109 宿探し
宿を探すと言っても、俺達は土地勘が全く無い。なので、こういう時は、知っている人に聞くのが一番だ。
と言うことで、たまたま通りかかった女性に聞いてみることにした。
「すいませ~ん。」
「あら、子供? もしかして迷子になっちゃったのかな?」
「いえ、これでも冒険者なんですが……」
「あら、ごめんなさいね。それでどうしたのかな?」
「実は、今日初めて帝都に来たのですが、宿の場所が分からないんです。
安く泊まれる宿を知りませんか?」
「そうねぇ~……今の時期だと難しいかもしれないわね。」
「どうしてですか?」
「あら、知らない? 実は聖女様のお披露目が3日後に有るのよ。それを見るために大勢の人が帝都に集まってきて宿が埋まっちゃっているってのが現状なのよ。」
「聖女様って見られるんですか!?」
「ええ、ほら、向こうにお城が有るでしょ? あそこで見られる予定よ。まぁ、沢山の人が集まるから見れたとしても遠くからだろうし、小さくて分からないかもしれないけどね。」
「そうなんですね。」
俺の場合、遠くからでもオート射撃のスコープで確認くらいは出来そうだ。これは見に行くしか無いな。
「一応安い宿は知ってるから教えるけど、先ほど言った理由もあるから期待はしないでね。」
「いえ、それでも助かりますし、お願いします。」
俺は女性から宿の場所を聞き出し、そこへ向かってみることにした。
だが、案の定空きは無かったのは残念だった。
「こうなったら高くても『銀の盃』に泊まるしかないか。」
「そうだね。今日貰った依頼料で4日は泊まれるだろうし、それしかないだろうね。」
「チッ! どうしようもないんだろ? だったらサッサと行こうぜ!」
俺達は再び『銀の盃』へと向かったのだが……
「えっ? 部屋の空きって無いの!? さっき来た時は有るって言ってたのに!」
「実は先ほど来たお客様が宿泊を希望されまして、もう空きが無いんですよ。」
「そ、そんなぁ~」
「レリウス! どうすんだよ!」
「えっ? 僕に言われても知らないよ!」
「とりあえず冒険者ギルドにでも行って聞いてみようよ。」
「それしかねーか。」
「だね。」
そうと決まれば、俺達は冒険者ギルドへと移動することにした。
「次の方どうぞ。」
「すいません、冒険者にお勧めの安い宿って有りませんか?」
「申し訳有りませんが、今の時期ですとちょっと難しいですね。」
「やっぱり聖女様の関係ですか?」
「そうなります。申し訳有りませんが……」
「マジかよ……」
「どうしよう。」
くそっ、冒険者ギルドでも駄目だったか。もう野宿するしかないか。
「とりあえずせめて少しでも美味しいものでも食べられるように、何か依頼でも受けてお金を稼いでみない?」
「そうだね。」
「仕方ねーな。」
俺達は依頼掲示板を確認することにした。
帝都の特徴だろうか、他の街への護衛依頼が多い。後は街中で雑用か。逆に討伐系の依頼は、常時依頼以外は見当たらなかった。
「草むしりの依頼が有ったら楽だったんだけどな……ん?」
ふと、一つの依頼が目に入った。
「3日間の臨時店員か。」
確かに今の時期だと、沢山の人がやってくるから稼ぎ時だ。だけど、それに対しての人手が足りないのだろう。賄い付きで住み込み可と書いて有るし、条件的にも良いかもしれない。
「ねぇ、この依頼はどうだろう?」
「どれどれ? ……ふむ、良いんじゃないかな? でも僕、店員なんてやったこと無いけど、大丈夫かな?」
「贅沢言ってられねーだろうが、四の五の言って無いでやろうぜ!」
「そうだね。何事も挑戦してみようか。」
「決まりだね。」
俺は受付で依頼の処理をしてもらうことにした。
「次の方どうぞ。」
「すいません。この依頼を受けたいのですが。」
「はい。えっと、臨時店員の依頼ですね。酒場の店員なので、昼から夜遅くまでの仕事となりますが、大丈夫でしょうか?」
「はい。問題有りません。」
「では、依頼の手続きを致しますので、ギルドカードの提出をお願いします。」
「「「はい。」」」
俺達がギルドカードを提出すると、機械に通して処理をして貰った。
「手続きが終了しました。こちらが酒場の地図になります。」
「はい。」
「それでは、本日は冒険者ギルドをご利用して頂きありがとうございました。
私、ルーナが対応させて頂きました。」
手続きが済んだので、早速依頼主に会いに酒場へ向かうことにした。




