119 到着
その後は特に何事も無く護衛依頼は続いて行く。
勿論、何度かゴブリンの集団に襲われたが、今の俺達にとっては何の問題も無かった。
と言うか、サムとレリウスがやけにやる気になっていたので、アランさんの許可も出たことだし、2人にお任せすることにした。
そしてとうとうリーデルの街まで帰ってくることが出来た。
「帰りも無事到着することが出来ました。ありがとうございます。」
「いえ、今回は本当に楽な依頼で、こっちこそ助かりました。」
「次の機会がありましたら、是非シュウ君にもお願いしたいですね。」
「機会が有れば是非。」
アランさんはそう言ってますが、俺はお断りさせて頂きます。
今回の依頼だって、アランさんと一緒で、言われたからやっただけだし、もし、俺が受けた護衛依頼だった場合は遠慮させて貰うつもりだ。
依頼完了のサインを受け取った後は、名残惜しそうに俺を見てから、くそ親父の馬車は離れて行くのだった。
「よし、冒険者ギルドへ依頼完了の手続きに行くぞ。」
「「「はい!」」」
・・・・
久々にリーデルの街の冒険者ギルドに来たな。
さっそく報告するために受付に並ぶことにした。
「次の方どうぞ。」
「これの手続きを頼む。」
「あら、アランじゃない。戻って来たってことは無事に済んだみたいね。」
「ああ。」
「うん! これアランに買ってもらったんだ~ 良いでしょ~♪」
「はいはい、その話は後で聞くわ。」
「え~!」
「今仕事中なの! ほら、全員分のギルドカードを出して。」
どうやらイザベルさんは、アランさんとエレンさんが結婚することを知っていたみたいだ。
とりあえず怒られる前にさっさとギルドカードを出すことにしよう。
全員分のカードを機械に通し、処理をしてもらう。
「はい。ギルドカードと、依頼料の銀貨5枚よ、ご苦労さま。」
「ああ。」
「あ~あ、私も結婚出来る彼氏が欲しいわね。」
「う~ん、イザベルは見た目は綺麗だけど、性格がねぇ~ どうだろう?」
「エレン、それって嫌味? 性格が悪いってどういうことよ!」
「ほら、直ぐ怒る~ そう言うところだよ?」
「うっ!」
「大丈夫、きっとシュウ君が貰ってくれるよ~」
「俺!?」
「はぁ……だいたい私とシュウ君じゃ、歳が離れ過ぎてるでしょうが!」
「否定しないってことは、年齢差が無ければ良いんだ~」
「ま、まぁ、そうね。シュウ君は将来有望の冒険者だし、年齢差が無ければお願いしたいくらいよ。」
「へぇ~」
「な、何よ!」
「何でも無い~♪」
エレンさんがニヤニヤしているから、イザベルさんをからかって楽しんでるだけっぽいな。
それにしても年齢差が無ければ良いって……精神年齢的には年下だろうから、アリか!?
いや、イザベルさんがエレンさんと同じくらいの年齢だったと考えたら、20歳と7歳のカップルか……世間一般的に考えると無理だな。残念だ。
「ほら、からかって無いで帰るぞ。」
「は~い。」
「ぐっ! ほ、本日は冒険者ギルドのご利用ありがとうございました。私、イザベルが対応させて頂きました。
またのご利用をお待ちしております。」
イザベルさんがそう言って頭を下げた。内心色々思う所があるのかもしれないが、しっかりと対応してくれるってのは、流石はプロだな。
受付を離れ、一度テーブル席へと移動する。適当に空いている席に座って話をすることにした。
「みんなお疲れ。無事に帰って来れたな。今回の依頼も行きと同じで1人銀貨1枚だ。」
アランさんがそう言って、一人一人に銀貨を渡してくれた。
「「「ありがとうございます。」」」
「ひとまずこれで解散だ。今日は帰ってゆっくり休むんだな。
俺達は少し、此処で飲んでいくから帰って良いぞ。」
「アランさん、今回は僕のお願いを聞いてくれてありがとうございました。」
「「ありがとうございます。」」
「こちらの都合も有ったし、気にするな。」
「みんなもお疲れ~ また機会が有ったら依頼受けましょうね~」
「「「はい。」」」
挨拶を済ませ、俺達は冒険者ギルドを後にした。
「帰って来たばっかりだし、明日は休みにしようか。」
「そうだな。」
「うん、それで良いよ。」
「じゃあ、明日は休みってことで決定ね。僕達はこっちだから。また明後日。」
「じゃあな。」
「ちょっと待って!」
「どうしたんだい?」
「何だよ、疲れてるんだから早く帰ろーぜ!」
「その前に、パーティ資金の話だよ。今回の依頼のお金はどうする?」
「あっ! 俺、矢が6本ほどダメになった。でも、前に買ったのが有るから全部で14本有るぞ?」
「そっか、なら矢代はまた今度ね。」
「今回、長旅で装備のメンテも必要じゃない? 幾らくらいかかるの?」
「そうだなぁ、僕の場合は盾と剣だから銅貨2枚くらいかな?」
「俺は弓と短剣だけだから銅貨1枚ってところか。」
「じゃあ、今回のパーティ資金でレリウスは装備をメンテして貰ってくれ。サムは銅貨1枚ね。」
「しゃーねーな。」
サムがそういって銅貨1枚を出してくれた。
「僕達の分はそれで良いとしても、シュウ君の分は?」
「俺の武器は石だからね。維持費はかからないかな。だから銅貨2枚をそのままパーティ資金へ回すよ。」
「良いのかい?」
「まぁ、それ以外で個人的に稼いだからね。そのくらいなら問題無いよ。」
「そっか、なら有難く使わせてもらうよ。」
「ただ、細かいのが無いから両替してくれると助かるかな(汗)」
「かまわないよ。幾らだい?」
「じゃあ、銀貨で。」
「うん、ごめん。」
「俺も無理だわ。」
「なんてこった……」
「あっ、僕のとサムのを合わせたら払えるかな?」
「そうだな。面倒だが仕方ねーか。」
「ごめん。」
「シュウのくせに、そんなの気にすんな。」
「ありがとう。」
サムは相変わらずだな。まぁ、なんにせよ助かったな。
俺が銀貨1枚を渡し、大銅貨9枚と銅貨10枚に両替してもらった。
銅貨2枚をパーティ資金の方に回してと……後は。
「レリウス、これありがとう。」
俺は銅貨1枚をレリウスに渡した。
「これは?」
「帝都の屋台で代わりに払ってくれたじゃん。」
「そういえばそうだったね。」
「あの時はありがとうね。」
「どういたしまして。」
レリウスがにっこり笑ってそう言うと、銅貨を受け取ってくれた。
「これで終わりかな?」
「うん。じゃあまた明後日ね。」
「またね。」
「じゃーな。」
そういって2人は歩いて行ったので、俺も孤児院へ帰るとしますかね。俺も孤児院へ向かって歩き出した。
歩きながら今回の旅のことを思い出す。
「それにしても今回は色々と良い経験をさせてもらったなぁ~ まぁ、あのくそ親父のことは腹は立ったがそれでも人の話を簡単に信じるな、事前に調査が必要ということについては勉強にはなったか。
でも、仕方がないとは言え、日本だったら帝都まで数時間で着くような距離なのに、この世界だと1週間もかかることを考えると、ちょっと遠いよな。
もう少し気軽に遠出が出来る移動手段でも有れば良いのにな。」
車やバイク、飛行機等の乗り物が欲しいぜ。さすがにそんなものを作る知識なんか無いため無理だけどな。
だったら代わりになる何かになるのだが、異世界と言えば、魔物のティムだろう。ふと思ったんだが、この世界にテイマーみたいな職業って有るのか?
少し興味も有るし、後で冒険者ギルドで聞いてみることにしよう。




