10.ブルーとレンジャーのはじまり
『アニマルゴーレンジャー!
人々の平和を守る戦士たちの集い。
眷属のアニマル達と共に今日もレンジャー達は悪を裁く。』
ボクは子供の頃から心臓が悪く入院ばかりで外で遊ぶことができず、治って何年も経った今でもあまりクラスとなじめずにいた。
唯一飼い犬のライガだけが友達だった。
学校からの帰り道、ライガと早く遊びたくて、近道をすれば早く帰れると思って、入ってはいけないよと言われる道に入っていった。
道の奥にはボロボロの家があり、この庭を抜ければいつもより15分は早く家に帰れる。そっと庭に入り通り抜けようとしたが、そこで家の裏口が少しだけ開いていることに気が付いた。
入ってはいけないと言われると余計に行ってみたくなってしまうものである。
ほんの少しだけ、と家の中を探索した。
何もない空っぽの部屋ばかりだが、とある部屋だけわずかにドア下の隙間から光が漏れ出している事に気が付いた。
ドアノブをゆっくりと回し扉を開くと部屋の奥に水の入った大きな水槽のようなガラスがあった。
中に何か入っているがよくわからず、1歩また1歩と近づいてみる。
見上げると、とてつもなく大きな水槽に黒い何かがコポコポと音を立てて入っている。
黒い何かに突然赤いものがバッと開いた。ギロリと見つめる目だった。
怖くなった僕は慌てて部屋を出て家から逃げ出した。
家に帰るなりライガに抱き着いて一緒に布団の中でうずくまって隠れた。
あれはお化けだったのか?怪獣なのか?心臓がまだバクバクと暴走している。
ヒューンとか細く鳴きながらライガが頬をぺろぺろと舐めてくれたので、ぎゅっとライガに抱き着いた。きっと大丈夫、ライガがいるから。
ウーーーーーーーーッ‼ウーーーーーーーーッ‼
けたたましいサイレンが町中に鳴り響いた。
また心臓が暴れだす。
『緊急町内放送、魔獣出現。1丁目から5丁目の地区がレッドゾーン指定されました。繰り返します、魔獣出現。1丁目から5丁目の地区がレッドゾーン指定されました。町民はすみやかに、指定されているシェルターに避難を開始してください。』
急いで母親とライガと共にシェルターに向かったが、ライガだけシェルターに入れさせてもらえなかった。犬だからと。
泣いて叫んでも、大人たちは聞いてくれなかった。ライガがシェルターの外にいる、扉が閉まってしまう。
そんなの嫌だ!!!!!!!母の手を振りほどいて閉まる寸前に扉の外に出た。
ライガがしっぽを振って飛びついてきたので、ぎゅっと抱きしめた。
背中に悪寒が走った。
何かが後ろにいる。
ライガは後に向かって吠えている。
錆びついた機械の様に、ぎこちなくゆっくりと後ろを振り返ると、あの赤い目をした黒い魔獣が立っていた。
ゆっくりとソイツが近づいてくる。
逃げないと。
赤い目の下が裂けるように開く。
ライガと逃げないと。
裂けた空洞から鋭い牙が見えた
コワイ。
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ。
助ケテ……誰カ……!
ソイツの口が目の前にある。
ア……食ベラレル……
ふっと腕が軽くなって何かが飛び出した。
ライガだった。
ライガはソイツに嚙みついたが、振り払われてキャンと高い鳴き声をあげて遠くの地面に叩きつけられた。
今度はライガに向かってソイツが動き出した。
痛そうにヒューンヒューンと鳴いてライガは横たわっている。
ライガは僕を命がけで助けようとしたのに僕はただ怖くて動けなかった。
動け、動け、うごけうごけうごけうごけうごけえええええ!!!!
もうライガは傷つけさせない、立ち上がって両腕を広げた。
オレが!絶対傷つけさせない!!もう誰にも!!
ソイツが腕を振り上げて勢いよくおろした。
オレが守るんだ!
目の前にもう1つ影が現れた。
ガキィィィィン!!!
「ボウズ、よく頑張ったな、あとは俺にまかせな」
「アニマルレッド!参上!!シュン!風舞だ!」
レッドは眷属の隼といろんな技をつかいソイツを攻撃している。
もう大丈夫……と後ろを見ると息が絶え絶えになっているライガ居た。
ライガに触れた手から伝わるぬくもりがどんどん消えていくのがわかった。
え、ライガ……?
どうして……?だめだよ……
ライガお願いだよ……吠えてよ……!
泣きそうにしていたら、隣にピンクがきて「ちょっと見せてね」と、ライガに触れる。
「まだ、大丈夫。私達がこの子を助けるからね。」
「ヒカリ、命の灯をもう一度!錬丹光!」
そう、ピンクが言うのと同時に狐のしっぽがふわりとライガを包み込んで光りだす。
光が徐々に体に吸い込まれていくと同時に輝きが薄れていった。
「もう、大丈夫よ」ピンクはそういって優しく僕の肩に手をのせた。
ライガに触れたままの手にじんわりと温もりが戻ってきた。
去ろうとする彼らに気が付いて、腕を放してオレは大きな声で叫んだ。
「どうしたら!オレも!みんなのように強くなって戦えますか!!!」
「君は十分つよいよ、大切な友達を守ろうとした?でももっと強くなりたいなら体を鍛えるのもいいかもしれない。強くなったらまた会おう。」
その言葉を胸に強くなるためにオレは武道を学ぶ事にした。
「たのもー!!!!オレを強くしてください!!」
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