☆15☆占術使いの少女(2)
明朝、暗がりの中2人の少女は、行動を始めた。飛び掛かる村人をルピナスの蔓で動けなくし、ネリネの水攻撃で軽傷を負わす。その隙に、デイジーの居住地へ一気に攻め込む。2人の技を、最大限活かせる作戦を立てた結果がこれだ。
「あまりにも単調過ぎな……くはないよね」
静かに首を横に振った。核心を突かれることを恐れたルピナスは、目を細めて今にも蔓を絡めさせようとしている。
「作戦通りにね」
その顔には使命感と奇妙さが陰る。
2人は、村の壁をよじ登り静かに侵入した。門からは遠く、門番は気が付いていない。ひ弱な槍は、雲を突き刺すときを待ちわびている。朝が早いからか、村は静まり返っている。作戦通りと意気込んでいたが、あっさりとデイジーのところまで辿り着いてしまった。
「拍子抜けしたね」
実は最も不安がっていたルピナスは、安堵の表情を浮かべる。ネリネも頷き、扉の隙間から中の様子を伺う。目に映る光景は、拍子抜けどころではない。
「誰もいないよ」
その言葉に、慌ててルピナスも覗き込む。家の中へ入るも、室内にデイジーの姿はない。
「何のご用かしら」
不意に後方より声を掛けられた。目を見開く2人は、後ろを取られ、しまったという気持ちになる。横並びになる2人の間を縫って、部屋へと入ってくるデイジーは、やけに落ち着いている。
「ヒオーギはどこ?」
ルピナスは、感情を捨て真っ直ぐに聞いた。
「村の外れの草原よ」
どうしてここまで素直なのか。何を企んでいるのか。嫌な予感しかしない。ルピナスは、ネリネに部屋を出るよう目配せをした。
ところが、出口を塞ぐのは村人たちだ。先程まで全く姿を見せなかったはずが、どこに潜んでいたのか。異常に暗かった瞳が、ピンク色に光を放ったかと思うと、一斉に2人に攻撃を仕掛けてきた。
植物の片付けられたこの部屋に、ルピナスは手も足も出ない。ネリネは、小刻みに水を放ち続ける。
「キリがないわね」
『水氷放射』
ネリネは、手足へ水を浴びせ凍らせた。身動きが取れない村人は、その場へ倒れ込んだ。その隙を狙って外へと出ようとする2人に、デイジーが叫んだ。
『洗脳領域』
衝撃波が2人を狙う。
このままだと全く同じ展開になる。それを危惧したルピナスは、身体を投げ出しネリネに覆い被さった。草色のリュックサックが衝撃を吸収してくれたおかげで、2人は無傷だ。
「このリュックの効果か」
ヒオーギにだけ、デイジーの攻撃が当たった理由が分かった。ホウセンがくれたそれは、収納に加えて盾の役割も果たすと伝えられたが、まさか悪魔の能力までも防げるとは思っていなかった。何でもというわけにはいかないだろうが、とりあえず今はこの場を切り抜けられる。
「行くよ、ネリネ!」
腕を抱え上げ出口まで走り、そのままヒオーギのいる場所まで駆けた。
デイジーを後ろ目に見た。悔しそうな表情を浮かべたかと思うと、すぐにニヤリと口角を上げた。その面構えに隠れた恐ろしさを、垣間見た気がした。
「ヒオーギ!」
ルピナスは、草原に佇む兄の名を呼んだ。その声が届いているのかどうか、ヒオーギは背中を向けたまま動く気配がない。恐らく、この村の人々と同じように洗脳されているのだろう。2人は、ゆっくりと距離を詰めた。
そこへ、空から無数の火矢が降ってきた。地面に円形に突き刺さるそれは、ヒオーギを中心に囲んだ。すぐに火柱へと変貌するとドーム状になり、ルピナスとネリネを近付かせまいとしているように思えた。
ネリネの水氷放射では、水量が足りず火は消えない。ルピナスは必死に兄を呼び続けた。
「あなたたち兄妹の絆は、その程度ってことよ」
村人を引き連れて、悠然と歩いてくるデイジーは、嘲笑うかのように吐き捨てた。
頭にきたネリネは、戦闘態勢になった。ルピナスは、俯き悩んでいる。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている




