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4話目


「はぁ。さすがに疲れたな」

 魔導師との会話が終わり、やっと帰っていただいたのだが、さすがに疲れた。

 もちろん、会話に疲れたのもあるが、一番は魔力回路の制御に疲れたのだろう。あまりにも多い魔力回路は、魔力を少し生成するだけで、周りに被害をもたらしてしまうため、制御が大変なのだ。

 だが、それももうすぐ何とかなるはずだ。

 なぜなら、魔導師がお茶に苦戦している間に渡した同意書のなかに、師弟関係のことも紛れ込ませたからだ。これで、週一回は俺に魔法のことを教えなければいけなくなったんだ。

 少しずるい気もしたが、今はどんな手段を使っても何とかしなければいけない。

 そうじゃないと……成長したら、魔力回路が増えてしまい、制御すらできなくなってしまうかもしれないから。

 それに……

「ひとまず寝よう。明日は早速教えてもらえるんだから」

 布団に入り、明日のことを思いながら、寝るのだった。

 だが、朝というのは案外早いらしい。体感3秒で朝になってしまった。俺は目をこすりながら、布団を剥ぎ取り、体をペタペタと触る。

 これは前世からの癖だ。

 一回寝ている間に遠隔爆弾を仕込まれたせいで、なにもされていないことを確認しなければ、体がむずかゆくなってしまう。

 とはいえ、この家にいる限りそんなことが起きないというのはわかっているんだがな。

 癖でどうしてもやってしまうんだ。

「アレス様おはようございます」

「朝から掃除か?」

「今日も魔導師様が来るそうなで」

「別に気合いは入れなくてもいいぞ。魔導師は、侯爵家よりも位低いから下手にかしこまるのはよくない」

「そうなんですか? あ、だから、昨日はゆっくりいしていたんですか?」

「そうだ。あんまり急ぐと、「私は魔導師よりも下です」って言っているようなものだからな」

 この国の習慣というのはなんとも難しい。ただ、間違ってはいけないのは、爵位というのは、どんな時でも意識しなければいけないということだ。

 そうでなければ、最悪、爵位を与えている、国王の判断をけなしていると取られてもおかしくない。

 だから、昨日はゆっくりしていたのだ。

「それに俺は長男だ。なよなよしていてはいけないんだよ」

「そうなんですか……難しいですね」

「キャサリンは、考えなさすぎなんだ。もう少し考えて行動すれば、彼氏の一人や二人できると思うんだがな」

「ちょっと、それはどういうことですか?! てか、なんで私に彼氏がいないって知っているんですか!」

「そんなことはどうでもいいだろ? それより、朝食を作ってもらえるか? 少し朝練行ってくるからな」

「はぁ、承知しました」

 キャサリンを横目に、俺は動きやすい服に着替えて庭に出る。

 侯爵家というだけあって、この屋敷は結構デカい。そのおかげで、庭をそれ相応というべき大きさをしており、走るにはちょうどいいんだ。

「よし、今日は3周を目標にしようかな」

 まだまだ体が出来上がっていないから、長距離走るのは難しいが、それでも少しずつでも鍛えておきたい。

「おや、坊ちゃんですかい?」

「ん? ああ、庭師おはよう。朝早いな」

「この時間帯が、一番活動しやすいんですよ。日差しはありますが、暑さはなく、老人にとって一番いい時間です」

「そっか。俺もこの時間が好きだよ。運動しやすい時間だ」

「いいですね。若いころの運動は、健康にいい。年取ると、運動する体力すらなくなるからねえ」

「そうか。まあ、俺は走るからな」

「ええ、頑張ってください」

 軽く庭師に挨拶をして、走り始める。あの庭師、謙遜していたが、この庭全部をあの人一人でやっているから、体力は俺よりもあるはずなんだけどな。

 まあ、今は走ることに集中しよう。

 無駄だらけの前世からの走り方を、そぎ落とさなければいけないんだから。今は、たくさん食べれて、パワーもある。

 皮と骨だけの時にやっていた走り方だと、どうにもスピードが出ないんだ。

「ふ、ふ、ふ」

 膝を上げる角度。息を吸う瞬間。目線。すべてを試しながら、ベストポジションを探す。

 とはいえ、リレーの選手になりたいわけでもないから、ある程度で止めておこう。本番はつぎなのだから。

「よし……そろそろやるか」

 俺は走りながら、魔力回路を起動する。まだ、魔力は生成しない。しかし、それでもスピードがさっきの二分の一以下になってしまう。

 魔力回路を維持するので、大変なのだ。

 だが、魔法を使うには、魔力回路がないと使うことすらできない。だから、こんな練習をしているのだ。

 維持しききれず、色が薄くなっている魔力回路を何とか保ちながら、ゆっくり走る。

「はぁ、はぁ」

 さっきよりも疲労する速度が速いな。

 もうちょっとゆっくり走るか? いや、これ以上ゆっくりしてたら、いつまで立っても上達しない。速度は落とさず、このまま行こう。

 なんとか走りながら20分が立つ。

 俺はなんとか3周走りきることができた。しかし、走り切った瞬間倒れてしまうほどぎりぎりであり、日に2回同じことをすることはできないだろう。

 魔力回路が多い分制御が難しいんだろうが……ここまで疲れてしまうのは単純に練度が足りないのだろう。もっと頑張っていかなければいけない。

「……あと一周するか?」

「やめとけ。体が持たないぞ」

 そのとき、声をかけてきたのは昨日も見た、魔導師だった。

「もう来たのか、無理やりだったから、夜遅くに来るのかと思ってたよ」

「契約だしな。面倒ごとは早めに終わらせるにかぎる」

「そうか……ごほごほ」

 負担をかけすぎたみたいで、肺が悲鳴を上げている。ただ……あと半周はいける気がするな。

 そう思うと、俺は足を動かし始めた。

「やめとけと言っているだろう」

「半周はいける。邪魔はするな」

「邪魔はしないがな。ただ、そんなに体を酷使すると、こと後の修行ができないぞ」

「……そうか。ならやめておくか」

 若干頭から抜け落ちていたが、魔導師はもう来ているんだ。なら、今から体を休めないと、修行に身が入らないかもしれない。 

 夜に修行する気でいたから、考えが及ばなかった。

「そうするといい。飯はまだだろう? 食べたらここまでこい。修行をつけてやる」

「ああ、すぐに来る」

「早くしろよ」

 俺はすぐ、部屋に戻りキャサリンが作ってくれた、サンドイッチを食べながら、疲労を取るためにストレッチを行う。食事中にこんなことをするのは行儀が悪いが、今回は仕方がない。

 少しでも疲労を取らないと、何もできないのだから。

「ふ~、もう少し伸ばすか」

 限界まで追い込もうとしてしまったせいで、太ももらへんが攣りそうになっている。自分が思っていたよりも負荷をかけすぎていたみたいだ。

 前世ではここまで追い込むことはできなかったから、調子に乗りすぎてしまったよう。

 とはいえ、これ以上ストレッチを行うのは蛇足だ。

 これ以上、魔導師を待たせるわけにはいかない。

「キャサリン、杖とローブを持ってきてくれ」

「お持ちしております」

 するとすでに、持ってきていたみたいで、キャサリンの手には、ローブと杖があった。立った五年の付き合いなのに、ほしいものまでわかるようになったのか??

 まあいい、すぐに行かなければ。

 俺は、ローブと杖を持ち魔導師の元へいく。

「待たせた」

「別にいいさ。俺が勝手に来たんだからな。それよりも……服に着られてんな。あんだけ魔力あるのに、普段使っていないだろ」

 魔導師は、本を読んでいたようだが、声をかけるとすぐこちらを向いてくれた。

「動きにくいんだよ。ひらひらした装飾品は好みじゃないんだ」

「確かにな! 俺も最初はなれなかったぞ。重いくせに、ひらひらしている。防具替わりだから着ろって言われたがな。だったら、ローブなんか着ないで裸でいたほうがマシだ」

「同意します。装飾品をどこにひっかけるかわからないし、走るのにも、重すぎて上手く速度が出ない」

「だよな! って談笑しすぎたな」

 俺は、杖を軽くふり使い心地を確かめていると、それが話を終わらせたいという催促だと思われたみたいで、話を切り上げられてしまった。

 別に、談笑くらいはしてもいいんだけどな。

「つか、杖は使ってんだな。柄の部分とかボロボロになってるぞ」

「補助具がないと魔力を制御するのが難しいんですよ。見たでしょう? 俺の魔力を」

「まあ、確かにあれはやばかった。同じ人間じゃねぇと思ったぞ……人間だよな?」

「魔力回路が多いだけです」

「だけで、すむ話の量じゃないけどな。つか、魔力回路だけじゃなくて、一度に使える量も多いだろ?」

「そのせいで、上手く魔法が使えないんだ。何とかできないか?」

 魔力回路が多いせいで魔力を上手く生成することができず、魔力出力量も多いせいで魔力を上手く制御することができない。

「無理だろ。あんな魔力量を制御できる奴なんて、それこそ魔法王くらいしかいねぇよ。まあ、坊主はそもそも、魔力を制御する練習すらできない出力量だから、魔法王レベルの制御なんてできないんだけどな!」

「……」

 こいつうざいな。

 一発くらい殴っても咎めはないだろ。

 俺は、魔導師の発現のせいで頭に血が上り、手を上げようとする。だが、この体は、二桁にも満たない年齢。力は貧弱であり、殴ったとしても蚊に刺された程度だろう。

 だが、最近面白い技術を思いついたんだ。

 せっかくだしその実験台にしてやる。

 俺はは全身の魔力回路を起動し……一瞬だけ、魔力を生成する。

 しかし、外部へは放出せず、体内部にたまった魔力を全身に満遍なくいきわたらせる。魔力回路で生成したのは一瞬だから何とか制御できているんだ。

 しかしこれからやることは俺一人では、どうにも制御しきれない。

 そんな時に手助けになるのが、杖だ。

「変換、身体強化」

 杖の補助を受けて何とか、魔法を使う。

 全身にいきわたらせた魔力を、体を強化するのに使うのだ。

 手を軽く握り、魔法がしっかり使えていることを確認すると、俺はその場で全力でジャンプする。すると、一瞬で、魔導師の顔あたりまでいける。

「は?」

 そのまま、足を前へ投げ出し顔面を蹴り飛ばす。

 無駄にたくさんある魔力のおかげで、そこらの人にはできないほどの倍率での身体強化が行えるんだ。ただ、俺は魔力を一度に使う量……魔力出力量が多いせいで、どれだけ魔力を生成しても、一度の魔法で全部使い切ってしまうんだけどな。

 そのせいで、下手に魔力をたくさん生成したら、制御できないレベルの魔法を使ってしまう。

 魔力をためることができる量が多いのも、魔法が上手く使えない原因の一つだ。

 つまり、神のところで最終的にポイントをつっこんだ『魔力回路+1』『魔力保有強化』『魔力出力強化』の3つが全部悪さしているんだ。

 もし一つでも、取得していなければこんなことにならなかったんだけどな。

「なにすんだよ! つか、使えてんじゃねぇか魔法!」

「誰にでもできる、ゴミ魔法はなんとかな。こんな魔法でも、習得するのに3年かかったんだからな」

「なら、その要領で練習すればいいじゃねぇか」

「それができたら苦労はしてない。なんのために、教えてもらおうとしているのかわからないのか?」

「おおかた、魔力制御ができないって所だろ? 魔力制御なんて、教えれることなんてないぞ!」

「俺は何とかしろといっているんだ。契約書にも書いてあっただろう? 『魔力制御を魔導師レベルにしなければならない』と」

「クソ! だったら見てやる。お前にどんだけ才能があるのかをな!」



【魔力だけはあるみたいですよ?~魔法は使えないようです~】を読んでいただきありがとうございます!!

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