表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
93/192

16 如何にも取って付けたような展開の噺

「セイラが戻ってきたって?」


 マニエルが真っ先に飛んでいき、勝利に貢献した立役者を出迎えた。


 後に続いたウイック達も無事を喜び合い、今後の方針を立てる会議にセイラも加わった。


「では魚人に協力を?」


「えぇ、我々は確かに相容れずに、小競り合いを繰り返してきましたが、同じ海の仲間なんです。無視できない問題が起きたのなら、やはり解決に協力しなくてはならないかと」


 カンパーニは原因究明の為に一部隊を、魚人のねぐらに派遣する事を決めた。


「そこで我らも協力を申し出た。お主らはどうする?」


 ここまで来て、ウイック達だけが知らぬ振りなぞ、出来るはずもない。


「そう言うことだカンパーニ殿」


 アーチカ姫は親衛隊の二人、ウイック達を指差し、亀甲船で魚人のねぐらへ向かう事を宣言した。


 もちろんそこにはセイラも加わる事となり、捉えた魚人三匹も自由を認めた上で乗船し、程なく出港した。


「それでその謎の男というのは、どんな感じだったのだ?」


「仮面を付けてはいたが、人種ひとしゅで間違いないと思う。ただ人でありながら、水の中でお前等のような道具を使わず、普通に我らの前に現れた」


 水の中で普通に会話もできたと言って、それが本当に人種ひとしゅだという自信は、彼らにも無いのだという。


「とにかく行ってみよう。その男が現れた場所を調べれば、何か解るやも知れぬ」


 程なくして訪れた魚人のねぐらには、敗残兵はまだ戻ってきてはおらず、そのほとんどが戦争に参加したというのは本当なようだ。


 ねぐらには数匹の魚人が残るのみ、罠はないのかと警戒をしてみたが、その心配はないようだ。


「ここだ」


 魚人が指差したのは大きな洞窟の入り口。だが亀甲船は入っていけない。


 潜水服に着替え、ウイック達は外へ。そこにいた黒い水着の少女と対峙する。


『またあんたが関わっていたの?』


 険しい顔のミルが前に出る。両手にはショートソードを携えて。


「あらあら、お待ちください。ワタクシは依頼を受けて、探し物に来ただけですよ」


 すくみず姿のエルラムは潜水帽すら着けていない。


 ウイックは興味を示したが、流石にその姿をさらす事はできそうにない。


 後からアンテには詳しく話を聞く必要はあるな。とは感じたそうだ。


「あら、そちらの人魚さんはあの時の。元気になったのですね」


 セイラに向かって挨拶をし、律儀にアイテム回収に協力してくれた事に感謝した。


「まったく、身に覚えないけど……」


『お前の言うアイテムってのは、あの青白く光っていた水晶か?』


「おや、ご存じですの? ええ、そうですよ。あれは霊冥界の秘宝“蘇生と回復の宝珠”ですの。読んで字のごとく、死んだ魂を蘇らせ、回復させる術式具ですの」


 ではあの渦から出てきていたのは、以前に死んだ魚人達、倒しても倒しても湧いて出たのは、多くの魂が呼び戻されたからだという事。


「ただ不自然なのは、蘇らせる魂が魚人に限定して設定されていた事」

『何がおかしい? ちゃんと機能は果たしていたようだったぜ』


 キリのない戦いを強いられた理由は分かったが、何か感化できない問題が発生しているようだ。


「設定を組む事はできます。ですがかなり高度な技術をもっていないと、それは適いません。貴方達の中でそれを可能とするのは、そちらの忌々しい錬金術師だけでしょうね」


 確かにアンテなら、秘宝の解析にも時間は掛からないだろうし、扱いにも慣れているが、それを人魚と比べても、かなり知能の劣る魚人が成したとは考えられない。


 法術士はそう言いたいようだ。


『つまりその仮面ヤローが仕組んだ事だと、言いてぇわけだ』

 なるほど理解はできた。


 だが問題はそこじゃあない。


「魚人のメスが発生しなくなった理由?」

『心当たりはねぇか?』


「それを知っていたとして、どうしてワタクシがお答えしなくては、なりませんの?」


『知らなきゃいいんだがよ』


 手っ取り早く聞けるものかと、直球で聞いてみたが、素直に答えてはくれないようだ。


 ウイックも無理矢理聞き出すつもりはない。しかしその反応がエルラムには面白くない。


「ワタクシの探し物に関係があるかもしれませんが、探し物と言っても、半年以上前の遺失物ですよ? 情報をもらったので、水晶回収のついでに、見に来ただけの物です」


 それがタダの出来過ぎた偶然で、この件には全く関係ない。


 なんてものなら、もう原因究明はできないかもしれない。


「探し物は宝珠同様に、霊冥界の秘宝ですの。“不老の聖樹”と言い、生命の成長を阻害しますの。実際不老の存在になる訳ではありませんが、老いるのを遅らせる効果を持っていますわ」


 正にビンゴ。


 生きとし生けるものの、生と死を見守り、魂が形作る世界。


 霊冥界では、魂に関わる多くのアイテムが開発された時代があった。


 神々が干渉を続けた時代から数百年、産み出された技術はしかし、霊冥界ではあまり意味を持たず、全ては秘宝として、厳重保管される事となった。


 他の世界からすると、どれも問題を垂れ流すだけの危険遺物でしかない。と判断されたからだ。


「なるほど確かにそれは、“不老の聖樹”が関係していると、判断するのが正しいようですね。ですが一つだけ問題がありますの」


 不老の秘宝が効力を発揮する範囲はさほど広くはない。


 この集落の全てを効果範囲にはできないアイテムでは、完全に説明はしきれないのだ。


『いや、間違いなくそれの所為だよ。僕の知る限りでもただ一つ、大海洋界の秘宝に、この件に関わっているかもしれないアイテムが存在するよ』


 他の術式の有効範囲を、その空間ではなく、対象の個体に効果をもたらすことができる。


 効果を魚人に限定する事で、術式を範囲に係わらず、不老の存在にできる秘宝。


『その“マーカー”ってアイテムなら、設定された全ての魚人がどこにいても、その“不老の聖樹”の効果を受けさせることができるんだ』


「この世界は何故、そんな危険なアイテムを管理しないのですの? 大切な秘宝を盗まれた世界の住人が言うのもなんですが、危機管理の意識が乏しすぎませんか?」


 耳の痛い話ではあるが、これで辻褄はあった。


『なるほどな。ではその秘宝さえ排除すれば、魚人の生活は元に戻るというのだな?』


 姫様が話を纏め、魚人に心当たりはと問うと、すぐさま怪しい物の在処を思い出し、皆をその場所に案内した。


 そこに意外な物が残されているとは、露程も知らずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ