113 仕事が終わって
「……ん」
「……君」
「シュウ君!」
「はっ! あ、あれ?」
「やっと気が付いた。もうお客さんは全員帰ったよ。」
「そっか。」
「で、これどうするの?」
レリウスが指差したのは、大量に揚がったポテトチップの山だ。
「どうしようか?」
「だったらお前達で食べちまえば良い。今日の賄いだ。」
「「「「やった~!!」」」」
「えー!」
「何だ、不満か?」
「そりゃあ、ずっと油で作業してたら食べたくなくなるって、どうせならサッパリした物が食べたい。」
「しゃーねーな。特別に坊主の分を作ってやるか。ちょっと待ってろ。」
「店長~、私達はこれ食べても良いんですよね?」
「あぁ、かまわないぞ。」
店長がそう言うと、全員が喜んでポテトチップを食べ始めた。
「旨めぇ! さっきは味見しか出来なかったからな。」
「だね、確かにこれならあの人気も頷けるよ。」
「美味しい~♪ これなら幾らでも食べられちゃう!」
「美味しい。」
全員がパリパリと勢いよく食べているんだが、ポテトチップって油だからカロリー高いんだよね。大丈夫だろうか? 特に女性2人。
ポテトチップはみるみる山が小さくなり、あっという間に完食してしまった。
「旨かった~!」
「だね。」
「でも、まだちょっと物足りないかな~?」
「私はもう良い。」
そこに店長が料理を持ってやってきた。
「だったらもう少し食うか? シュウに作った分の余りになるが。」
「良いのか? 食う食う!」
「僕も食べたいです。」
「食べる~♪」
「美味しそうだけど遠慮する。」
「じゃあ持ってくる。シュウは先に食っとけ。」
俺の分の料理を置くと、店長はキッチンへ戻って行った。
料理は余った材料で作ったのか、パンに肉野菜の炒め物にスープとリンゴーンのサラダだ。
さて、頂くとしますか。
パクリ……うん! パンも柔らかいし、何と言っても肉が5欠片も入っている! まかないとしては上等な部類に入るんじゃないか?
最期のデザートのリンゴーンも甘くてさっぱりして美味しいし、満足だ!
食べている最中に店長が戻って来た。
大皿でドンとテーブルに置くと、こういった。
「ほら、余りものだから好きなだけ取って食え。」
「やったぜ!」
「ありがとうございます。」
「食べるよ~」
どうやらバイキング方式にしたみたいだ。みんな好き勝手に取って食べていた。
俺は大量に食べられる方でも無いし、もう良いかな。
「みんな聞いてくれ!」
「店長どうしたの?」
「ん。」
「「「はい。」」」
「何と、今日の売り上げだが、大銀貨1枚を超えたぞ!」
「「「「「お~!」」」」」
「まぁ、シュウ達に支払う分と、材料費で赤字だがな。でも、明日からは十分に稼げるとみた!」
「なら店長~、給料アップをお願いします~」
「します。」
「う、うむ。考慮しておこう。」
「やった~!」
「嬉しい。」
「僕たちはさすがに無理だよね。」
「そっちはスマンが冒険者ギルドの分しか出せないな。でも、まかないを少し豪華にするくらいなら出してやろう。」
「わかりました。ありがとうございます。」
その後は後片付けと掃除を行い。今日の仕事は終わった。
「じゃあ、また明日ね~」
「バイバイ。」
「おう、また明日宜しくな。」
「「「お疲れ様でした。」」」
ナナさんとリリさんは帰って行った。一瞬、賑やかな人が居なくなることで静かになると、ちょっと寂しく感じるのは何でだろうな。
「さてお前たちの寝床だが、2階の部屋になる、こっちだ。」
店長に案内された部屋は、ベットが4つだけ有る狭い部屋だった。まぁ、寝るところが有るだけ有難いか。
「此処は泥酔して帰れない人が寝て行く部屋だ。狭いが我慢してくれ。
今から体を拭くお湯は用意するから綺麗にするんだぞ。お湯代はタダだから安心しろ。」
「「「はい。」」」
店長が部屋を出て行ったので、ベットに座って一休みすることにした。
「こうして泊まる場所も確保できたし、何とかなったね。」
「最初はどうなるかと思ったぜ!」
「そうだね。」
「これも依頼を見つけたシュウ君の御蔭だね。」
「ふ、ふん。一応感謝だけはしておいてやる。」
「へいへい。正直俺的には仕事が大変だったから微妙なんだけどね。」
「あはははっ、ご苦労さま。」
「だけど、結構儲かったんだろ? だったら良いじゃんかよ。」
「そりゃそうなんだけどね。ただ、これがあと2日も続くと思うと、ちょっと憂鬱かなって。」
「僕達じゃ手伝えないから、頑張ってとしか言えないかな。ごめんね。」
「気持ちだけ有難く貰っておくよ。」
部屋に大きな桶を持った店長が入って来た。
「お湯を持って来たぞ。悪いが3人で使ってくれ。
使い終わったお湯は外の側溝へと流しておいてくれ。」
「「「はい。」」」
「じゃあまた明日宜しくな。」
店長はそう言うと、部屋を出て行った。
俺達は、体を綺麗にした後に服の洗濯をして、言われたとおりにお湯を処分した後は、さっさと寝ることにした。
疲れていたため、ベットに入るとアッサリと意識を手放すのだった。
おやすみなさい……




