☆19☆野生児は敵か味方か
「帰ってきたわね」
何かを咥えている様子が伺える。飛行する魔物を出迎える双子姉妹と薬草少女は、期待と不安を抱えている。しかしそれは、すぐに失望することになる。咥えているのは、木と葉で作られた人形だ。
「本当にダメダメなの」
またしても、作戦通りにはいかなかった。モネは、肩を落とし背を向ける。人形には、服の切れ端が忍ばせてあり、知能の高さが見て取れる。また、精巧に作られており、折れてしまいそうなほど意図的に曲げられた枝は、あり得ない角度ながら丈夫だ。
髪から見え隠れする葉っぱ模様の耳飾りが、特徴的なヨモギは、クスッと笑った。それは、可笑しかったからではなく、ルピナスの腕が完治していることを悟ったからだ。
◇ ◇ ◇
「俺は、出ていく」
その方が皆のためだ。そう話す彼は、手首や足首まで隠れる服装をしており、いつも手はポケットの中だ。自身の出生を知り、居心地の悪くなったこの村を出ていくようだ。両親は、何も話さない。俯く2人と彼の間にある溝は、深く大きなものになっている。静寂の中、扉の開閉する音だけが響く。その後に、母親のすすり泣く声が微かに聞こえ、彼は振り向くこともなく村を後にした。
道中では、ウサギやイノシシを狩り、川では魚を手掴みし飢えを凌いでいた。彼の手は、肥大化させ爪を刃物のように鋭く、尖らせることができる。悪魔の手のように、暗い紫色に変色する。
木に登り休息を取っていたとき、飛行する魔物を見かけた。一様に同一方向に飛び、数の多さに違和感を感じた。その一羽に彼は、引っ掻き傷をつけた。あわよくば、狩りたかったが距離が足りなかった。
魔物かどうかの判別がつかなかった彼は、それを喰らうつもりだったようだ。随分悔しがった。
◇ ◇ ◇
ヨモギは、ある一羽に目が止まった。傷をつけられている。すべて、治癒させて送り出したはずなので、木の枝に引っ掛かったのか、確認した。アネとモネは、気が付いていないようで一安心した。
明らかに故意に傷つけられたものだった。魔物や動物の仕業か、もしくは悪魔の子か。後者であることが、最も危険だ。その者は、話せる精神状態にあるのかも不透明だ。彼女は、二人にこの事を話すつもりはないようだ。静かに傷を治した。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域




