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014 説得


「やー!」


「アンナちゃん。どうして嫌なの? とっても光栄なお話なのよ?」


「やー!」


「困ったわね。ほ、ほら、シュウ君も何か言ってあげて。」


「無理!」


「そ、そんなぁ~!」



シスターが裏切られた~! って顔をしてるが、別に裏切ってはいない。最初から参加してないだけだ。

それに、俺が何か言ったら絶対アンナに恨まれる案件じゃん。それに聖教会の本部ってことは場所は王都だろ? 絶対厄介ごとになりそうな気がする。

そーいやアルフォルス王国って何処の国なんだ? もしかしてこの国の名前だったりして。



「ねぇ、シスター。」


「アンナちゃんを説得してくれるのね!」


「違うけど?」


「そ、そんなぁ~」


「それよりも、ここの国って何て名前なの?」


「それよりもって……まあ良いですけどね。

 この国の名前は『カルッツェル帝国』と言うのよ。」


「カルッツェル帝国? 王国じゃなくて?」


「そうよ、知らなかった? って知ってたら聞かないか。」


「と言うことは、アンナを連れて行きたい場所って帝都になるの?」


「そうよ。」


「ちなみに王国って有るの?」


「もちろん有るわよ。少し難しい話になっちゃうけれど、ここの大陸には中央に山脈が走っていて大きく2つに分かれているの。

 東側が私達の居る『カルッツェル帝国』、そして西側が『アルフォルス王国』ね。周りに幾つかの小国が有るけれどね。」


「帝国と王国で戦争とかってしてるの?」


「よく戦争なんて言葉を知ってたわね。昔は有ったみたいだけど、今は無いわね。」


「何で?」


「さっき少し説明したけれど、大陸の中央に山脈が有るって言ったでしょ? 昔帝国が王国に向けて兵隊を出したことがあったらしいんだけど、山脈を超えて戦争を仕掛けるのは割が合わないって思ったみたいね。その後は無駄なことはお互い止めましょうと和平を結んだと聞いたわね。」


「へぇ~そうなんだ。あ、でも、そんな山脈が有るってことは、王国に行くことって出来ないの?」


「一応商人が使っている道が有るってのは聞いたことが有るけれど、詳しくは分らないわ。ごめんなさいね。」



なるほど、恐らくアンナはその道を使てこっちの帝国に逃げてきたんだと思う。でも何で逃げてきたんだろう? 十中八九厄介ごとだとは思うけどさ。

他にも色々と聞きたいことが有るが、これ以上は怪しまれるだろうし、聞く訳にもいかないな。今でも十分5歳児らしからぬ質問してるしね。



「あっ、そうそう、アンナちゃん! 帝都に行けば美味しい物が食べられるよ?」


「やー!」


「美味しい物でも駄目かぁ~、後は、そ、そうね、綺麗なお洋服だって着られるよ? アンナちゃんだって綺麗な服着たいでしょ?」


「やー!」


「ほ、ほら、シュウ君だって綺麗なアンナちゃんを見たいでしょ?」


「綺麗? シュウ君が?」


「そう、シュウ君が!!」



そこで俺をダシにしないで下さい。そしてアンナもそれに乗らない。



「シュウ君も綺麗なアンナちゃんを見てみたいよね~」


「えっと……」



アンナが何かを期待する目で俺をみていた。これはどう答えるのが正解なんだ?


1)もちろん、綺麗なアンナちゃんが見たいな。

2)いや、そんな服を着なくたってアンナちゃんは綺麗だよ。

3)はぁ? そんなのどっちでも良いじゃん。興味無いし。

4)べ、べ、別にアンナなんか綺麗とは思って無いんだからね!


まぁ、無難に1番か2番かな。3番か4番は地雷な気がする。

ただ1番にすると帝都行きになるだろう。さてどうすっかな……



「ど、どっちでも良いかな?」



俺のヘタレ~!! 案の定、俺の回答を聞いたアンナがほっぺたを膨らましている。



「シュウ君の馬鹿! アホ! おたんこなす!!」



そんなことを叫びながら部屋を出て行ってしまった。マズイ、完全に怒っているぞ。

その時、俺の背筋に寒気が走る! 何だ!?



「シュウ君。」


「は、はい!」


「謝って来なさい!」


「はい……」



当然だよな。俺はアンナを探すために部屋を出て行くことにした。



「アンナ~、どこだ~」



あちこち探しているのだが、全然見つからない。

他のシスターやら子供たちに聞いてもみんな知らないそうだ。

ホント、どこに行っちゃったんだ?



「シュウ君!」



突然後ろから呼ばれたので振り向くと、そこにローザが立っていたんだが……何か怒ってる?



「えっと、何かな?」


「裏庭!」


「裏庭が何?」


「知らない!」



ローザはそれだけ言うと、プリプリ起こりながら行ってしまった。何なんだ?

と、とにかく裏庭って言われたんだし、一応行ってみるとしますか。


裏庭へと到着した。普段の裏庭は、あまり人が来ないため静かなのだが、今はどこからか女の子のすすり泣く声が聞こえてきた。

俺は泣き声の聞こえる方へ行ってみると、そこに一人の女の子がうずくまって泣いていた。



「アンナちゃん?」



俺が声を掛けると、その女の子がビクッっと反応した。

とりあえず声は掛けてはみたものの、どうすれば良いんだ?



「さっきはゴメン。」



まずは謝ってみることにした。



「・・・・」



アンナからの返事は無かったが、すすり泣く声は止まったみたいだ。ここからが勝負だ!



「あーさっきはあんなこと言っちゃったけど、本当は俺も綺麗なアンナちゃんを見たかったんだ。」


「……本当?」


「本当、本当。でも、それを言っちゃったらアンナちゃんが帝都に行っちゃうと思ってさ。どうしたら良いのか分かんなくなっちゃったんだよ。」


「……アンナが帝都に行ったら、寂しい?」


「もちろん寂しい……かな? でも、せっかくアンナちゃんが大きく成長できるチャンスなのに、俺のせいでそれが駄目になっちゃのも悔しいじゃん?」


「・・・・」


「だから俺からは何も言えなかったんだ。ごめん!」


「……ぃ!」


「えっ?」


「だから怒ってないって言ったの!」


「そ、そうか。ありがとよ。」


「うん。」



とりあえずミッションコンプリートかな?



「そう言えば、シュウ君はどうしてここに?」


「ローザちゃんが教えてくれた。」


「そう、ローザちゃんが……」


「何か怒ってたけど、何か有ったのかな?」


「シュウ君の馬鹿。」


「馬鹿って、何で?」


「知らない!!」



そう言ってアンナが走って行ってしまった。また怒らせちまった?

ちょっと面倒くさいと思ってしまったのは仕方ないと思う。


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