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☆7☆旅の始まり

 悪魔を倒そうにも、実態のないものには攻撃は当たらない。母親を救うには他に手段があるはずだ。もたもたしている暇はないんだ。出来ることからやっていこう。


「いよいよだ!」

「そんなこと声に出さないでよ、恥ずかしい」


 気持ちを高めるために言ったんだよ。と弁解するヒオーギだが、ルピナスは頭を抱える。思ったことをそのまま喋ってしまうと、不都合なことも起こり得るかもしれない。彼女は、それを懸念した。

 

「さぁ、門戸を開けよう」

 ホウセンの言葉に合わせ、内側の門番は勢い良く開けた。外側の門番は、まだ休養している。


「行こう!ルピナス」

 武装するヒオーギを先頭に、半歩下がったルピナスが続く。胸を張り、腕を大きく振り闊歩する彼は、上機嫌なようだ。それに対し、自信満々の兄を見て恥ずかしがる妹は、赤らめる顔を隠すように(うつむ)きながら進む。荷物は、草色のリュックサックだけだ。丸い見た目のそれは、背中を守れるような盾の役割も担う優れものだ。

 ルピナスは、旅の始まりに対する高揚感はあるものの、命を第一に考える冷静さも見失ってはいけないと、心に決めている。ヒオーギの背中は私が守ると言わんばかりに、歩幅を気にする。彼を抜かして前へ出ることはないだろう。特に護身術は身に付けたので、サポートに徹する。そんなことを考えている間に、村の門が小石ほどの小ささになるまで離れた。


「こっちであってるんだよね」

 ホウセンからもらった地図を手放そうとしないヒオーギが先導する。直感で突き進む彼は、頼り甲斐があるとは思えない。彼の指は禿山を差しており、明らかに間違っていた。幸先の良くない旅の始まりに、これから先が思いやられる。

 見かねたルピナスは、ヒオーギが差し出した地図を受け取る。つい数分前の考えが無かったことに、彼の前を歩みだした。面目なく思う兄は、肩を落として妹に付いていく。時々ずり落ちそうな矢筒を支える。

 元気のあったヒオーギは、一歩ずつ進むにつれて徐々に疲れてきたのか、ルピナスとの距離が広がっていく。彼女がどれかを持とうとするも、頑なに拒否する彼にもプライドがあるようだ。卑屈にならないといいが、お互いの事をよく知った双子だけに、遠慮は必要ないように思える。ほんの少し早く産まれただけで、慕われたいと思うものなのか。男女であるがゆえに起こり得る現象なのかもしれない。

 この世界は厚い雲に覆われ、太陽が隠れてしまっている為、気温はあまり上がらない。しかし、暗くなるのは早い。街灯なんてものはない。明かりは、ヒオーギの起こした火による松明のみだ。舗装されたわけではない道を進むものだから、ルピナスは申し訳なさそうに、草を枯れさせながら歩く。ごめんねという声が、歩を進める度に吐き出されていく。


「そろそろ休もうか、もう暗くなってきたし」

 重装備のヒオーギは、限界のようだ。ルピナスも危険は最小限に抑えたいと思っており、同意した。

 無心に歩き続けたが、村はまだ見えてこない。木々が生い茂っており、また高い建物も存在しないだろうから、そもそも相当近づかないと発見し得ない。

 大きめの木にもたれ掛かり、互いに異なる方向を向いて座った。雑草がクッションの役割を果たしてくれている。ルピナスは、今度は感謝の言葉を綴った。そして2人は眠った。




 夜の森に怪しい気配が、近づこうとしている。それが何か、2人はまだ気が付いていない。悪魔が滅んだ時、従順な魔物まで滅んだのか不確かなままだった。魔物の多くは山に生息していたが、下等なほど森に住処を追いやられていた。コウモリやコブラ、オオカミの見た目のような魔物がいた。

 しかし、下等な魔物のため悪魔の能力を有する2人なら、苦戦することはないだろう。


炎剣(ファイアソード)!」

 瞬時に眼を開けたヒオーギは、気配に気が付いた。目を光らせて近づくオオカミに対し、腰に携えた剣を抜いた。座った状態であったために、傷は浅かった。驚いた魔物は、キャンキャンと鳴き逃げていった。見た目はオオカミに似ていたが、耳は大きく尻尾は細く長かった。


「危なかった、大丈夫?ルピナス」

 真後ろに座る妹の様子を伺った。ルピナスは、寒さを凌ぐためか、草を生長させ、木の枝に(つる)を巻き付かせ、毛布のように身体全体を覆っていた。まるで気が付いておらず、すやすやと眠っていた。

 暖かそうだな、俺にも分けてくれよと一瞬頭をよぎったが、それでは妹を守れないと思い直し、目を閉じた。


「行くよ!いつまで寝てるの?」

 翌朝、体力の回復したルピナスは、兄を起こそうと体を揺すった。草は元の長さに戻っていた。ヒオーギは、結局あの後も深くは眠れなかった。

「よし!行こう」

 妹を不安にさせないためにと、昨晩の事は黙ったまま、元気よく見せて立ち上がった。



☆登場人物紹介☆


ヒオーギ☆悪魔の子

     ルピナスは双子の妹

     朱い眼から火花を散らつかせられる

     



ルピナス☆悪魔の子

     ヒオーギは双子の兄

     蒼い髪には時間を操れる効果がある





___________________________



グロリオーサ☆悪魔族の族長

       大噴火による天災で滅ぶ



___________________________


アネ☆悪魔の子

   モネは双子の妹

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   赤い掌→変色するとピンク色

   風を起こせる

   毒技:猛毒液玉(ポイズンボール)




モネ☆悪魔の子

   アネは双子の姉

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   紫の掌→変色すると青色

   風を起こせる

   毒技:毒薬銃(ポイズンピストル)



___________________________


リリー☆四ツ星村の住人

    ヒオーギとルピナスの母親

    魂を持っていかれ瀕死の状態



ホウセン☆四ツ星村の村長

     元々は護衛の職に就いていた


マリーゴ☆四ツ星村の住人

     元々は護衛の職に就いていた

     諜報役も務めている

     



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