130 報告
帰りは荷物が減ったのと、俺が水を出すからと言うことで水を全部捨てて軽くしたために、移動は早かった。
途中の戦闘も無く、かなり急いだことも有ったため、お昼前にはリーデルの街に到着することが出来た。
「無事に戻ってこれたね。」
「ああ。」
「そうだね。」
「じゃあ、急いで冒険者ギルドへ報告に行こうか。」
「「おう。」」
俺達は冒険者ギルドへ向けて移動することにした。
冒険者ギルドの中はガラガラだったため、知っている人の方が説明も早いだろうと言うことで、受付した時と同じイリーナさんのところに向かうことにした。
「次の方どうぞ。」
「はぐれオークの調査から帰ってきました。急いで報告したいのですが、大丈夫でしょうか?」
「はい。どうぞ。」
イリーナさんが報告を記録するためにメモを取り出してペンを手に持つと、こちらを促した。
「結論から言いますと、オークの村を発見しました。数は分かりませんが、少なくても15匹以上はいました。」
「えっ! 本当ですか?」
「はい。こちらがオークの村の場所になります。」
レリウスが地図を広げて、俺が印を付けた場所を見せた。
「そしてこちらがその村の地図になります。」
裏返して村の地図を見せた。
「こんなに詳細な地図まで……シュウ君達ってEランクでしたよね?」
「はい。」
レリウスが自信満々い答えると、イリーナさんは少し引きつったような変な顔した。
「すいません。ちょっと待ってて貰って良いですか?」
「はい。」
イリーナさんは席を立つと、何処かに報告するためだろうか行ってしまった。
「これって、どうなるんだ?」
「どうだろう? でも、ちゃんと報告したし、依頼は失敗にはならないと思うよ。」
「まぁ、イリーナさんが戻ってくるのを待つしか無いんじゃないかな。」
「そうだね。」
3分ほどしてイリーナさんが戻って来た。
「状況は分かりました。こちらは緊急を要する案件となりましたので、依頼料に上乗せさせて頂きます。
確認が終わってからの支払いになりますが、宜しいでしょうか?」
「大丈夫です。」
「では、2日後にまたこちらへ来てください。
本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。 私、イリーナが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
報告が終わったのでその場を離れることにした。
「依頼料上乗せだってよ!」
「良かったよね。」
「ああ!」
レリウスもサムも大喜びだ。俺もモチロン金額が増えるのは大歓迎だ。
どのくらい上乗せされるのか楽しみだぜ。
「じゃあ、移動で疲れたことだし、これで解散にしようか。」
「だな。」
「えっと、明日はどうすれば良い?」
「休みで良いんじゃね?」
「そうだね。」
「ん、了解。」
「じゃあ2日後の朝、此処に集合ってことで。またね。」
「じゃあな。」
「バイバイ。」
2人も去って行ったが、俺はどうしようかな。
朝方はほぼ徹夜だったために眠かったが、ここまで歩いている内に眠気はすっかりと無くなってしまった。
ぐうぅ~~
その時、俺のお腹が鳴った。
「そう言えば、朝飯食べて無かったっけ。何か食べようかな。」
アイテムボックス内に黒パンが有るが、街中で屋台や食堂が有るのに、わざわざ食べたい物じゃない。
どうせ腐らないし、そのままで良いだろう。
それよりもパンで思い出したんだが、窯を作りたかったんだっけ。
軽く腹ごしらえをしたら材料集めに外に行ってみることにしよう。
屋台で串焼き肉を買って小腹を満たした俺は、そのまま街の外へと向かうことにした。
大通りを歩いていると、後ろから馬の激しい足音と、「危ないからどけ!」って叫ぶ声が聞えて来た。
一瞬暴れ馬かと思ったが、人が乗ってたし、ちゃんと制御しているみたいなので、単に急いでいるだけみたいだ。
馬はそのまま俺の脇を走り抜け、門を抜けてそのまま何処かへ行ってしまった。
「何か有ったのかな?」
思い出してみると、馬に乗っていたのは、軽鎧を着たスカウトっぽい感じの人だったので、もしかして俺達が報告したオークの村を確認しに向かった人なのだろうか? 走って行った方向がそれっぽかったしね。
ふと、あのドローンみたいなのって、何処まで見ることができるんだろうって疑問が湧いた。
俺は視覚を飛ばして、先ほどの馬を追いかけてみることにした。
上空30m程まで上昇した後、オーク村の方へ向かって移動させた。
この鳥の様に飛んでいるのって気持ちが良いな。
「おっ、発見!」
馬はかなり飛ばしていたのか、だいぶ距離は離れてしまっていたが、ドローンの移動速度が段違いのため、問題無く追いつくことが出来た。
後は馬の速度に合わせて移動するだけだ。
そしてあっという間に俺達が野営した場所まで到着したのだった。
「さすがに馬は早いな。歩きで半日の移動が1時間程度で着いちゃうんだもんな。」
そう考えるとやっぱり移動手段って欲しいよな。異世界あるあるの飛空艇でも無いだろうか? 見たことも聞いたことも無いけどさ。
馬? 馬も良いけど、世話したりしなくちゃ行けないし、維持費も掛かるからちょっと面倒かな。
スカウトの人は、馬から降りるとそのまま森の中へと入って行ったので、俺も後を着いて行くことにした。
スカウトは、ただ目的地に向かって進むだけでなく、常に周りを警戒し、風の方角を気にしながら進んでいた。
さすがはこう言った依頼を受けるプロだよな。動きに無駄が無い。これは勉強になるな。
目的地付近に近づくにつれて行動が慎重になり、移動速度は遅くなったが、それでもゆっくりと進んでいく。
そして目的地でもあるオーク村を発見したみたいだ。ある程度観察したらすぐにその場を離れて行った。多分報告のために帰るのだろう。
帰りは追いかけても仕方が無いので、俺はここで視線を切ることにした。
「ふぅ~、これでオーク村があることを報告してくれれば、終わりだな。
さて、窯の材料集めに行こうっと。」
俺は街の外へ向けて歩き出した。




