149 買い物
さて、俺が用意しなければいけない馬車の件は終わったが、レリウスとサムだけに任せるのも少々不安も有るため、俺の方でも個人的な予備として幾つか購入しておこうと思う。
……今思ったのだが、アリスの食事って俺達が食べるのと同じでも良いのだろうか?
旅の基本的な食事になると、黒パンと干し肉、後はちょっとしたスープくらいな物だぞ?
「……さすがにそれじゃ可哀相か。」
冒険者ならいざ知らず、一応あれでもお嬢様だからな。
肉は十分な量が有るから良いとして、スープ用の野菜や香辛料も追加しておこう。
黒パンは可愛そうだが、白パンを出すのも問題になりそうな気もする。悩みどころだ。
いや、ふと思ったんだが、パンに拘る必要って有るのか? 別に小麦粉を水で溶いて焼くのでも良いんじゃね?
それか麦を買ってオートミールみたいにするのも良いかもしれない。
「よし、買いに行ってみよう。」
俺は市場まで足を延ばすことにした。
「あれ? シュウ君?」
市場に到着すると同時にレリウスと出会った。
「馬車の方はどうだったんだい?」
「うん。問題無く借りれたよ。正確には一時買い上げになるんだけど、明日の朝までに用意してくれるってさ。」
「それは良かったよ。やっぱり高かったのかい?」
「うん。馬車と馬で大銀貨4枚だったね。後でアリス様が出してくれると言わなかったら絶対借りるなんてことは無かったね。」
「確かにその金額だったそうなるよね。でも、よくそんな大金を持っていたよね。」
「帝都でレシピを売った時の代金だよ。」
「あー、あれか。なるほど納得したよ。」
「そんなこんなで、こっちは終わったんだけど、レリウスの方はどんな感じ?」
「うん。今丁度買って帰るところだったんだ。」
「ちょっと買ったの見せて貰える?」
「えっ? うん、いいよ。」
レリウスが手に持っていた物を見せてくれたが……うん。見事に黒パンと干し肉だけだった。
「これだけ? 野菜とかは?」
「料理はちょっと……(汗)」
「サムも?」
「料理が出来るとは聞いたこと無いかな。」
「一応お嬢様が相手なんだから、黒パンと干し肉だけじゃ駄目なんじゃない? 俺達だけだったのなら構わないけどさ。」
「そ、そうだよね。」
「仕方が無いから俺が作るよ。とりあえず買った分の料金は払っておくから、幾らかかった教えてよ。」
「えっと、10日ほどかかるみたいだったから、干し肉が30枚と黒パンを30個買ったから……銅貨9枚と大鉄貨1枚、鉄貨1枚だね。」
レリウスよ……10日間ずっと宿にも泊まらずに、ずっと3食黒パンと干し肉で済ますつもりだったのか? 流石にそれは嫌だぞ?
「とりあえず銀貨しか無いけど、お釣り有る?」
「えっと……大丈夫だね。」
「じゃあ、これで。」
俺は銀貨で支払い、お釣りの大銅貨9枚と、大鉄貨8枚、鉄貨9枚を受け取った。
「じゃあ、この黒パンと干し肉はパーティの共有資産として預かっておくよ。」
「よろしくね。」
「適当に材料は買っておくから、レリウスはサムの方の手伝いに行って貰っても良いかな?」
「わかった。そうするよ。」
レリウスはそう言うと、この場を離れて行った。
俺も材料を買いに行きますかね。
今回はパーティ用として買うから、キチンと管理しないとな。
・・・・
ふはははっ、買ってやったぞ!
塩、胡椒、小麦粉に、大麦、丸ネギ、シャガイモ等の長持ちしそうな物を中心に買った。流石に葉物は無理だな。
後は、ニンニンニクとショウガナイも味付けに必要なので、それなりの量を買っておいた。締めて銀貨3枚だ。
何でこんなに高いのかと言うと、胡椒がやたらめったら高かった……これだけで銀貨2枚ってどういうこと? まぁ、買っちゃったんだけどね(笑)
まぁ、10日間、3食全部料理しても余る程の量を買っちゃったけど、良いよね?
「さて、買い物はこのくらいにして、サムの様子も見に行ってみるか。」
レリウスがあの様子だったから少し不安になったのは内緒だ。
道具屋の方へと向かうと、荷物を抱えて歩いているサムとレリウスを見つけることが出来た。
「おーい。」
「シュウか。どうした?」
「こっちも終わったから様子を見に来ただけだけど。」
「そうか。とりあえず最低限、必要と思われる物は買っておいたぞ。」
サムが買ってきたものを見させてもらうと、少し上質の毛布が1つと、地面に敷くための敷布団が1つ、木の皿とコップ、フォークとナイフが一式、後トイレ用のボロ布が少し多めに買ってあった。
「水は俺達も出せる様になったからな。だから水筒は邪魔になるだろうし買わなかったぞ。
ちょっと毛布と敷布団が高くなってしまったが、必要経費だから構わないよな? 全部で銀貨2枚だ。」
「あ、うん。」
何これ、レリウスがあんな感じだったからサムも同じかと思ったが、完璧じゃね?
もしかして今までの旅の準備ってサムがレリウスの替わりにやってあげていたのではなかろうか?
そんな疑問が湧いた瞬間だった。
「じゃあ、これを渡しておくよ。」
「おう。」
俺は銀貨2枚を取り出すと、サムへと渡した。
「荷物は、俺が当日持って行けば良いか?」
「うん。それで宜しく。」
「わかった。また明日な。」
「あ、サム、待ってよ。あ、シュウ君また明日ね。」
「うん。またね。」
2人は帰って行った。う~ん、サムがしっかり者のお兄さんに見えてしまうのは如何なものだろうか。
「まあ良いか。俺も帰ろうっと。」
とりあえず買うものも買ったことだし、今日はさっさと帰って寝ることにしよう。




