☆17☆不思議な夜
ルピナスは夢の中。すやすやと眠るその顔を見てヒオーギは、安心したように微笑む。
「ゆっくり休んで」
その静かに囁くような声は、きっと届いていないだろう。ヒオーギは、そのまま自身も眠りについた。
人々が寝静まった頃、小さな人影が近付いていた。ルピナスの眠るベッドの側に立つ少女は、包帯の巻かれた腕や足に手をかざした。すると、黄緑色のみずみずしい葉が覆い被さり、しばらくして消えた。そして、その少女は静かにその場から離れた。
「あなたは生きてなきゃダメだよ」
声は、ルピナスにのみ聞こえるようだった。彼女の眉が微かに動く。
☆ ☆ ☆
「ヒオーギ!」
暗闇の中、キョロキョロと辺りを見回す。ルピナスは、兄の名を繰り返し呼ぶ。一筋の光が差す所に、ヒオーギが手招きしている。それに安堵した彼女は、ゆっくりと近付こうとした。しかしその兄は、どんどん離れていく。歩みを早めるが、足が思うように動いてくれない。次第に兄の姿が見えなくなり、力の限り手を伸ばした。ルピナスの呼ぶ声がこだまする。それは、叫び声に近かった。
☆ ☆ ☆
勢いよく布団を捲り、上体を起こした。
「なんだ?」
自慢の剣の手入れをしていたヒオーギは、慌てて反応する。兄の姿を捉えるとルピナスは、涙を一粒こぼした。
「え、ルピナス、もう起きれるの?」
湯呑みの入った膳を運ぶネリネは、彼女の状態に驚きを隠せない。
「あれ?そうみたい。手も足も動かせるよ」
どういうことだろう。時間は戻せないはずなのに……。
悪魔の子の体の体質を我々は、まだ深く理解していない。包帯を外すと、火傷は跡形もなく消えており、綺麗に治っていた。ヒオーギとネリネは、両手を挙げて喜んだ。ルピナスも笑みを浮かべるが、どこか奇妙さも残る。
この村に居続ける必要もないため、離れることにした。ネリネは、引き続き同行してくれるようで、ルピナスは嬉々として笑う。ヒオーギは、より肩身が狭くなった気分だ。
村の人々とデイジーに手を振り、お別れの挨拶をした一行は、深い森の中へと歩みを進めていった。
「ありがとね」
3人の姿が見えなくなるまで、手を振り続けたデイジーは、そっと感謝した。そして、両親に手を引かれながら家へと帰っていった。
◇ ◇ ◇
「どこへ行ってたのなの?」
モネは、大量の飛行する魔物を目の前に並べ、あなたの所で止まっていると言わんばかりの視線を送る。
ヨモギは、軽く頷くと何も言わず、作業を進めた。アネは、興味の無さそうに眠っている。溜め息を漏らすモネは、変わり者に囲まれて疲れるといった表情を浮かべる。
心を開いていないだけなのか、他に企みでもあるのか、その真意はまだ分からない。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている
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デイジー☆悪魔の子
洗脳された村の住人
領域内の者を操る
占術技:洗脳領域




