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152 後処理


「あ、あの……大丈夫でしょうか?」



周囲の状況から安全になったと判断したらしく、アリスが馬車から恐る恐る顔を出してきた。



「アリス様、敵は無事に撃退することができましたので、安心して下さい。」


「はい。皆様もご無事そうで良かったです。」


「ありがとうございます。もう少ししましたら出発しますので、そのままお待ちください。」


「分かりました。」



アリスが安心して馬車に戻ってくれたので、今後の対応を決めることにした。



「なぁ、コレどうすんだ?」



サムが半分埋まっている鎧オークを指差した。



「コレって多分だけどオークの上位種だよね? 持ち帰りたいけどさすがにこの大きさは無理だよね。」



アイテムボックスなら問題無く持って行けるが、使う訳には行かないしね。



「そうだ! 馬車の屋根に乗っければ運べるんじゃね?」



サムが閃いた! みたいな顔をして言ってきた。



「乗せるって言ってもあの高さまでどうやって乗せるの? 僕達の力じゃ持ち上げられないと思うよ?」


「シュウ、何とかならないか?」


「う~ん。」



全属性魔法が使えるようになったってことは、土魔法も使えるってことだよな?

だったら、アースウォールみたいな魔法で持ち上げて転がせば行けんじゃね?

とりあえず試してみるか。



「アースウォール!」



俺が魔法を唱えると、鎧オークの下から土壁が発生して、馬車の高さまで持ちあげることが出来た。



「よし!」


「なるほど、後は馬車を横に着ければ良いんだね。」


「俺がやるぜ!」



サムがそう言うと、馬車を壁の脇まで移動させた。



「よし、転がすぞ! せーの!!」



ゴロン……ドサッ!



後は3人で力を合わせてて転がすことで、鎧オークを馬車の屋根に乗せることが出来た。



「やった!」


「おっしゃ!」


「これで運べるね。」



早速この場を離れようかと思ったが、何だか馬も辛そうな感じだ。荷物が増えたのも有るだろうが、おそらく先ほど全速力で走らせたのが原因だろうな。



「ねぇ、馬も辛そうだし、此処で少し休憩にしない?」


「そうだね。正直言うと僕も休みたかったんだよね。」


「そう言えば、思いっきり吹っ飛ばされたみたいだけど、レリウスはケガとかは大丈夫?」


「うん。ちょっと打ち身っぽい感じはするけど、骨も折れて無いし、ちょっと休めば問題無さそうだよ。

 心配してくれてありがとう。」


「なら良かった。」


「ケッ! 鍛え方が足りねーんだよ、鍛え方が。もっとしっかり盾をやれってんだ。」


「はははっ、言われちゃったな。うん、サムに安心してもらえるようにもっと頑張るよ。」


「ケッ!」



相変わらずサムはツンデレさんだな。レリウスが心配で仕方がないって感じだ。

さて、とりあえず馬をしっかりと休ませないとな。まずは馬車の金具を外して馬を自由にさせた。

後は錬金術でその辺に落ちている石をを変形させて簡易桶を作った。生活魔法で水を入れておいたので、後は勝手に飲んだりその辺の草を食べたりするだろう。

折角休憩にすることだし、俺達も早めの昼ご飯にして済ませてしまおう。



「ちょっと早いけど昼飯にしちゃおうと思うんだけど、どうかな?」


「そうだね。お願いしても良いかな?」


「俺はちょっとその辺の様子を見てくるわ。」


「うん。よろしくね。」


「じゃあ俺は昼飯を作るから、レリウスはアリスの相手をお願いするよ。」


「わかったよ。」



よし、それじゃあ料理を作るとしますか。

まずは土魔法と錬金術でキッチンを作ることにした。前回の旅で何度も作っているのでそれほど苦労せずに作ることが出来たのは幸いだった。

さて、キッチンも出来たことだし、何を作ろうかな。



「……オークって食えるんだったよな。」



二足歩行しているとは言え、見た目は豚だ。実際高級食材としてオーク肉が有ると言うのも聞いたことがある。

でも、解体しないと肉が用意できないし、また馬車から降ろすのも一苦労だ。うむむ……



「こ、今回は見逃してやる!」



俺はオークの解体を諦めることにした。代わりにホーンラビットの肉を使うことにする。アイテムボックス内のを使うつもりだが、聞かれたらたまたま見つけたと言えば問題無いだろう。

俺はアイテムボックスからホーンラビットの肉を取りだすと、ステーキ用に4枚、後は一口大に切ってスープに入れることにした。

買っておいた丸ネギとシャガイモ、ショウガナイ、ニンニンニクを刻んで肉と一緒に煮込み、塩コショウで味を調えたら完成だ。


ステーキも塩コショウしてから油にニンニンニクを馴染ませてから焼く。十分に火が通ったところでこちらも完成だ。

後はパンを添えてっと。



「出来た……うわっ!」



完成した料理をお皿に乗せて運ぼうと振り返ると、レリウスとアリスが仲良くこっちをジッと見ていた。



「な、何?」


「わ、私はたまたま少し散歩をしようとしていたところです。」


「あれ? 僕と同じで、ちょっと美味しそうな匂いがしてたから気になっていたのでは?」


「れ、レリウス様!?」


「あれ? 違いました? 僕はてっきり……」


「レ、レリウス様、その話はまた今度に致しましょう。」


「あ、うん?」



どうやら匂いに誘われてやってきたみたいだ。アリスは隠そうとしたのに、レリウスがアッサリばらしてしまった。

レリウスよ、君は少し女心と言うか、女性への対応を学んだ方が良いと思うぞ? まぁ、俺も人のことを言えるようなものは持ってないけどさ。



「そ、それよりも、サム様は見当たりませんが、何処かに行かれたのでしょうか?」


「サムは辺りを調べに行くと言って……あれ? まだ戻って来て無いの?」


「俺なら此処だぜ。」


「うおっ! び、ビックリしたなぁ。後ろから突然声を掛けないでよ。」


「悪りぃ、悪りぃ。」



ちなみに俺はサムがこっそりと近づいているのは気が付いていた。と言うか、レリウスの正面に居るんだから背後に居るサムが見えてて当たり前なんだけどな。教えない俺も俺だけどね。



「それで、何処に行ってたの?」


「こいつを取って来たんだ。」



サムがポイとレリウスに何かを渡していた。



「ギルドカードか。」


「持ちかえれば少しは金になるしな。あとはこいつも貰ってきたぜ。」



サムが見せてくれたのは、お金が入った袋と、回復ポーションが2個、後は狩弓と矢が数本だ。

どうやら倒された狩人の装備を取って来たみたいだ。一応冒険者間における暗黙のルールとして、死んだ人の装備は見つけた人の物になると決まっている。

一応、温情で身内に形見として還してくれる人も居るが、基本戻ってくることはほぼ無い。後は、ギルドカードを持ち帰れば、お礼として大銅貨1枚が貰える仕組みなのだ。

サムは臨時収入が入ったことでウハウハだった。



「それって、もしかしてさっき襲われた狩人の?」


「おうよ! へへっ良いだろう! 見つけたもんの勝ちだぜ!」


「だからさっき、率先して様子を見に行ったんだね。」


「まーな。」


「サム、僕達は友達だよね。」


「さあな?」


「サム!?」


「冗談だって、3等分にしよーぜ。」


「サムぅ~!」



3等分と言うことは、どうやら俺も貰えるらしい。予想外だったのでちょっと嬉しい。



「この弓と矢は、俺が貰っても構わないよな?」


「もちろんだよ。シュウ君も良いよね?」


「まぁ、サムしか弓を使わないしね。こっちも問題無いよ。」


「後はポーションだが、これはPT用としてシュウが持っててくれ。」


「了解。」


「後は金だが……」


「幾ら入ってるの?」


「ちょっと待ってろ。……えっと、銀貨2枚と銅貨5枚、大鉄貨7枚ってところか。」



頭の中でパパっと計算してみた。



「3人じゃ割り切れないね。」


「じゃあ、どうすんだ?」


「シュウ君。どうしたらいいかな?」


「えっ? 俺が決めて良いの?」


「計算ならシュウ君が得意だしね。任せるよ。」


「ん~。じゃあ、持ち帰って来たサムの取り分を多くして大銅貨6枚と銅貨9枚にして、俺とレリウスは大銅貨6枚に銅貨8枚。残りはPT資金にするってのはどう?」


「それで構わないよ。」


「俺もそれで良いぜ。」


「じゃあ、サムに銀貨1枚渡すから、大銅貨3枚と銅貨1枚貰えるかな。」


「悪りぃ、今大銅貨の持ち合わせがねーんだよ。」


「だったら僕の分が銀貨で良いよ。大銅貨3枚と銅貨2枚を渡せば良いんだよね?」


「うん。」


「じゃあ、これで。」



俺は銀貨1枚をレリウスに渡してお釣りを受け取った。



「じゃあ、サムは大銅貨7枚渡すから、銅貨1枚を貰えるかな。」


「ほらよ。」



俺はサムに大銅貨7枚を渡してお釣りを受け取った。

後は余った大鉄貨をPT資金に入れてっと。



「うん。これで問題無しと。サム有難う。」


「僕も俺を言わせて貰うよ。ありがとう。」


「あ、うん。お、おう。」



サムは頭を掻いて照れていた。


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[一言] 友情話に腐の香り
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