015 決断
次の日になり、孤児院の子供達全員が広間へと呼び出された。何が始まるんだろうか。
ザワザワザワ……
「みなさん静かに。」
「・・・・」
孤児院長の一声で静まり返った。
「今日は皆さんにお知らせが有ります。
アンナさんが明日、帝都に行くことになりました。
お別れになるため、今日はお仕事をお休みにしてお別れ会を開きたいと思います。」
ザワザワザワ……
アンナが帝都に? もしかして俺が怒らせたのが原因!?
振り向いてアンナを見ると、アンナと視線が合った。何かを決意した顔をしていて、別に怒っている様な感じでは無かった。
俺が怒らせたからではない? ってことは、何でだ?
「では、男の子達は会場の設営を、女の子達はお料理のお手伝いをして下さい。では、始めて下さい!」
孤児院長がパンと手を叩くと、みんな一斉に動き出した。
・・・・
久々に美味しい食事とデザートで孤児院の子供達は大喜びだ。
だけど俺の心はモヤモヤとしている。食事を食べても今一つ味が分からなかった。
アンナは色んな人に囲まれて話せる状態じゃなかったのを理由に、俺はアンナとは話すことは無かった。
お別れ会も終わり、後片付けをした後に解散となった。
俺は裏庭へと行き、草むらに寝っ転がって流れる雲を眺めてボーっとしていると。
「シュウ君。」
そこにアンナがやってきた。
「何してたの?」
「ボーっとしてた。」
「そっか。」
アンナはそう言うと、俺の脇にちょこんと座った。
しばらく何も話さない静かな時間が流れて行った。
「なぁ。」
「何?」
「何で帝都に行くことにしたんだ?」
「分かんない。」
「をい!」
「えっと、多分だけど……ううん。やっぱり内緒。」
「何だよそれ……」
「でもね、これだけは言っておくね。私は絶対シュウ君のところに帰ってくるから。だから待っててね!」
「お、おぅ。」
顔を真っ赤にしながらそんなことを言われちゃうと、何も言えなかったのだった。
・・・・
次の日になり、いよいよアンナとお別れの日となった。
「アンナちゃん!」
「ローザちゃん!」
二人が抱き合ったまま大泣きしている。
「アンナちゃん、そろそろ出発の時間よ。」
「えっ、もう!?」
いや、もう30分ほどあの状態でしたけど? 馬車の御者の人も困った顔をしているし、仕方ないか。
「アンナちゃん、ちょっと良いか?」
「シュウ君……」
「まぁ、その、何だ。が、頑張って来いよ。」
何か他に言うことは無かったのか、俺。
「うん! 頑張って来るよ、だからシュウ君、約束覚えててね。」
「分かった。」
「それと、ローザちゃん。あのことだけど宜しくね。良いのはローザちゃんだけだからね。」
「うん。任せておいて!」
「ん? 何の話だ?」
「「内緒!!」」
「あ、うん。」
アンナが俺に内緒か……これも成長の証ってやつか。寂しいが仕方ない事なのかもしれないな。
多分世の中の父親もこんな気持ちを味わっているのだろう。
「それじゃ、行ってきます!」
アンナ最後の挨拶をして馬車に乗り込むと、馬車はゆっくりと動き出した。
孤児院のみんなが手を振って別れの挨拶をしていた。
「アンナちゃん、バイバイ~!」
「元気でね~!」
「頑張ってね~!」
そして馬車は小さくなっていき、見えなくなった。
こうして幼馴染でもあったアンナと暫しのお別れとなったのだった。




