくなってしまったので追いつかれてしまったんです。」


「なるほど、それで戦闘になったって訳か。」


「はい。最初、シュウ君の魔法で攻撃をしたのですが、盾で防がれてしまったので、僕が前に出ることにしました。」


「盾? 奴は盾を持って……そうか、アイツの盾を奪ったのか。くそっ!」


「それでオークナイトの攻撃を僕が盾で受けたのですが、体格差も有って吹っ飛ばされてしまいまして、もう駄目だと思った時に、前にシュウ君が使った魔法を思い出したんです。」


「魔法? どんなのだ?」


「目くらましの魔法です。もともとはシュウ君が自爆した魔法だったんですけどね。」



レリウスよ、そこは言わなくても良いんじゃ無いのかな?



「目くらましってことは攻撃性は無いんだな? 使ってもらうことは可能か?」


「はい。でも良いんですか?」


「かまわんよ。」


「それじゃ、行きます。」



それを聞いた俺はすぐさま後ろを向いて目を閉じた。



「うわぁ!」


「くぅ!」


「きゃあ!」


「うぎゃ!」


「目、目が!」



案の定、全員の目がやられていたんだが、何故知ってるハズのサムまでが被害に遭ってるんだ?



「こんな感じですね。」


「分かった。と、とりあえず少しだけ待っててくれるか?」


「わかりました。」



少ししてようやく落ち着いたみたいだ。



「まだ目がチカチカしているぜ。確かにこれなら目くらましになるな。」


「はい。それでその隙にシュウ君が魔法で動きを封じると同時に止めを刺しました。」


「その魔法は?」


「草むしり魔法とアイスアローです。」


「草むしり? 何だそりゃ?」


「あの魔法か……」


「アランは知っているのか。」


「前にシュウに魔法を掛けて貰ったことが有りまして、あれなら確かに動きを封じられるな。」


「どんな魔法なんだ?」


「地面が揺れて立って居られなくなる感じの魔法だな。」


「変わった魔法だな。アランがそう言うなら凄い魔法なのだろう。

 よし、だいたいのことが分かった。それでアリス様でしたかな。何か違う点や補足等は有りますか?」


「特に有りませんわ。」


「だいたいのことはこれで分かった。オークナイトを討伐出来そうなことも確認できたし、お前達で倒したで間違い無いだろう。

 そろそろ査定も終わっているだろうから、今回の討伐を持ってお前たちのランクを1つ上げることにする。カウンターで手続きして貰ってくれ。」


「「「はい!」」」


「以上だ。」



話が終わったので、俺達はギルド長室を後にすることにした。


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