112 営業開始
「から揚げ3皿追加だよ~!」
「こっちもから揚げ2皿の注文が入りました。」
「から揚げ5皿だ。」
「3皿。」
「リリさん、何が3皿ですか?」
「から揚げ。」
「了解です!」
今、キッチンは大忙しだ。消費に対して料理が全然間に合っていない。どうしてこうなった……
最初は知らない料理ってことで全く注文が無かったのだが、罰ゲームで興味本位で頼んだ人物が、服が破けて巨大化し、虹色レーザを吐きまくって帝都を破壊しつくしたしたところで(※比喩表現です)、注文が殺到したのだ。
もう4時間程、休みなくから揚げを作り続けているので辛い……誰か代わってくれ~!!
「おい、もう鶏肉の在庫が無いぞ!」
「やった、これで終われる!」
「えっと、サムとレリウスだっけか? お前ら2人で、鶏肉を市場に行ってありったけ買ってこい!」
「「はい!」」
「マジかよ……」
「シュウ、それまでは他の料理で対応するぞ!」
「へ~い。」
どうやら終わらなかったみたいだ。くそっ!
・・・・
しばらくしてレリウスとサムが戻って来た。
「すいません。鶏肉が何処にも売ってませんでした!」
「他の奴らもこの店の真似をするために買い占めたんだとさ。」
「くそっ! やられた!」
いや、ナイスだ! 俺は心の奥で喜ぶのだった。……が、どうやら問屋は下ろしてくれないみたいだ。
「シュウ! 何か他のアイデアは無いか!」
「えー」
「追加で銀貨5枚を出そう。」
「任せて下さい!」
「シュウならそう言ってもらえると思ってたよ。頼んだ!」
「はい!」
思わず金に釣られて返事をしてしまった。どうしよう……
まずは材料の確認だが、から揚げばっかりが売れたため、鶏肉以外の材料は沢山残っているが、う~む……
折角、大量の油が有ることだし、揚げ物で考えてみるか。
揚げ物だとすると、パッと直ぐに思いつくもので、から揚げ、天ぷら、フライ、串焼き、揚げ餃子、ポテトフライ、揚げニンニク、油揚げ、揚げ豆腐、揚げパンってところか。
おっ、シャガイモとニンニンニクがあるじゃん。ならポテトフライと揚げニンニクなら行けるな。でも、これで銀貨5枚は怒られそうだな。もうひとひねりが欲しいな。
そうだ! ポテトチップなんか良いんじゃね? ぱっと見シャガイモに見えないし、何となく料理っぽくね? よし決まりだ!
皮はしっかりと洗えば、農薬なんてものは使って無いだろうし、剥かなくても良いや(笑)
後は芽と色が変わってるところを切り取ってから、薄切りにして水にさらしておく。後は水けをしっかりと取ってから揚げるだけだ。
今回は二度揚げする必要が無いため、高温オンリーだから楽だな。
ジュワアアアァァァ~~~!
ポテトチップは薄いから直ぐに揚がるので、注意が必要だ。
色が付いたところで取り出して油をしっかりと切る。後はパラパラと塩をふりかけたら完成だ。
「出来ました。」
「ずいぶん早いな。これも見たことが無い料理だな。これは何だ?」
「ポテトチップです。」
「どれ、確認してみるか。」
前回のことが有ったため、恐る恐る口へと運んでいた。
パリッ!
「ほぉ、こりゃ旨い! 塩味だから、酒のつまみとしても悪くないな。」
「どうですか?」
「よし、売るぞ!」
「はい!」
こうして酒場に、新たに一品料理が追加されたのだった。
・・・・
「馬鹿馬鹿馬鹿、俺の馬鹿!」
何が馬鹿かと言うと、から揚げが終わって楽になる予定だったのに、新たにポテトチップが追加になったことで、俺の仕事は再び地獄へと返り咲いたのだった。
「金に釣られるんじゃ無かった……」
俺はひたすらポテトチップを揚げ続けるのだった。
シャガイモが木箱に山の様に大量に有るのを見て、これは最後まで終わらないだろうな……(涙)
もういいや! 余計なことを考えるから辛いんだ。俺はマシーンだ。心を無にして、ひたすらポテトチップを作るマシーンとなるのだ!




