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くじらの唄  作者: 音夢
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9.かみもり ひびき(7さい)前半

 僕の将来の夢は戦隊ヒーローのブルーみたいなかっこいい大人になること。

 レッドではなくてブルーなのだ。

 頭がよくて、レッドがピンチなときにサッと現れて助ける。

 みんなが困っているときに話を聞くブルー。

 

 ブルーこそがレッドになるべきなのに!あれ、でもそうするとブルーじゃなくてレッド……?

 まぁ、いいか。

 とにかく、ブルーのようになりたい。なので、ランドセルもブルー!

 毎週土曜日朝8時のテレビにくぎ付けで、地震で揺れていても気が付かないほどに夢中になっていた。


 そんなブルーみたいになりたいのに、僕は弱虫だった。

 雷がこわい

 大きな音がこわい

 まっ暗なのがこわい

 おばけがこわい

 

 ブルーはきっと全部やっつけちゃうんだろうな。ぼくは弱虫だなと思うとむねが少しだけきゅっとした。

 詩音とはお隣なのもあってよく遊んだ。もっぱら家遊びでもくもくと二人の世界に入る。

 今日はお互いにレゴブ〇ックで遊んでいた。詩音はくじらを作っていて、僕はブルーの乗っている青いバイク。


 ごろごろごろ・・・ぴしゃーーーーーん!


 ひゃっとビックリして、バイクを思いっきり落としてしまった。

 詩音は不思議そうにこちらを見ている、窓と涙目の僕を交互に見ていたが急に立ち上がってどこかに走っていってしまった。


 うぇ……詩音おいていかないでぇ……


 ごろごろ、ぴしゃーーーーーーーーーん!!


 ひぇ……


 窓から一番遠い部屋のすみっこに何とか移動して、耳を手で隠し膝をかかえて目をぎゅっと閉じる。


 ピカピカとまぶたの裏が光るたびに、全身に音がビリビリと伝わる。

 ブルー、かーさん、とーさん、しおん、たすけて。と心の中で叫んでいても誰にも届かない。

 心がさらにぎゅっとしめつけられて、氷みたいに白くつめたくなっていく。

 誰か……


 ふわっと何かが頭からかかった。

 ふわふわのもこもこ?おそるおそる目をあけると、目の前に詩音がいた。タオルを二人でかぶっていた。


 ぴしゃーーーーーん!!!


 ビクッと体が跳ね上がる。詩音は僕が安心するように頭をぎゅっと抱きしめて頭をよしよししてくれた。

 あの時、詩音をいじめっこから守ろうとして負けた。

 悔しくて土管の中で泣いていた時もこうしてくれたな。


 ぎゅっとしていた心が、氷みたいに白く冷たかったのが、じんわりと温かいものであふれかえっていく。

 僕がもっと強かったらなぁ……

 気が付いたら二人してタオルに包まってすやすやと眠ってしまった。


 土曜日朝7時55分、大好きなブルーを見るためにテレビの前に待機する。

 いつもはワクワクしているのに、今日はどんよりとした気分だった。

 ブルーみたいになりたいのに、怖くて弱虫な自分が悲しかった。ブルーみたいになれないんじゃないかって思うと泣きそうになった。

 

 朝8時、いつものオープニング曲が流れて、レッドの次にブルー、そして次々と登場する。

 

『アニマルゴーレンジャー!

 人々の平和を守る戦士たちの集い。

 眷属のアニマル達と共に今日もレンジャー達は悪を裁く。』


 いつものナレーションの声。 

 少しだけ、心がふわっと軽くなった。

 今日はブルーレンジャー誕生のストーリーらしい。

読んでいただきありがとうございます!


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