013 その夜
夜になり、俺達は孤児院長に呼び出された。
「シュウ君、アンナちゃん、そこに座りなさい。」
俺とアンナは指定されたソファーへと座った。
どうやら安物のソファーらしく、クッションも硬いし座り心地もそれほど良くない。まぁ、孤児院が贅沢してたら変だから良いんだけどね。
そして、座った俺達の前に木で出来たカードが2枚置かれた。これは?
「カードを手に取ってみなさい。」
孤児院長に言われたので手に取ってみてみると、何処かで見覚えが……あぁ、思い出した。ギルドカードか。
そしてギルドカードには偽装されたステータスが表示されていた。もちろん孤児院では文字の勉強を教えてくれているので、読めたとしても問題はない。
「貴方たちに質問が有ります。」
「「はい。」」
「どうやってスキルを習得したのですか?」
どうやってって言われてもなぁ、創造魔法なんて言えないし、どうすっかな。
それより気になることが有ったから聞いてみることにした。
「あの、孤児院長、スキルって普通は習得出来ないものなんですか?」
「基本、魔法関係のスキルは生まれた時にしか習得できません。ただ、本当に稀にですが、後から習得する人も居ますね。
貴方達は、以前スキルを持って居ませんでしたので、どうやって習得したのか聞いて見たかったのです。」
なるほど、そう言う理由か。
「あれ? だったら魔法スキルじゃないスキルは習得可能なのですか?」
確かロイが索敵のスキルを後から習得してたよな?
「ええ、剣術やら弓術等の技術的なスキルは後から習得可能です。他にも索敵やら採取等もこちらに入りますね。」
「へぇ~そうなんだ。わかりました。
それで俺がスキルを習得したのは、草むしりが大変で、楽できないかな~って考えてたら出来ちゃいました。」
実際その通りだしな。間違ってはいない。
「私もローザちゃんを助けたいと思ってたら出来ちゃいました。」
「ふむ、2人も似た様な感じで習得できたみたいですね。もしかしたら潜在的に持っていて、今回の出来事がキッカケで発現したんでしょうね。」
勝手に納得してくれたぜ。ラッキー♪
まぁ、確かにアンナに関しては隠蔽されていて実際に持ってたけどな。
「魔法関係のスキルは才能が関係していると言われています。
色々試してみると、もしかして他にも違うスキルを習得できるかもしれません。是非頑張ってみてください。」
「「はい。」」
「お話しはこれで終わりです。戻って良いですよ。」
「「失礼します。」」
俺達は孤児院長の部屋から退出した。
廊下を歩いているとアンナが嬉しそうに抱き着いて来た。
「えへへっ、シュ~ウ君♪」
「どうした?」
「私達、おそろいだね~♪」
おそろいって魔法が使えるってことか?
「まぁ、そうだな。」
「うん!」
何でかは分からんが、アンナはとても機嫌が良いみたいだ。まぁ、悪いよりはいっか。
さて良い子は寝る時間だ。さっさと戻って寝るとしますか。
・・・・
2人が去った後の室内。
「孤児院長、あの2人の今後の処遇ですが、どうなされるのですか?」
「シュウにつきましては、今の時点にではこのままで良いでしょう。ただアンナですが、聖教会の本部へ行って貰おうと思っています。」
「と言うことは、癒し人としての修行をさせるんですね。」
「ええ、光魔法や水魔法の癒し人は、多くないとは言えそれなりに使い手はいますが、聖魔法を持っているのは珍しいですからね。
是非とも聖教会としての癒し人……いえ、アンナならそうね、聖女になって欲しいと思っています。」
「聖女ですか、それはまた随分と……でも、アンナはシュウと一緒に居たがりそうですが、本部へ行くでしょうか?」
「そこはあなたの手腕に期待しておきましょう。」
「……畏まりました。」
「それにしても5年前に孤児院の前に捨てられていたあの子がねぇ。
確か名前以外は何も分からなかったんでしたよね。」
「はい。どの様な人が置いて行ったとの目撃情報も無く、全くのお手上げ状態でした。」
「魔法のスキルは絶対とは言いませんが、ある程度は親の資質を受け継ぐと言われてますから、もしかして何処か高貴のお子さんだったりして……まさかね?」
「そ、そうですね。」
「き、きっとそうよね。うん。
そう言えば、シュウも色々と謎なところが有るのでしたよね。」
「はい。森でウルフに襲われていた所を冒険者に助けられたと聞いています。周りに親の死体とかも無かったことから捨てられたと思われます。
しかも名前も無かったらしく、冒険者が名付けたらしいですね。」
「名前も付けられずに森に捨てられた子供ね……まあいいわ。とにかくアンナのことをお願いね。」
「はい。」




