表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/37

☆6☆門出

 四ツ星村にいる双子は、自らの能力を扱えるよう何度も同じ動作を繰り返して、身体に染み込ませている。

 弓矢を火矢に、槍は焔槍(えんそう)、剣を炎剣(ファイアソード)へと装いを変え、男心をくすぐる武器たちは、ヒオーギに操れるのか。それぞれの武器を身に付けた姿は、とても動きにくそうだ。弓は左肩で矢は右腰に、槍は背中に斜め掛けし、左腰には剣を携えた。

 その立ち姿は、ルピナスからの笑いを誘った。重々しい格好の朱い眼の少年は、妖艶な蒼い髪の少女の心の支えだ。

 

「どれか……ププ……持ってあげようか……ハハハ」

 ヒオーギの溢れ出る面白さに、ルピナスは堪えきれず吹き出してしまう。両手で口を隠す仕草は可愛いが、完全にバカにしている。それを感じたヒオーギは、いいよと吐き捨てるように言い断った。


「ねぇ、見てみて」

 機嫌を悪くした兄に、妹なりのユーモアを表してみた。自身の髪をバタつかせ、両手を空へと向けると、地面の雑草がみるみるうちに生長し、ルピナスを覆い隠した。

 語彙力のないヒオーギは、驚きを隠せずただ一言「……凄い」とだけ口にした。そこには、安堵の表情も見え隠れする。

 そして伸びた草は、ルピナスを守る盾になるだろう。ヒオーギに心配をかけないよう、攻撃力のなさを上手くカバーした。


「ただ凄いだけ?(すさ)まじいでしょ」

 ヒョコっと顔を出し、ヒオーギを煽った。

「賢さアピールするなよぉ」

 地面を強く蹴った。それに合わせ、身に付けた武器がガシャガシャと音を立てる。もうルピナスには笑われっぱなしだ。

 

 2人の物語は始まったばかりだ。未熟さの残る少年少女は、目的を果たすべく突き進む。

 悪魔族の族長グロリオーサに、魂を持っていかれた母親は、今も瀕死の状態が続く。治す方法は不明だが、グロリオーサの影響が残ったままではいけない。根絶しないことには、先へ進めない。

 それを朱眼と蒼髪が担う。悪魔の能力を持つ2人でないと敵わない。



「あの子たちは、逞しくなったよ」

 ここ数日で著しく成長した2人の事を、リリーに報告した。頭は悪いが武術に長けるヒオーギと、ひ弱だが聡明なルピナス。きっと互いの短所を補いながら、長所を生かせるよ。

 そう信じて疑わないホウセンの元に、マリーゴが駆けつけてきた。


「大変な事が分かった」

 血色を悪くした男は、どうも落ち着かない様子だ。

  

 アネとモネについて調べてきたのだ。

 二人の出生した村は、統率が取れていない無法地帯と化していた。噴火の影響が強く、作物が育ちにくい環境となってしまった。結束を固めるべきところなのに、略奪が横行してしまい、とても住める状況ではない。ほとんどの村人は、外へ出て散り散りになっている。村としての機能は果たしていない。

 アネとモネが、人間を信用しない理由の一つかもしれない。また、グロリオーサ復活隊については何の情報もなかった。つまり、二人のみで構成されている可能性が高い。


「悪魔がいなくなったからといって、全てが上手くいくわけではないのだな」

 同族で争うことに酷く悲観するホウセンは、他に情報はないかと(たず)ねた。

  

「その村出身の者から聞いたのだが、どうやら陽光が射す村があるらしい」

 そこでは、悪魔の支配は無かったらしい。文明も発展しており、うちとは比にならないくらい進んでいる。その者は、そこを目指しているようだったが、場所の検討はついていないらしい。

「とても曖昧で不確かだから、噂程度に聞き流してほしい」


 場所の検討がついていないとなると、2人には危険すぎる。しかし、悪魔を根絶する上では外せない地帯になる。


「どうにかして、その情報を集めてくれ」

 希望が出てくるかもしれない。


 しかしこのことは、2人には黙っておくことにする。まずは近くの村へ赴き、リリーを救う手がかりを探そう。その方が動きやすいだろう。

☆登場人物紹介☆


ヒオーギ☆悪魔の子

     ルピナスは双子の妹

     朱い眼から火花を散らつかせられる

     



ルピナス☆悪魔の子

     ヒオーギは双子の兄

     蒼い髪には時間を操れる効果がある





___________________________



グロリオーサ☆悪魔族の族長

       大噴火による天災で滅ぶ



___________________________


アネ☆悪魔の子

   モネは双子の妹

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   赤い掌→変色するとピンク色

   風を起こせる

   毒技:猛毒液玉(ポイズンボール)




モネ☆悪魔の子

   アネは双子の姉

   グロリオーサ復活隊を構成する一人

   紫の掌→変色すると青色

   風を起こせる

   毒技:毒薬銃(ポイズンピストル)



___________________________


リリー☆四ツ星村の住人

    ヒオーギとルピナスの母親

    魂を持っていかれ瀕死の状態



ホウセン☆四ツ星村の村長

     元々は護衛の職に就いていた


マリーゴ☆四ツ星村の住人

     元々は護衛の職に就いていた

     諜報役も務めている

     



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] rtタグより来ました(*´ω`*) プロローグにて世界観や人類と悪魔の関係性が書かれており、入り込みやすかったです。 絶望から希望へ向かう話だと思うのですが、双子の兄妹やお母さんに幸福…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ