135 リーデル焼き
「じゃあ、1人大銅貨1枚づつね~」
「やった~」
「ありがとう。」
「どうもな。」
ミーナからお金を受け取った。全員嬉しそうだ。
移動時間も含めても1時間程度で1万円の稼ぎだ。嬉しくない訳が無いよな。
「じゃあ、何処に行こうか。」
「最近美味しいって話題の屋台に行ってみようよ。」
「行きたい!」
「楽しみ。」
「ほら、シュウ君も行くよ~」
「了解。」
俺はカレンに手を引かれて、その話題の屋台へと行くことになった。
孤児院にお金を納める必要が無くなったため、気兼ね無しに行けるようになったのは、ちょっと嬉しい。
ミーナ達は……そーいや、もともと気にしてなかったか。
「あそこだよ!」
連れていかれた屋台には、人がそれなりに居た。と言うか、女の子ばかりだ。
「良い匂い~」
「早く行こう!」
「行く。」
確かにここまで甘い匂いが漂ってきている。何を売っているのだろう?
屋台に到着すると、棒に刺さっている何かを食べていた。クッキーっぽいがちょっと違うな。何だろう?
とりあえず注文することにした。
「すいません。4つ貰えますか?」
「はいよ! ちょっと待っててね。」
屋台の親父が注文を受けると、お玉みたいな道具に水と茶色い塊を入れて火にかけた。
塊が溶けて茶色い水になり、ひと煮立ちさせてから火から離すと、白い粉をパラパラとふりかけて棒でかき混ぜた。
すると、茶色い液体が固まり、膨らみ始めた。
「うわっ!」
「すごい!」
「何これ~」
ミーナ達はそれをみて驚いているが、俺、これを知ってるかもしれない。
さっきの甘い匂いが焦げた砂糖の匂いと、膨らんだ物を見れば間違い無いだろう。
「はいよ、4つで銅貨4枚だ。」
思ってた以上に高いな。まぁ、仕方がないか。
俺はお金を支払った。
「はい。」
「大銅貨1枚だから、お釣りの銅貨6枚だ。確認してくれ。」
「大丈夫です。」
俺はお釣りと一緒に商品を受け取り、ミーナ達へと渡した。
「はい、どうぞ。」
「えっと、今、さっきの大銅貨しか持ってないから、後で払うね。」
「いや、いいよ。ここは俺の奢りで。」
「いいの?」
「ああ。」
「ありがとう。」
「さすがシュウ君!」
「やった~!」
さっそく食べてみることにした。
パクリ……うん、この味、間違い無いな。
「カルメラ焼きか。」
「おいおい、こいつはリーデル焼きってんだ。間違ってもらっては困るな。」
「それって、此処がリーデルの街だから?」
「おうよ! この街が発祥の地で、俺が初めて作ったんだからな。」
「へー」
おそらくこの人が発見したんだろう。何の知識も情報も無いのに、新しくこう言ったものを作れる人って凄いよな。
「でも、シュウ君は知ってたみたいだよね? 本当に発祥なの?」
「当り前だ! そこの坊主も適当なことを言わないでくれ!」
「いや、別に適当なことを言った訳じゃないんだけどな。一応作り方は知ってるし。
でも、本当にこれをゼロから見つけられたってのは素直に凄いと思う。」
「そうだろそうだろ~……って作り方を知ってるだと!?」
「あ、私も分かる~! お水に茶色いのを入れて白い粉を入れるんでしょ?」
「そりゃ見てたんだから、作り方くらいは分かるだろうが。
でも、これが何かは分からないだろ? なんてったて魔法の粉だからな。」
屋台の親父はドヤ顔だ。
確かに知らない人から見れば、あんな感じに膨らむのは魔法みたいに感じるかもしれないな。
「シュウ君。あれって何?」
「あれは重曹だ。」
「重曹?」
「炭酸水素ナトリウムって言っても分からないか。一応塩から作ることができるんだが、一応採掘することも出来るぞ。もしかしたらこの辺りで取れるのかもしれないな。」
「へー」
「何で知って! ……いや、何でも無い。」
俺が採掘って言った時に反応したってことは、この辺りで取れるのか。
「なぁ、この粉を売ってもらう事って出来ないか?」
「そんなことをしたら商売あがったりになるだろうが!」
「カルメ……いや、リーデル焼きを作って売るつもりは無いよ。他のことに使いたいんだ。」
「何に使うんだ?」
「まぁ、色々とね。無理なら構わないよ、自分で探すから。」
重曹は色々と使い道が多いからな。掃除に使えるのは勿論のこと、ベーキングパウダーの替わりにもなるし、水に溶かしてソーダ水や、かん水にも出来る。無性にラーメンが食べたくなったぜ!
「う~ん……」
露店の親父は腕を組んで考え込んでいる。
「よし、何か一つ使い方を教えてくれるのなら売ってやろう。」
「別にそれでも構わないけど、そんなので良いの?」
「ああ。その方が俺にとって得になる気がしたからな。」
「ふ~ん。じゃあ1つだけ教えるよ。」
「頼む。」
「まぁ、リーデル焼きで特性を知ってるだろうから、分かりやすいのが良いかな。
ちょっと材料を買いに行って来る。ミーナ達は俺のことは気にしないで遊びに行ってくれ。」
「う~ん。いや、待ってようかな。」
「だよね。きっと美味しい物作ってくれる予感がするし。待ってた方が良いよね!」
「待つ。」
「あ、そう。まあいいや、じゃあ行ってくる。」
俺はそう言うと、露店へ材料を探しに行くのだった。




