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コンプレックスガール  作者: ぴよ ピヨ子
第七章:高校一年生
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第126話:青春

 入学式とホームルームを終えた私たちは、大宮高校の三年生である上月先輩案内の下校舎内を回っていた。私たち以外のクラスも同様に先輩たちの後を付いて回っており、決して広くはない学校の廊下には所狭しと並んだ一年生たちの人影が蠢いていた。


「ねえ、夏姫ちゃん」

「ん、何?」

「上月先輩のこと、どう思う?」

「どう思うって・・・。まあ、ルックスは整っているかなぁ~って」


 私たちの先頭に立ち、時に他のクラス集団と擦れ違いながら施設案内を続ける上月先輩のルックスは、控えめに言って非常に整っていた。着ている服は学校の制服だし、髪型だって校則のせいで派手な物にはできないのだけれど、それでもなお光り輝くその容姿。


「私、この高校に来て良かったかも・・・」

「・・・・・」

「私、恋しちゃったかも・・・」

「・・・・・」


 前後から聞こえてくる女子たちの囁き声は、周囲にいる男子たちのテンションを押し下げていく。かく言う私も瞳にハートマークを浮かべている眞鍋さんの姿を見ては微妙な気持ちとなり、何となく居心地の悪さを感じていた。


「上月先輩、彼女いるのかなぁ~?」

「さあ、どうだろうねぇ・・・」

「あれだけカッコイイと、流石に彼女の一人や二人くらいいるよねぇ・・・」


 彼女が二人もいたら色々と大変だと思うんだけれど、そこは突っ込まずにおいた。


「三人目の彼女でいいから、付き合ってくれないかなぁ~」

「・・・・・」


 どこまでが本気でどこからが冗談なのか、私には分からない。私も一応女子として一年半ほど過ごしてきたのだけれど、こと恋愛に関する話題については未だに理解できないというか、そのさじ加減が難しいというか。

 とにもかくにも、前後から聞こえてくる上月先輩のルックスを褒め称える女子たちの囁き声を右から左へと聞き流しながら、私は校舎内に散らばる各施設の場所を頭の中へとインプットしていく。とはいえ覚えるべき施設なんて本当に僅かしか存在しないので、そこまで頭を使ってはいないのだけれど。


「施設案内は、こんなものかなぁ~。殆どの特別教室は一階に纏まってるし、言うほど案内する場所もないんだよねぇ~」


 上月先輩はそう言いつつ、私たちの方を振り返る。


「それじゃあ、このあとは体育館で部活動紹介があるから、そっちに移動しようか?部活動の見学自体はいつでもウェルカムなんだけど、先ずはどんな部活があるのかをしっかり把握しないとね」


 そうして向かった先の体育館には、既に多くの人影があった。彼等は私たちと同様に先輩による施設案内を受けていた一年生たちであり、彼等の視線の先にはこれから部活動紹介をするのであろう上級生たちの姿が多数見える。


「担任の先生からも説明があったと思うんだけど、今日はこの部活動紹介を見たらそのまま解散だから」


 上月先輩はそう言うと、真っ白な歯を見せつけながら爽やかに笑う。


「明日からは早速本格的な授業も始まるし、今日くらいは肩の力を抜いて、せっかくのイベントを楽しんで帰ってよ。それじゃあ僕はこれで」


 背中を私たちに向けてヒラヒラと片手を振りながら、上月先輩は去っていく。恵まれたルックスによるものなのかそれがまた非常に様になっており、それが女子たちの謎のテンションを更に押し上げていく。


「「「「「はぁ~、上月先輩・・・」」」」」


 一方の男子たちは非常に鋭い視線をその背中へと飛ばしており、だけれどもそんな視線を全く意に介していない上月先輩に彼等の戦意は全く意味をなさず・・・。


「「「「「・・・・・」」」」」


 そうして何とも言えない微妙な空気が漂う中、上級生たちによる部活動紹介は始まった。冷たい床へと腰を下ろした私たちの眼前では、趣向を凝らした様々な部活動紹介が入れ代わり立ち代わり行われていく。


「私、バスケ部に入るの止めようかな・・・」


 眼前で繰り広げられる女子バスケ部員たちによる部活動紹介を見て、眞鍋さんが呟く。


「バスケってね、足腰を鍛えるんだよ。そしたらね、足が太くなるんだよ・・・」


 恋する乙女モードとなった眞鍋さんは、力無く頭を垂れる。


「私、決めた。たった一度の高校生活なんだし、せっかくだから桃色の学校生活にしたい」


 バスケ部の次は、バレー部だった。その次は、卓球部だった。


「皆で楽しく卓球しようぜ!!」

「「「しようぜ!!」」」

「私たちと一緒に汗臭い青春をしよう!!」

「「「イェ~イ!!」」」


 誠に残念なことに、私の周囲にいる女子たちの頭の中は上月先輩のことでいっぱいみたいだ。汗臭い青春よりも桃色で甘酸っぱい青春を望む彼女たちの耳に、上級生たちの声は全く響いていなかった。

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