133 ゴミ屋敷
「えっと、此処……で良いんだよね?」
「た、多分?」
「・・・・」
「あ、俺、急用思い出したんで、これで帰りま……ぐぇ!」
「あっ、ご、ごめんね。」
振り向きざま逃げようと思ったら、レイラに襟を掴まれてしまった。一瞬首が締まったぞ? まぁ、謝ってくれたので許すけどね。
何でそんなことをしたのかと言うと、目的地がゴミ屋敷だったからだ。
確かによくよく考えてみたら、自分で片付けられる人が冒険者ギルドに依頼なんか出さないよな。何か納得した。
「そ、それじゃ行こうか。」
「だね。」
「うん。」
「おう。」
俺達は覚悟を決めて扉をノックする。
ガラガラガラガアラガラガラガッシャーン!!!!
扉の向こうから何かが崩れる様な音が響いた。
暫く待ってはみたが、誰も出てこなかった。
「誰も出ないよ? どうする?」
「さっき、凄い音がしたよね。どうしようか。」
「開けてみる?」
「そうしようか。」
「うんうん。」
3人が話し合った結果が出たみたいなのだが、何故扉から脇に逸れるんだ? 俺に開けろと言うのか?
「ほら、シュウ君開けてよ。」
俺だった。マジかよ……嫌な予感しかしないんだが。
「いや、こう言ったものはリーダーのミーナが開けるんじゃないのか?」
「え~! だって怖いじゃん。」
「じゃあ、レイ……カレン頼む。」
「何で私? 普通、順番的にもレイラちゃんでしょ?」
「いや、何となく?」
「シュウ君。」
何となくレイラが嬉しそうにつぶやいたのが聞えた。
「はいはい、じゃあ多数決で決めようか。シュウ君が良いと思う人手を上げて~!」
バッ! バッ! スッ!
ミーナとカレンが勢いよく上げ、レイラも恐る恐るだが手を上げた。
「マジか、レイラもかよ……」
「だ、だって、頼れるのはシュウ君だけだし……ごめんね?」
「あーうん。」
上目使いでそう言われちゃ断れないよな。仕方ないか。
俺は覚悟を決めて扉を開けることにした。
ガチャ! ……ガラガラガラガラガラ!!
「うわああぁぁぁ~~~~!!」
予想通りと言うか、何と言うか、扉の向こうから大量のゴミが流れだしてきて、俺は埋まってしまったのだった。
・・・・
「酷い目に有ったぜ……」
何とかゴミの中から這い出すことに成功した。
「すごい量だよね。」
「人って、こんなにもゴミを溜められるんだね。
「凄い。」
「感心している場合かよ、どうすんだ?」
その時、扉の奥から声が聞えて来た。
「た~す~け~て~く~れ~!!」
「「「「!?」」」」
「人の声?」
「助けなきゃ!」
「でも、どうすれば?」
「まずはゴミを退かすしか無いんじゃなね?」
「そうだね。」
俺達は大量のごみを、庭の空いている場所へと移動させることにした。
幸いと言って良いのか、生ごみ系のゴミは少ないらしく、ガラクタばっかりだったのは助かった。まぁ、生ごみも全く無い訳じゃないけどね……
2時間程してようやく、声の主の確認が取れた。まぁ、足の先っぽだけだが。
「大丈夫ですか?」
「早く助けてくれ~!」
「へいへい。」
とは言っても、もともと大した広さも無い庭だったため、すでにゴミが一杯で置く場所が無い。
かと言って、脇に寄せても崩れてきて埋まるし、どうしようか。
「無理やり引っこ抜く?」
「それしか無いんじゃない?」
「そうだね。」
「そうすっか。」
幸いにも足首は出ているのでここを紐で縛って、引っ張ることにした。
「せ~の!」
「「「「よいしょ!」」」」
「イデデデデデッ!」
痛がる声が聞こえるが、少し我慢して欲しい。
「もう一回行くよ~! せ~の!」
「「「「よいしょ!」」」」
「痛い痛い痛い!折れる! マジ折れちゃう! 無理無理無理!」
気持ち抜けた気がするが、1cm程度だ。これは無理か?
「どうする?」
「あきらめよう。」
「無理。」
「だってさ、じゃあ達者でな。」
「待て待て待て! お願い待って!」
俺達が諦めて帰ろうとしたところに待ったの声が掛かった。
「何?」
「お願い助けて!」
「無理。」
「このままだと死んじゃう! と言うかそろそろヤバイ!!」
「どうする?」
「どうするって、このゴミを何とかしないと助けるにも助けられないし。」
「「「う~ん。」」」
仕方ないな……人命を優先するしかないか。
俺は大量のゴミを一度アイテムボックスへと入れることにした。
「これからすることは全員内緒だからな! じゃ無ければこの依頼は終わりで帰るぞ。」
「するするする! だから助けて!!」
「私達は大丈夫だよ。ね~?」
「うんうん。」
「約束する。」
「よし、絶対だからな!」
アイテムボックスは生き物を入れられないので、俺は部屋全体をそのまま収納することにした。
全てのゴミは消え去り、俺達4人と、床に倒れている男性だけが残ったのだった。




