表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/37

☆9☆悲しき水人間(1)


 

 ヒオーギの寝ているところを襲おうとしたオオカミは、アネの指示により仲間を引き連れて2人を追っていた。傷口には、赤いスカーフを巻いている。ルピナスの作った道と匂いを頼りに、魔物の大群は着実に近づいていた。双子の姉妹と謎の多い少女ヨモギは、最も後方から戦況を伺おうとしているようだ。

 

「こんなに大勢、どうやって集めたのなの?」

 モネの知らないところでアネは、戦力を増やしていたようだ。満足気の表情に鼻を高くした。ヨモギは、無表情のまま二人の掛け合いを注視していた。

「ふふん♪ワンちゃんには好かれるのかもしれないわね」

 そう言うアネだが、実は1匹ずつ毒で操っている。頭の良いモネは、気が付かないふりをしている。手伝ってなんて頼まれたら面倒くさい。

 




 

◇       ◇       ◇





 この林は、ネリネの植えた木の実の栽培地のようだ。ラズベリーの他にもあるのだろうけど、勝手に散策するのはやめておこう。でも気になる。ルピナスがネリネに会いに行っている間、ヒオーギは留守番中だ。女の子同士の方が分かり合えるからと、正論っぽいことを並べられて、言いくるめられた。決して納得しているわけではない。暇すぎて横になるヒオーギは、空を見上げた。相変わらず曇天だ。



「ネリネさん!」

 畑仕事をしている彼女は、大きめの長靴を履いている。水が溢れんばかり満たされている。とても歩き辛そうだ。

「あぁ、昨日はどうも。何もしてあげられなくて……ごめんなさい」

 声のトーンが暗い。何か嫌なことでも言われたのだろうか。ルピナスも一緒に手伝いながら、それとなく聞いてみた。

 ネリネには、5つ下に弟がいるようだ。実の子である息子を両親は溺愛しているようで、悪魔の子である彼女は冷たく扱われている。家族にまでも愛されていないのでは、生きていても辛いだろう。村の中心地からも遠いこの場所に暮らすのは、村民の信用を回復させるためにしている。弟が10歳になれば、村の人の見る目が変わる。そう信じて疑わない。この世界は、それだけ10年生きるのに(こだわ)っている。

 

「ねぇ、私たちと一緒に来ない?」

 ルピナスは、静かに耕しながら聞いてみた。ネリネは多少驚きを見せたが、また作業に戻った。

「行かないよ」

 私は、生まれるべきじゃなかった。だからこそ、ここで誰にも気が付かれず一生を終えるんだ。


 その目は、(にじ)んでいた。滴る汗と混じって分かりにくいが、確かにそれは涙だった。悪魔の子であろうと、変わり者であろうと、彼女は人間だ。ルピナスには、同じ思いの兄がいるが、ネリネは独りだ。2人には感じられない孤独を味わっているはずだ。軽率に誘った自分を叱った。

 そして、ネリネに別れとお礼を告げ、ヒオーギのもとへと帰った。



☆登場人物紹介☆


ヒオーギ☆悪魔の子

     ルピナスは双子の妹

     朱い眼から火花を散らつかせられる

     周囲の温度を上げられる




ルピナス☆悪魔の子

     ヒオーギは双子の兄

     蒼い髪には時間を操れる効果がある




ネリネ☆悪魔の子

    全身から溢れ出る水で、通った道はいつもぬかるむ




___________________________



グロリオーサ☆悪魔族の族長

       大噴火による天災で滅ぶ



___________________________


アネ☆悪魔の子

   モネは双子の妹

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   赤い掌→変色するとピンク色

   風を起こせる

   毒技:猛毒液玉(ポイズンボール)




モネ☆悪魔の子

   アネは双子の姉

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   紫の掌→変色すると青色

   風を起こせる

   毒技:毒薬銃(ポイズンピストル)




ヨモギ☆悪魔の子

    グロリオーサ復活隊?

    傷口に手をかざすと現れる葉には癒しの効果がある

    回復技:治癒草(ヒールリーフ)




___________________________


リリー☆四ツ星村の住人

    ヒオーギとルピナスの母親

    魂を持っていかれ瀕死の状態



ホウセン☆四ツ星村の村長

     元々は護衛の職に就いていた


マリーゴ☆四ツ星村の住人

     元々は護衛の職に就いていた

     諜報役も務めている

     



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ