☆23☆野生化した人間、その爪は大きく鋭い(1)
雲は一層厚みが増す。空は今にも叫びそうだ。止む気配のない雨は、ヒオーギらの体力を徐々に削っていく。痺れを切らした一行は、重たい足を一歩ずつ前進させる。葉と蔓で笠を作ると、少しは雨を防げた。それでも雨足が強くなると、周囲の音は掻き消される。
やはり、もう少し留まるべきだったか。今、襲撃されても気配を察知することが難しい。ヒオーギは、周囲を見回すことを意識した。打ち付ける雨粒の弾ける姿が、美しい。
木の葉同士が擦れる音が、段々大きくなってきた。風が強く吹き始める。3人は、笠を手で押さえるも、下から巻き上がる風が強すぎて、飛んでいってしまった。濡れた服が、身体を重くするのを手伝う。
笠が飛ぶ拍子に空に顔を向ける。ヒオーギは、目の前に現れた人物に驚き、咄嗟に火花を散らす。そこに発生した爆風によって、3人と飛び掛かった者は弾かれた。
ルピナスが瞬時に作成した葉っぱのクッションにより、3人はダメージを抑えられ、辺りの状況を確認することに時間を取れた。一瞬見えた大きな爪は、確実に我々を狙っていた。
「ルピナス!蔓を伸ばして、大きな壁を作れるか?」
ヒオーギの考えることは大体分かるルピナスは、すぐさま実行する。雨が降りしきる中では、兄の能力は威力が落ちる。そして、ネリネが水の壁を作っては、攻撃に当たる人員が減る。しかし、壁の耐久は弱い。最初の一発は耐えられても、限界がある。草の生えていない場所からは、蔓を伸ばせないからだ。
ネリネは槍を構える。ヒオーギも剣を鞘から抜き、蔓の隙間から様子を伺う。木に登る標的の姿を捉えることは、まだ出来ていない。
一瞬だけ風が止んだ気がした。葉の擦れる音が、雨に混じりながらも微かに聞こえる。
「上だ!」
ヒオーギの言葉に、3人は見上げる。枝伝いに移動していた大きな爪の者は、身体を丸めながら飛び掛かってきた。
『螺旋水槍』
ネリネは、隙間から槍を突き出し放った水は命中した。爪でガードされたので、致命傷まではいかない。体勢を整え、正面突破するつもりだ。恐らくこの壁はもたない。ヒオーギは、ルピナスとネリネに目配せした。走ってきたタイミングで、3人とも異なる方向へ行き、挟み撃ちする考えだ。
予想通り走ってきた。前屈みになり風の抵抗を無くそうとする走り方は、知恵のある証拠か、野生の中で学んだのか。
ヒオーギらは、作戦通りに行動を起こした。彼は突っ込んでくるが、その蔓の先には誰もいない。
ルピナスは、周りの草の生長を早める。次いでネリネは、水の渦を発生させ取り囲む。そして最後にヒオーギは、その周りに点状に火柱を発生させた。四方八方を塞がれた彼は、観念したのかその場に座り込んでしまった。
『猛毒液玉』
『毒薬銃』
アネの水風船ほどの大きさの玉は、モネのピストルで撃たれ空中で飛散した。ヒオーギらは、咄嗟に自らを守る行動をしたため、彼から目を離してしまった。その隙に地面を掘り進め、アネとモネらの近くから、飛び出てきた。
ヒオーギらが相対するのは、泥を被った彼と双子姉妹だ。ヨモギは見当たらない。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
水氷放射
螺旋水槍
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域
黒帽子の少年☆
必ず力になるとヒオーギと約束した




