☆21☆槍先の見つめる未来
黒帽子の少年には、美しい心を持ち続けてほしい。淀んだ空気の世界に、大人の汚れた思想は害悪でしかない。純粋でいることへの難しさと、変化を受け入れる勇気は、勝手に身に付くものではない。強い信念を持つ、限られた者にのみ与えられるものだ。その結果、悪魔の能力が芽生えてしまったとしても、それを悪用することはないだろう。
ヒオーギらは、目的を達成するためにも進み続けなければならない。力になってくれるその時が、いつ訪れるか分からないが、真っ直ぐな気持ちで向き合うことで、必ず自らにプラスに働くことだろう。恨みを買うよりも恩を売る方が、気分は何倍も晴れやかだ。
重武装のヒオーギは、ルピナスの作ったあぜ道を歩む。その足取りに重さは感じない。軽装のネリネは、背中に斜め掛けされ空を見続ける槍が、気になっているようだ。
「ねぇ、その槍貸してくれない?」
全然使ってないじゃん。そう言うネリネは、サッと引き抜いた。確かに、長距離には弓矢を、近距離には剣を使用し、中距離の槍は使いどころが分からなかった。槍先は、ただひたすらに、ヒオーギの背中からまだ見ぬ太陽を探していた。
素振りを披露するネリネは、使い心地の良さを確かめている。畑仕事で培った強固な足腰は、ブレを感じず安定していた。流れる水は柄を伝い槍先から放たれる。
『螺旋水槍』
細く鋭い水流は、木の枝を折った。その威力は、まだまだ強くはない。折れた枝は、木から完全には離れていない。ぶら下がっている状態だ。
「まだまだ練習しなきゃいけないね」
その瞬間、所有者はヒオーギからネリネへと移った。ただ歩いているだけなのに、彼は武器を一つ失った。その内に弓矢もルピナスに取られるのか。そう一瞬頭を過ったが、鈍くさい妹には扱えない。と考え直し安堵した。その顔をルピナスに見られ、蔑むような目付きをされる。
「なあに、気持ち悪い顔して」
兄には容赦ない言葉が突き刺さる。慌てたヒオーギは、先へ進もうと言い、ルピナスから目を逸らす。
元々、2つの武器を同時に扱うことは出来ないので、ネリネが持ってくれた方が、攻撃力は上がる。槍も久し振りに握られて、嬉しいはずだ。滴る水滴が、涙を流して喜んでいるように見える。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、あなた悪魔の能力を有しているわね」
アネとモネは、木によじ登り休息を取っている男の子に声をかけた。その者は、体勢を変えず2人を一瞥し、また目を閉じた。
『毒薬銃』
モネの放つ毒技は、彼を狙っている。しかし、それはかすりもしなかった。一瞬の内に消えたかと思うと、目で追うことは叶わない速さで、彼女らの背後を取った。
「俺に勝負を仕掛けるとは、いい度胸だな」
アネは、咄嗟に猛毒液玉を足元に放った。彼は、飛び避け距離を取った。
「私たちは、あなたと戦いに来たんじゃないの。提案しに来たのなの」
モネは、彼にグロリオーサ復活隊に入って欲しいようだ。しかし、直球に勧誘しても断られるだけだ。そこで、遠回しに提案を試みた。野性的な彼の心を読むかのように、強敵がいることを伝えた。そして、その者らを共に退治しようと仕向けた。
言葉巧みに丸め込んだモネは、彼に豊富な食料を提供した。仲間になるかどうかは不明だが、どうやら、戦うことには合意してくれたようだ。
喋る間もなく食べ続ける彼は、野生児だ。何を考えているのか分かりづらい。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
水氷放射
螺旋水槍
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域
黒帽子の少年☆
必ず力になるとヒオーギと約束した




