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☆25☆怒号より轟け!まだ見ぬ花よ



「待てーーーーー!」

 爪の彼の声が、炎の壁に遮られる。ヒオーギとの力の差は確かにあった。しかし、戦い方次第では本気にさせることはできたはずだ。悔しさにうちひしがれ座り込む彼は、天を仰ぎ無力さを恨んだ。その様子を見守る双子姉妹は、後を追おうとする。ところがその動きを察した彼は、大きな爪を地面に突き刺した。


「俺の相手だ」

 邪魔をするな。とてつもなく圧を感じた二人は、後退りする。仲間になり制御できるか不安なモネは、不審がる。いざとなれば、毒を撃ち込めばいいと楽観視するアネは、彼に近づいた。


「分かったわ。でも、もう……負けないでよね」

 彼を見下ろすアネの目は、吸い込まれそうなほど真っ黒だった。負けてないと意地を張る彼も言葉にはせず、ヒオーギの駆けていった方をじっと見た。降り続ける雨は、炎を消そうと蒸気を上げる。それも重なり、彼の見る先にもうヒオーギの姿はない。木陰から見ていたヨモギは、そっと彼に近づき傷を癒した。



治癒草(ヒールリーフ)



 

 4人目の仲間を手に入れたグロリオーサ復活隊は、これからもヒオーギらの前に現れるだろう。互いの目的を達するために、衝突は避けられない。

 アネとモネは、雨と草木を巻き込み風を起こした。その渦の中へ包まれる4人は、静かにその場を後にするように消えた。



◇     ◇     ◇




 慌てる様子で駆ける3人は、そのまま近くの村へ辿り着いた。その3人を見て門番は、槍を構えた。ヒオーギは、咄嗟に両手を挙げ、襲撃の意図はないことを示した。そして、ルピナスの口から雨を凌げる場所を貸してほしいと願い出た。しかし門番には、そのような権限はないため村長宅を紹介された。その家は村で最も大きいようだ。

 レンガ造りのそれは、他の家とはまるで違う。中へ入ると、威厳のありそうな風貌の老人が、村人と談笑していた。きっとあの人だ。


「あの~、すみません。雨宿りできるような場所を貸して頂きたく参りました。」

 恐る恐る近づき、その老人に話しかけた。その者はルピナスを一瞥すると、またすぐに村人との会話の中へ入っていった。無視された格好になった妹を見て、放っておけなくなったヒオーギは、剣に手を掛ける。それを制止したルピナスは、再び話し掛けた。余計なことを話されても困る。


「申し遅れまして、私はルピナスと言います。母親の病の治療法を探して旅をしております。」

 兄とネリネも紹介した後も、ルピナスは話し続けるが、返答はない。談笑には次々に花が咲くばかりだ。諦めずに、冗談交じりの会話も挟みながら、言葉の銃口は向けたままだ。それをただ見守る二人は、やりきれない気持ちで一杯だ。ヒオーギの握る拳が強くなる。

 数時間後、談笑も尽き始め村人は帰っていった。それでも振り向いてくれない。ただもう、ルピナスの手数も少なくなってきた。


「もう行こう。聞いてくれないよ」

 痺れを切らしたネリネは、ルピナスに声を掛ける。仕方ないと諦め、出口の扉を開いた。すると、雨は上がっていた。


「君たち、悪魔の子なんだろ?」

 村長は、やっと口を開いた。村人のいる手前、悪魔の子の手助けをしたと知れると、信用を失いかけない。そう話す村長は、すまないと謝った。理解の得られない人は、まだまだいる。自分の子供を、生け贄に差し出した過去がある者なら、尚更だろう。

 3人は、変えられない過去を悔やんだ。


「ありがとうございます。そして、すみませんでした」

 ヒオーギは、剣を抜こうとしたことを謝るため、頭を下げた。


「この村からも、悪魔の子が生まれたんだが……」

 村長は、出ていった子の行く末が気になっているようだった。


「物真似をするのが得意な子で、皆を笑わせてくれていた」

 でも、能力に目覚めた頃だったのだろうか、急に村から出ていってしまった。何も言わずに出た子を、気に掛けている様子だ。

 ヒオーギらに出来ることは少ないだろうが、見掛けたら村長たちが心配していることを伝えると約束し、その場を立ち去ろうとした。


「待ちなさい」

 呼び止める村長は、噂話を始めた。なんでも、悪魔を完全に封じ込められる花が、あるらしいとのことだ。


「真実は分からないが、旅する中で気に留めておきなさい」

 優しい村長は、心配そうに見つめる。ルピナスは村長に近寄り、感謝を伝えながら抱きついた。柄にもないことをするもので、感謝の伝え方が行きすぎている。ヒオーギやネリネには止める間もなかった。母親を治す手掛かりになるかもしれないと思ったルピナスは、感情を抑えられなかったらしい。母を思う気持ちは、誰よりも強く大きい。

 

「こんな淀んだ世界は、必ず変えてみせるからね」


 ルピナスの言葉を否定する者は、ここにはいない。そして、別れを告げた3人はまた、森へと出て旅路を続ける。



☆登場人物紹介☆


ヒオーギ☆悪魔の子

     ルピナスは双子の妹

     朱い眼から火花を散らつかせられる

     周囲の温度を上げられる

     火技:火炎狙撃(ファイアシューティング)



ルピナス☆悪魔の子

     ヒオーギは双子の兄

     蒼い髪には時間を操れる効果がある

     時間技:時間超正転(タイムアドバンス)



ネリネ☆悪魔の子

    全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ

    水技:水力鉄壁(ハイドロウォール)

       水氷放射(コールドスプラッシュ)

       螺旋水槍(スパイラルアクアスピアー)


___________________________



グロリオーサ☆悪魔族の族長

       大噴火による天災で滅ぶ



___________________________


アネ☆悪魔の子

   モネは双子の妹

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   赤い掌→変色するとピンク色

   風を起こせる

   毒技:猛毒液玉(ポイズンボール)




モネ☆悪魔の子

   アネは双子の姉

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   紫の掌→変色すると青色

   風を起こせる

   毒技:毒薬銃(ポイズンピストル)




ヨモギ☆悪魔の子

    グロリオーサ復活隊?

    傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある

    回復技:治癒草(ヒールリーフ)




___________________________


リリー☆四ツ星村の住人

    ヒオーギとルピナスの母親

    魂を持っていかれ瀕死の状態



ホウセン☆四ツ星村の村長

     元々は護衛の職に就いていた


マリーゴ☆四ツ星村の住人

     元々は護衛の職に就いていた

     諜報役も務めている

     

__________________________




デイジー☆悪魔の子

     洗脳された村の住人

     領域内の者を操る

     占術技:洗脳領域(コントロールフィールド)




黒帽子の少年☆

       必ず力になるとヒオーギと約束した







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