☆18☆ウェットランド
3人は、沼地とまでいかないが、とある湿地帯に到着した。曇天の空から流れるじめじめした空気が、さらに体を重くする。村から出て初めて見る場所ばかりで、どんな動物が生息しているのか分からない。松明の持ったヒオーギを先頭に縦一列になる一行は、ゆっくりと歩を進めていく。松明から散った火花が落ち、音を立てる。
動きにくいよと言うヒオーギに対して、全く聞く耳を持たない2人は互いに手を握る。
「早く、こんなとこ抜けよう」
ルピナスのか細い声が、皆の総意だ。
そこへ忍び寄る影には、怯える3人は気が付くのが遅れた。
「うわっ!!!」
叫ぶ声は一瞬で、ネリネは足を何かに噛まれ引き込まれた。咄嗟に足から水を放射した。口を大きく開け現れたのは、ワニだった。それが動物か魔物かの区別は付かないが、敵意を露にしているのは確かだ。一匹だけなら容易いが、3人が囲まれていることに気付くのにそう時間は掛からなかった。
「ヤバイかも」
ヒオーギの発言は、当たっている。背中を会わせ、飛びかかろうとしているワニに対して応戦態勢に入った。そよ風が、髪をなびかせる。湿地の水も揺れる。その揺れが、ピタッとおさまったときこそ、仕掛けるときだ。ワニも静かに身を潜めている。
静寂を破ったのは、ワニの方だった。息を合わせたかのように、一斉に大きな口を開け飛び掛かってきた。
ヒオーギは、槍と剣で向かう敵をはね除けた。ルピナスは、蔓を伸ばしワニに巻き付けた。その速度は確かに上がっている。ネリネは、水氷放射を浴びせ動きを弱めた。
一瞬の隙を見逃さなかった3人は、必死にワニを避けながら走った。飛び越えたときに、踏み向けてしまったものもいる。そんなことに気を配っている余裕もなく、ただひたすらに湿地帯を抜けようとした。
空には、異様な数の飛行する何かがいた。まるで、3人を狙っているかのように、ぐるぐると円を描きながら飛んでいる。
「あそこの茂みに隠れながら行こう」
ルピナスの指差す先には、木の生い茂る密林が見えた。3人は、身を隠しながらワニから距離をとることに成功した。
喜ぶのも束の間、次は空からの危険が迫っている。確実に3人を狙っている。ワニは、縄張りに侵入した者への威嚇であったが、今度は違う。魔物の仕業だ。
3人が寝るのを待っているのだろう。襲ってくる気配はない。木が邪魔していることも相まって、狙いにくいのだ。距離を取ろうと、ゆっくりと進んでみるが、それに対応して付いてくる。水氷放射や蔓は、届く距離にない。弓矢なら届きそうだが、当てるのは難しそうだ。
何か考えのあるルピナスは、2人に耳打ちしながら作戦を話した。
空から一匹が地上めがけて物凄いスピードで、飛んできた。それに追従するように他も続いた。地上で口に咥えた何かを持ち去った。
それを遠目に見る3人は、作戦通り上手くいったと喜んだ。地上で咥えたそれは、ルピナスが枝や雑草を合わせて作った人形だった。念には念をと、それぞれの匂いの付いた服を千切って忍ばせた。
「さぁ、次の村だ。見えてきた」
ヒオーギの向く先に明かりが見える。温かい火が歓迎しているのか、熱い炎が威嚇しているのか、どちらにせよ3人は、進むしかない。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域




