☆24☆野生化した人間、その爪は大きく鋭い(2)
「こんなとこで会うなんて、奇遇ね」
あたかも偶然を装うアネは、高らかに笑った。降りしきる雨は、能力を使ったヒオーギらの体力を奪う。
「どうして、邪魔するんだ?」
気性を荒らげるヒオーギは、珍しく怒っている。
「邪魔してるのは、どっちなの?」
モネは、目を見開く。その形相はまるで、悪魔のようだ。
睨み合う双方は、目的を譲る気はないようだ。アネとモネは、勢力拡大を阻む者を排除したい。ヒオーギらは、こんなところで足踏みしている場合でないことから、早々に立ち去りたい。本当は、誰にも危害を加えたくない。しかし、命は守らねばならない。
「仕方ない」
一か八か賭けに出たヒオーギは、火矢を厚い雲目掛けて放った。その火は消えそうになりながらも、雲に突き刺さる。開けられた穴を埋めるかのように、雲が集まり始める。
「なめてるのか」
口を開いたのは、爪の者だ。
「戦え!俺は、強い者と勝負したいんだ」
大きな声は、森中に轟きそうだ。彼の目は、ヒオーギから視線を外さない。その瞳の奥は、メラメラとたぎっているようだ。
「分かった。では1対1でやろう」
ルピナスとネリネには、手を出さないよう合図する。2人は、アネとモネの動きを注意しつつ、木陰に下がった。
静寂を装いたいその場では、雨の音だけが聞こえる。ますます強さを増し、止みそうにない。
『黄爪殺傷』
初めに動き出したのは、爪の彼だ。間合いを詰める必要がある彼に合わせ、ヒオーギも近距離武器の剣で応戦した。しかし、そもそも本気で戦う気のないヒオーギは、戦うふりをして攻撃を受け流した。爪の剣の擦り合う音が響く。体力を消耗しているのは、彼の方が大きかった。
「本気でやれよ!」
彼も弄ばれていることに感づいていた。攻撃を当てることが出来ないもどかしさに、どんどん単調になる。当てては弾かれの繰り返しだ。
ヒオーギは、頻りに空を気にしている。雲の厚さは、竜巻のように鋭く地に向き始めた。
「フッ……来る」
雨が厳しくなる中、先ほど火矢を放った雲間から叫び声が聞こえる。それは激しく鳴り続け、雷は地表に辿り着く。二人の間に割って入ったそれは、ヒオーギの放っていた火矢と共に落ちた。草に引火すると、たちまち辺りを炎に包んだ。
その衝撃波に乗りヒオーギは、ルピナスとネリネを連れて森を抜けるべく走った。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
水氷放射
螺旋水槍
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域
黒帽子の少年☆
必ず力になるとヒオーギと約束した




