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140 アリス


さて暇になってしまったが、これからどうしようかな。



「……そうだな。行ってみるか。」



何となく昨日出会った不思議な女の子のことが気になったので、例の現場へと行ってみることにした。



「居ないな。」



一瞬昼間だから居ないのかと思ったが、昨日見かけたのも昼間だったから明るさ等は関係なさそうだ。

と言うことは、時間かな? 確か昨日此処に来たのは、午後2時か3時くらいの時間だったな。仕方がない、その時まで適当に時間を潰すとしますか。


何か適当に依頼を受けに行っても良いのだが、やっぱりオークの討伐も気になるし、こっそり見学させて貰おう。

俺はドローンを起動すると視線が変化して移動したので、先ほど出発した冒険者達を追いかけてみることにした。


それにしても、視界一杯がドローンの画像だと例の女の子が現れても気が付きにくいよな、何かいい方法は無いだろうか。

そんなことを考えていたら、視界の右下に先ほどまで俺が見ていた視覚映像がウィンドウとして現れた。

……これってリ今の視覚のリアルタイム映像か? 目の前で手を振ってみると、俺の手が見えた。なるほど、こういう仕組みか。

ふと、メインの視界とドローンの視界の入替も可能なのだろうか? 入れ替える様に念じてみると、視覚映像がメインの映像となり、右下のウィンドウがドローンへと切り替わった。



「ずいぶんと使い勝手が良くなったぞ。」



唯一の欠点は、ウィンドウの部分に死角が出来ることだが、こればっかりは仕方が無い事だろう。

と思ってたら、ウィンドウの映像が半透明になり、向こう側が透けて見えるようになった。



「……ホント、チートな能力だよな。」



今更だが、本当にそう思ったのだった。



・・・・



目の前の景色は通り過ぎる人が変わるだけで変化は無いし、冒険者の方も移動が徒歩のため、現場に到着するにはまだまだ時間がかかりそうだ。



「腹減ったし、何か買ってくるか。」



適当に屋台の串肉を買ってから戻ってくると、例の女の子が居たのが確認できたのだが、何だか様子がおかしかった。

昨日とは違って項垂れた状態で突っ立っているだけで、助けの声を掛ける気力も無いみたいだ。

とりあえず今日も声を掛けてみることにした。



「よぉ。」


「・・・・」


「どうした。元気が無いじゃないか。」


「・・・・」



声を掛けた時にチラリとこっちを向いた後は、再び俯いてしまった。

どうやら話す気が無いみたいだ。



「なぁ、助けが必要なんだろ? 俺で良かったら話してみないか?」


「・・・・」



う~ん。埒が明かないな。

とりあえず何も情報が無いと話も出来無いし、どうすっかな。



「情報か……」



悪いとは思ったが、鑑定してみることにした。



-----------------------------------------

名前 :アリス=リルディル

年齢 :13

種族 :人族

状態 :生霊


LV :1

HP :0/10

MP :50/50


STR:2

VIT:2

AGI:3

INT:4

DEX:4

LUK:2


スキル:


称号 :リルディル伯爵家令嬢

-----------------------------------------



「生霊? ってことはまだ生きてるんだな。」


「!?」



俺がそんなことを言ったら女の子は突然顔を上げた。



「私って、生きてるの!?」


「うぉう! ビックリした! た、多分としか言えないけどね。」


「そうなんだ……」


「とりあえず状況を確認したいから、分かる範囲で構わないから教えてくれないか?」


「あ、うん。えっとね、昨日、気が付いたらここに居たの。」


「ここに来る前は何処に居たんだ?」


「分からないわ。」


「えっ? 地名や街の名前とか、そう言ったのも分からないの?」


「うん。ここが何処かもわからないし、実は自分の名前も分からないの。」


「もしかして記憶喪失ってやつか? 参ったなぁ……」


「ごめんね。」


「いや、君……いやアリスが悪い訳じゃないよ。」


「アリス? それが私の名前なの?」


「ああ。君の名前は『アリス=リルディル』。リルディル伯爵家の娘さんだよ。」


「そうなんだ。でも、私の名前を知ってるってことは、もしかして貴方は私の友達か何かなの?」


「いや、名前とかは鑑定の結果で知っただけだよ。」


「そうなんだ。」



名前を知ったらもしかしてって期待も有ったが、駄目だったみたいだ。

とりあえずヒントになるかもしれないので、続きを聞いてみることにしよう。



「それで、ここで気が付いてからはどうしたんだ?」


「えっとね。ここが何処かを聞こうと話しかけてみたんだけど、誰も相手にしてくれなくて意地になってたら、貴方が声を掛けてきたの。

 それで、貴方が私の手を握ろうとしたときに触れないのを知った時に、私は死んだんだとショックを受けて……」


「なるほどね。」



と言うことは、俺が見かけたのは、アリスがここに来たのと誤差は無いってことか。

うん。何も分からないのが分かった。



「とりあえず、アリスを元の体に戻さないとな。多分このままで居ると、本当に死ぬと思うぞ?」


「えぇ!? ど、どうすれば!」


「体が何処あるのかもわからないしなぁ……何でここに来た理由も分から無いし、真面目にどうししょう……」


「そ、そんなぁ~」



そもそも、生霊って生きたまま魂が抜けた状態のことだよな? 魂だけで遠くまでこれるのだろうか?



「アリスは、ここの景色に見覚えは?」


「わからない。」


「何か心がざわつくとか、懐かしい感じがすとかは?」


「多分無いかな。」


「ふむ……」



記憶が無くても何かしら反応が有ればと思ったが、何も無いとなると、たまたまここの近くで魂が抜けたってことか?



「何かヒントでも無い……ん?」



アリスの頭をよくよく見て見ると、紐の様なものが見えた。ほんのちょっとしか見えなかったし、単なるアホ毛かと思ってたよ。



「アリス、後ろを向いてくれるか?」


「? 良いけど?」



アリスが後ろを向くと、反っていたいたアホ毛が項垂れた……じゃなくて、向きが変わった!?

これって、魂と体が繋がっている線になるのか? ならこの先にアリスの体が有るのかもしれない。



「アリス! もしかして体を見つけられるかもしれないぞ!」


「本当?」


「とりあえず行ってみよう。」


「うん!」



俺達はアホ毛の指す方向へと向かうことにした。


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