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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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22 意外な事実と、納得の展開に途惑う噺

 目を閉じて頭を撫でられるのに癒しを覚え、黙って母性を受け入れていたウイックだったが、その異変に気付き、頭を上げようとすると、頭蓋を鷲掴みにされ、乱暴に髪をくしゃくしゃにされる。


「って、何すんだマーニー!」


「おお、これはスマン、スマン」


 軽く相手を突き出し、驚きの表情を浮かべるウイックは、よく知った胸の弾力の持ち主を前に言葉を失う。


「なんだ、もう撫でさせてくれんのか?」


「あ、あれは撫でるとは言わんわ。何しに来たんだよセレーヌ」


 この空間に飛ばされて、最初に係わった始祖の魔王は、不敵な笑みを浮かべる。


「なに、お前に一つ教えてやろうと思ってな」


「わざわざ出てきて? 頭に語りかければいいだろう」


 ここまで進行役(?)だった妖艶の魔女が現れ、メダリオンについての新しい情報を教えてくれた。


「ティーファ=ベルビアンカ=ラクシュバームを覚えているか?」


「メルティアンの女王だな。忘れるわけねぇだろ。まだ会ってそんなに経っちゃいない」


 お子様女王は、実は年上で、かなりの精霊力を一度に扱える精霊界の重鎮。


「ティーファ=ベルビアンカ=ラクシュバームはお主の、メダリオンの烙印が落ちた。それを報せようとな」


 一体どういう事か? 烙印落ち? それはつまり……。


「お主の想像通りよ。かの女王はお主への興味を示さなくなった。絆が途切れたという事だな」


 メルティアンの郷の危機を救った事で、外の世界の話を渇望する女王は、並々ならぬ秘術の使い手として、ウイックに強い関心を抱いていたが、それも時間と共に薄れていった。


 メダリオンが彼の国の宝として扱われていたから、“操体そうたいの秘術”をティーファに施し、烙印が刻めた事で安心していたが、心の繋がりが重要な術式は、その効力を持続するためにも、絆を繋ぎ留めておく必要があるようだ。


「かの秘宝が盗まれた事も、刻印を忘れる理由の一つとなったのであろうな」

「盗まれた?」


 在処が判明しているメダリオンの数は八つ、そう思っていた。


「勘がいいな。あの竜人の娘に使ったそれが、精霊界ラムーシュの女王が持っておった物よ。盗んだのがあの仮面の男かどうかは、妾にも分からんがな」


 本当にずっと見ていたんだな。情報をもらえるのは有り難い。


 お陰でこの空間でも、迷うことなく話を進める事ができている。


「なぁ、メダリオンは一体俺達の旅の、何に関わっているんだ?」


「そいつを答えてやる事はできん。妾が分かるのは、妾が関わりを持った物についてのみだ。確かに烙印の乙女として刻印は刻まれたが、それだけでは神話の秘宝の、全てを知る事には繋がらんのだ」


 だからあの鳥像が作り出したこの空間で、実はメダリオンがここを制していることも、魔女には分かっていない。


「そうか、ありがとうよ。何となくだが、ここでの行動に、間違いはなかったって事は分かったぜ」


 とにかく認識を改める必要はある。現所在が判明しているメダリオンは七つ、セイラの刻印の打たれたメダリオンを持つのはエルラム、それ以外は手元にある。


 これは出来過ぎと思えるほどの成果と言える。


「さて、こうしてまた、ここに来られたのだ。今度こそ妾の望みを!」


 勇み足で学校の制服に着替える魔女様は、「なぜだぁ!?」というセリフを最後に姿を消した。


 そして代わりに姿を見せたのはイシュリー、その二人がいるのは、王立図書館のように、いっぱいの本に囲まれた空間。


 建物の壁はこの空間で何度か見た、石造りの建物の外壁と同じ質感をしている。


 それに図書館にしては妙な事に、同じ本がいくつも並んでおり、平らな棚にも幾重に同じ物が積み上げられている。


「そうか、ここは本を売っている店なんだな」


 ウイックもイシュリーも冒険には向かない軽装で、恐らくは二人だってこの場所に本を買いに来たと言ったところか。


「ウイックさん、あそこですよ」


 イシュリーは自分の両腕をウイックの左腕に絡ませて、二人は寄り添い、一つの本棚に歩み寄る。


「これですよ。探し物は」


 そう言って渡してくれたのは結婚情報誌。


 どうやらここでのシナリオは、二人が結婚の準備を進めているカップルである設定のようだ。


 こうして結婚に関する情報を示した本を買いに来るという事は、恐らくはプロボーズをウイックがしたというのだろう。


「それがイシュリーの望みか……、そうだよな。イシュリーはずっと、そう言ってるもんな」


 しかしそうなると、この展開は既にイシュリーの望みは、叶ったことにはなっていないのか?


 場面は変わり、白の燕尾服に袖を通すウイック。

 場所は教会だ。


 壁の質感から、やはり大海洋界とは違うようだが、こういった場所は似たような作りとなるのだろう。


 ウイックの隣には純白のドレス姿、イシュリーはウエディングドレスを着ていた。


 戸惑いはウイックをその場から逃走させた。

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