表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/37

☆10☆悲しき水人間(2)

 ニャー!ニャー!シャッシャッ!


 四つん這いになり、猫と戯れているのはヒオーギだ。そこへ戻ってきたルピナスは、(さげす)むような目で見つめた。

「何してんの」

 暇すぎたからと言い訳するが、一気に恥ずかしさが込み上げてきたヒオーギは、まるで自分自身の眼のように顔を赤らめた。座り込み背を向きながら、ネリネとの交渉はどうだったか問うた。その結果を寂しそうに話すルピナスは、今にも泣きそうだ。

 大丈夫だから、と妹に駆け寄る兄は、背中をさすった。そこに流れる時間は、進むわけでも戻るわけでもなく、止まっているように感じられた。



ワオーーーーーン!!!



「今度は、犬の真似?やめてよね」


「違うよ」


 ルピナスは、またヒオーギの悪ふざけかと思ったが違うようだ。胸騒ぎが止まらない兄は、心当たりがある。あの時のオオカミだ。でも1匹じゃない。大群でいる。



 オオカミの群れは、この村へ強行突破で侵入してきた。門番をはね除け、中心地まで一気に駆けてきた。1匹1匹が、何か言いたげに吠え続ける。村人らは、変わった動物の異常行動に驚きを隠せない。その遥か後方から、息を荒くして歩いてくる3人組は、村長を呼びつけた。呼吸を整えつつアネは、可愛い愛犬を傷つけた者がこの村にいることを告げた。

 確証はないのにも関わらず憶測だけで、村人たちは一様に厄介な奴の家の方を向く。その行動を見逃さなかったモネは、行くよと一声かけ群れを引き連れて向かった。村人たちは、引き留める素振りも見せず、ただじっと眺めているだけだった。

 



「ねぇねぇ、私たちの可愛いワンちゃんを傷つけたのは、あなたなの?」

 畑仕事をしていたネリネも、騒々しい足音に気が付いた。身に覚えのない出来事に首を(かし)げる。


「とぼけないでくれるかしら!」

 アネは、反応の鈍い彼女に対して攻撃した。


猛毒液玉(ポイズンボール)


 それは、畑に飛び散り作物を溶かした。何の騒ぎかと両親と弟が、家から出てきた。3人に向かってネリネは、危ないから遠くへ逃げてと叫び、手から水を放った。慌てて林へと駆けていった。



「あなたも、こちら側なのね」

 悪魔の能力を見たアネは、オオカミを傷つけたことは見逃すから、自分たちの仲間になるよう言った。

「そうすれば、あなたの家族に危害は加えない」


 そもそも、オオカミを傷つけていないので、ネリネは即答で断った。誘いを断られたことで頭にきたアネは、オオカミたちに襲うように指示した。

 それと同時にネリネは、長靴を脱ぎ捨てた。すると彼女の周りの土は、みるみるうちにぬかるんだ。それに足を取られたオオカミたちは、身動きが取れない。

 

「私の出番なの」

 1歩前へ出たモネは、右手人差し指をネリネに向けた。


毒薬銃(ポイズンピストル)



火炎狙撃(ファイアシューティング)


 木の陰から放たれた矢は、炎を帯びながら真っ直ぐ毒液に当たった。驚いたモネは、矢の飛んできた方向を見た。


「ふぅ~、危なかった」

 ヒオーギの正確さには、驚愕する。

「間一髪だったね」

 ルピナスは、ネリネを心配して駆け寄った。ヒオーギが来たことで、ぬかるんだ土は元に戻り固くなった。オオカミたちは、今にも走り出そうとしている。


「そうか、分かったわ」

 ヒオーギの火の攻撃を見て、全てが合致した。

「オオカミを傷つけたのは、あなたね!その剣か槍で切りつけたのでしょ」

 ついに、バレてしまったヒオーギは、すぐに表情に出てしまう。ルピナスは、慌てふためく彼を見て呆れた。分かりやす過ぎる。


「ワンちゃんたち!突撃なの」

 一斉に走り出したオオカミは、主にヒオーギに向かって突進してくる。



水力鉄壁(ハイドロウォール)

 


 ネリネは咄嗟に、大きな水の壁を築き上げた。ぬかるんだ土で身動きが取れなくなったのを思いだし、水を苦手とする生き物なのだと推測した。案の定、その壁を目の前にして、オオカミたちの動きが止まった。



時間超正転(タイムアドバンス)


 

 その隙にルピナスは、雑草を生長させ、(つる)をオオカミの足に巻き付けた。ヒオーギは、火矢を飛ばしオオカミの群れを火の渦で囲った。


「もう、どうして上手くいかないの」


 次々と繰り出される攻撃に、策を失ったグロリオーサ復活隊は、枯れ葉や砂を巻き上げて、風を起こし消えていった。



 ネリネが能力を解除すると、辺りが水浸しになり炎も消えた。水を被ったオオカミたちは、そそくさと逃げていった。



☆登場人物紹介☆


ヒオーギ☆悪魔の子

     ルピナスは双子の妹

     朱い眼から火花を散らつかせられる

     周囲の温度を上げられる




ルピナス☆悪魔の子

     ヒオーギは双子の兄

     蒼い髪には時間を操れる効果がある




ネリネ☆悪魔の子

    全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ




___________________________



グロリオーサ☆悪魔族の族長

       大噴火による天災で滅ぶ



___________________________


アネ☆悪魔の子

   モネは双子の妹

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   赤い掌→変色するとピンク色

   風を起こせる

   毒技:猛毒液玉(ポイズンボール)




モネ☆悪魔の子

   アネは双子の姉

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   紫の掌→変色すると青色

   風を起こせる

   毒技:毒薬銃(ポイズンピストル)




ヨモギ☆悪魔の子

    グロリオーサ復活隊?

    傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある

    回復技:治癒草(ヒールリーフ)




___________________________


リリー☆四ツ星村の住人

    ヒオーギとルピナスの母親

    魂を持っていかれ瀕死の状態



ホウセン☆四ツ星村の村長

     元々は護衛の職に就いていた


マリーゴ☆四ツ星村の住人

     元々は護衛の職に就いていた

     諜報役も務めている

     



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ