101 明日の予定
「おっ、良い匂いだな。」
夕食が完成すると同時に、アランさんも戻って来た。
「お帰り~、どうだった?」
「予定通りに進んだおかげで、特に何も無かったよ。明日も同じ感じだ。」
「そっ、良かった。」
「腹減ったし、詳細は食べながらで良いか?」
「「「はい。」」」
エレンさんが、各自自分で持って来た皿にスープをよそって配ってくれた。
では、頂くとしますか。
ズズッ……う~ん、こんなもんか。基本味付けが塩だけだし、出汁も乾燥肉と野菜から出て来るものだけだ。
孤児院で食べている物とほぼ同じで、肉が乾燥かそうでないかの違いくらいしか無かった。
「うめぇ~!」
向こうでサムが涙を流して感動していた。きっとエレンさんの手作りってことで喜んでいるのだろう。
さて、次は黒パンを食べてみよう。……と言うかこれ本当に食べられるのか? カッチカチやで!
まずはそのまま齧ってみる……
ガッ!
うん。無理! 正直このままだと、人間が食べられるものでは無いと思う。
「確かスープに浸けて食べるとか言ってたっけ。」
黒パンをスープに浸けると、汁が黒パンに染み込んでいく。そして染み込んだ部分へと齧りつく。
「マズイ。」
水分を吸ったことで柔らかくなったと言うか崩れやすくなったが正解かもしれない。ほんのりと酸っぱくて、そこにスープの塩味が混ざることで絶妙な不味さだ。
ただ、唯一の主食だろうから、頑張って食べるのだった。
最後はお楽しみのホーンラビットのステーキだ。大きさは勿論のこと、厚さもそれなりにある。
俺、この世界に来てこんなにも大きな肉を食べるのって初めてだよ! いつも小さな塊数個か、ぺらっぺらの肉だったし……あれ? 変だな……何で目から汗が出るんだろう?
「シュウ君どうしたの!?」
「あ、いえ、何でも無いです。目にゴミが入ったみたいで……ははっ。」
「そ、そう? 何か心配事が有ったのなら言ってね?」
「はい。ありがとうございます。」
エレンさんが、俺が目から汗を流しているのを見て心配してくれた。ありがとうございます。
でも、大した理由でも無いため、誤魔化しておいた。
「さて、食べながらで良いから聞いてくれ。まず夜中の見張りだが、一番最初はシュウに頼むとしよう。2番目は誰が良い?」
「なら僕がやります。」
「よし、サムはその次で良いか?」
「はい。」
「じゃあ俺が4番目で、最後がエレンな。」
「了解~」
「あ、あの! 俺が一番最初で良いんですか?」
「一番小さな子供が何を言ってるんだ。気にするな。」
「ありがとうございます。」
多分野営って一番最初か最後が楽だろうしな。途中で起こされるのは何だかんだ言って辛いしね。
エレンさんが一番最後なのは、おそらく朝食を作るからだろう。納得の順番だ。
とりあず精神年齢はともかく、実年齢では最年少なんだし、ここは有難く厚意に甘えることにしよう。
「明日も今日と同じ感じで1日移動になる。ゆっくりと体を休めるんだぞ。」
「「「はい!」」」
明日の話が終わったので再び夕食を楽しむことにした。
「そーいや、こうしてレリウスとサムと一緒に夜を過ごすのって初めてだよね。」
「そうだね。」
「そりゃ、シュウが孤児院に帰るからだろーが。」
「そうなんだけどさ、お世話になっている身なんだし、仕方ないだろ?」
「それなら今回の依頼は、よく許可が下りたな。」
「アランさんが孤児院長にお願いしてくれたらね。さすがだよね。」
「いや、多分違うぞ。おそらく俺が言わなくても許可は下りたんじゃないのか?」
「そうなの?」
「ああ、あの孤児院長の言い方だと、孤児院を出ても問題無さそうな感じだったな。」
「ふ~ん。」
「何、シュウって孤児院を出るのか?」
「だったら僕達と同じ宿を取ると良いよ。安いしね。」
「飯は微妙だけどな。」
もしかしてさっきサムが感動しながらスープを食べていたのって……そういうことなのか!?
「そうは言っても、孤児院から出て行って良いって言われてる訳じゃないし、そもそも普通孤児院を出られるのって13歳以上だから。」
「アラン、そうなの?」
「ああ。一応残りたいなら15歳までは残ることは可能だがな。シスター希望の子以外は出て行くかな。」
「じゃあ、アランは13歳で出たんだ~」
「そうだ。エレンと会ったのはEランクだったから、それから2年後だな。」
「そうだったけ?」
「何だ覚えて無いのか? あれは街中でエレンがナンパを……」
「わ~! わ~! わ~! アラン! それ以上言ったら怒るからね!」
「お、おぅ。悪かった。」
昔、アランとエレンの間に何か有ったのだろうか? 興味は有るが、あの調子だときっと教えてはくれないだろうな。




