138 不思議な女の子
「お待たせ~」
ミーナ達が戻ってきたのだが、先ほど選んだツーピースの服を着ていた。
「「「どうかな?」」」
「うん、可愛い! 凄く似合ってるよ!」
「やった!」
「だよね!」
「嬉しい。」
それにしても、新しい服になったのに、もともと着ていた服を持って居なかったってことは……
「もしかして、下取りに出したの?」
「そうだよ~」
「だって、高いしね。」
「そ、そうなんだ。」
「? どうしたの?」
「い、いや、何でも無いよ。」
さっき俺も提案されたばかりだから知ってはいたが、この世界の服はオーダーメイドで値段が高いから下取り制度が有る。
一瞬、女性の服やら制服を買い取る商売が有ったことを思い出したが、この世界での需要はどうなんだろうな。
べ、別に欲しいとか買いに行くとか、そんなんじゃ無いからな!
買い物を済ませて古着屋を出た後は、小物を売っているお店へと向かうことにした。
「ここでも何か買うのか?」
「欲しい物が有ったらだけどね~」
「見るだけでも楽しい。」
「うんうん。」
「そうなんだ。」
確かに女の子にとって、アクセサリーとかの小物を見るだけでも楽しいのかもしれない。
男性だって、時計とかそういった小物を見るだけでも楽しいしな。気持ちはよく分る。
さっそくお店の中へと入ってみることにした。
「……失敗したかもしれない。」
何故なら、お店の中には女の子しか居なかったのだ。
それだけならまだ良いのだが、取り扱っている商品が、ちょっとしたアクセサリーからポシェットやハンカチみたいな布、そしてパンツやブラみたいな下着も取り扱っていたのだ。
さすがに下着は新品を取扱っているとは思うが、手に取って確認する訳にも行かないし……じゃなくて、何となく俺を見る周りの視線がキツイ気がする……
「す、すいませんでした~!」
俺は即座に回れ右をして店の外へと逃げるのだった。
「ふぅ……」
とりあえず適当な植え込みの所に腰を下ろして一息つくことにした。
予想だが、おそらく1時間くらいは出てこないだろう。
「暇だ……」
とは言っても勝手に居なくなったら怒られるだろうし、他にやることも無いんだよね。
仕方が無いので、ぼーっと街行く人々を眺めることにした。
「ん?」
ふと、1人の女の子が目に入った。
その女の子は、通り過ぎる人に対して一生懸命声を掛けているのだが、誰もそれを気にせずに通り過ぎている。
無視をされた後は、悲しそうに項垂れる女の子。そしてまた次の人に声を掛けるを繰り返している。何だか可哀相だな……
「よし! 行ってみよう。」
俺はその女の子へと近寄ってみると、話しかけている内容が聞えて来た。
「あの、誰か! 私の話を聞いてもらえませんか? お願いします!」
どうやら話を聞いて欲しいみたいだが、やっぱり通行人に無視をされていた。
女の子の年齢は13~4歳くらいで、レリウス達と同じくらいに見える。
髪は金髪のロングヘアの碧眼で、肌の色も白く透き通った可愛い子で、これが白いワンピースの服と合わさると、天使かと思われるほど綺麗に見えた。
ただ、裸足で靴を履いていないのが気になったが……とりあえず声を掛けてみることにしよう。
「誰か! お願いします!」
「あの、どうしたんですか?」
「!?」
俺が女の子に声を掛けると、その子は飛び上がる程に驚いていた。
「わ、私の声が聞こえるんですか?」
「聞いて欲しくて声を掛けてたんじゃないのか?」
「それはそうなんですけど……」
その時、通り過ぎた人が俺を見て怪訝そうな顔をしながら通り過ぎて行った。失礼な人だな。
「とりあえず此処で話し込むと通行人の邪魔になるから、移動するよ。」
俺は道の端に移動するために、女の子の手を取って……
スカッ!
「あれ?」
ちゃんと見て無かったから目測を誤ったか? 今度はしっかりと女の子の手に向けて手を伸ばした。
スカッ!
俺の手は、女の子の手を通り抜けた。
「えっと?」
「あ、あ、あ……」
女の子が自分の手を見てブルブルと震えている。どうも様子が変だ。
「ど、どうした?」
俺が声を掛けると、女の子は突然姿がフッっと消えてしまった。
「!?」
キョロキョロと周りを見ても女の子の姿は見当たらなかった。
「何だったんだ?」
確かに今、女の子が居たよな? 俺の見間違いじゃないよね?
その時、先ほどの怪訝そうな顔をした人のことを思い出した。
「もしかして、あの子の声は勿論、姿も見えなかったとか!?」
それならあの顔も納得できる。俺が一人で会話をしている怪しい人に見えたということだ。なんてこった……
「シュウ君。」
「うわああぁぁぁ~~!!」
突然後ろから声を掛けられてた俺は、思いっきり飛び上がる程に驚いた。
「び、び、ビックリした。突然大声出してどうしたのよ。」
「な、なんだミーナか。驚かせないでくれ。」
「別に驚かせたつもりは無かったんだけど、もしかして怒ってる?」
「怒って無いぞ。どうしてそう思ったんだ?」
「色々と待たせちゃったから、何となく?」
「大丈夫だ。」
「ところで、何でそんなに驚いたの?」
「いや、さっきまでここに女の子が居たんだけど、突然消えちゃってな。
そこにミーナが声を掛けてきたから驚いたんだ。」
「ふ~ん? 私がお店を出てシュウ君を見たけど、ずっと1人だったよ?」
「!? そ、そうか。」
「うん。」
どうやら俺以外は見えなかったで確定っぽいな。と言うことは、あの女の子は幽霊とかそういった類のものになるのか?
状況認知(改)で調べてみたが、やっぱりそれらしき反応は見られなかった。
「そういやレイラとカレンは?」
「もうすぐ来ると思うよ? あ、来た来た! お~い! こっちだよ~!」
ミーナが手を振って合図をすると、2人もこっちに気が付いてやってきた。
「シュウ君、待った?」
「ごめんね。」
「いや、大丈夫だ。」
「こんな所でミーナと何やってたの?」
「……単に世間話をしていただけだ。気にしないでくれ。」
「え~!」
「ズルイ。」
「へへ~ん。早く出てきた人の特権だよ。」
「「う~!!」」
「そろそろ日も暮れそうだし、孤児院に帰ろうぜ。」
「そうだね。」
「うん。」
「は~い。」
最期に少し気になることが有ったが、今はどうしようもないし、今日の所は帰ることにした。




