☆14☆占術使いの少女(1)
「ねぇねぇ、そこにいるんでしょ」
雑草の隙間から染み込む水滴が、ルピナスを捉える。蔓を元に戻していくと、そこには白いワンピースを着た背の高い少女が立っていた。
ネリネ!!?
ルピナスは、大きく目を見開いて驚き、彼女の名を口にした。そして、思わず飛び付いてしまった。
「どうして、ここにいるの?」
2人の少女は、笑みがこぼれる。ネリネは、あの後のことを話し始めた。
「両親や弟とも普通に話せるようになって、村の人からの嫌がらせも庇ってくれるようなったの」
あの一件で孤独ではなくなった。家族と楽しく暮らしていけると安心した。
「でも、本当にそれでいいのかな」
特殊な能力をもって生まれたけれど、私にしかできないことがあるのではないか。
「私を必要としてくれる人がいるのであれば、全力で協力したい」
真っ直ぐに見つめる瞳の奥は、キラキラに光っていた。村の皆もきっと私を認めてくれる。その日が来るまで、必死になってみる。彼女の決意にルピナスは、すべて同意した。
ルピナスは、ヒオーギを救い出し、村もデイジーの支配から解放するつもりだ。ネリネは、彼女に従い力の限りを尽くすと約束してくれた。
「大丈夫?ネリネ」
「ルピナスこそ、足引っ張らないでね」
最も気にしていることを指摘するネリネに、悪気はない。心を針で刺されているような感覚に陥るが、ルピナスはヒオーギのために頑張ると誓ったことを思い出す。
「絶対に上手くいく」
そう信じて疑わないルピナスは、明日の朝の出発に合わせて、蔓を伸ばし覆われた草の中で眠りについた。
「自由人過ぎない?早く行かなくていいの?」
妹ってマイペースなの?長女のネリネには、理解するのに時間が掛かる。手を焼きそうだ。ネリネは、やれやれと呆れた表情のまま彼女に背を向けた。ルピナスの作ったあぜ道は、行きと帰りで随分と完成度が異なる。必死に逃げてきたことも起因すると思うが、兄に寄せた信頼は想像以上のものなのだろう。
☆ ☆ ☆
ヒオーギは、未だにデイジーの領域内にいる。その脳内に、自由は認められていない。
「デイジー様は美しい」
「デイジー様は美しい」
「デイジー様は美しい」
夜の集会に集まった村人たちは、一矢乱れぬ大声を出した。轟く声は、地面を揺らすほどだ。舞台上にいるデイジーは、満更でもない顔を浮かべ、手を振りながら玉座に座る。
洗脳された村人に拒否権はない。拳を突き上げながら叫ぶその言葉に、血が通っているようには思えない。ただ文字を並べただけの飾りだ。
「新しい仲間を紹介するわね」
そう言うとデイジーは、ヒオーギを壇上に上げた。その朱い眼に、光りはない。瞳の奥は真っ暗闇だ。火花を散らして点火した導火線は、村人に注目された。歓迎の花火が打ち上げられる。質素な火柱でも村人たちは、大きな歓声で沸いた。しかし、その表情に豊かさはない。それは、ヒオーギも同様であり、豊富さはデイジーにのみ与えられた。高らかに笑うその声は、夜の闇へと消えていった。
◇ ◇ ◇
「モネ~終わった?」
寝そべりながら赤い果実を頬張るアネは、空飛ぶ魔獣の引き入れの成功の是非を問う。モネは、体たらくな姉に呆れた表現を浮かべた。
「姉は、しっかり者のはずでしょ」
一体、どの姉弟と混同しているのかと言わんばかりの態度で、食欲を満たす。
モネの毒薬銃により負傷した翼獣種を手当てするヨモギは、二人の会話を黙って聞いていた。なぜ、この姉妹と行動を共にしているのか。疑問は一向に解かれようとしない。
☆登場人物紹介☆
ヒオーギ☆悪魔の子
ルピナスは双子の妹
朱い眼から火花を散らつかせられる
周囲の温度を上げられる
火技:火炎狙撃
ルピナス☆悪魔の子
ヒオーギは双子の兄
蒼い髪には時間を操れる効果がある
時間技:時間超正転
ネリネ☆悪魔の子
全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ
水技:水力鉄壁
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グロリオーサ☆悪魔族の族長
大噴火による天災で滅ぶ
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アネ☆悪魔の子
モネは双子の妹
グロリオーサ復活隊を構成する一人
赤い掌→変色するとピンク色
風を起こせる
毒技:猛毒液玉
モネ☆悪魔の子
アネは双子の姉
グロリオーサ復活隊を構成する一人
紫の掌→変色すると青色
風を起こせる
毒技:毒薬銃
ヨモギ☆悪魔の子
グロリオーサ復活隊?
傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある
回復技:治癒草
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リリー☆四ツ星村の住人
ヒオーギとルピナスの母親
魂を持っていかれ瀕死の状態
ホウセン☆四ツ星村の村長
元々は護衛の職に就いていた
マリーゴ☆四ツ星村の住人
元々は護衛の職に就いていた
諜報役も務めている




