表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
91/192

14 謎の水晶を無力化する為、決死の特攻を仕掛ける噺

 アンテがド派手に一発を噛ましてくれたから、ウイック達は魚人達の目から逃れて、一気に渦の裏側が見て取れる位置にたどり着いた。


『なんだ、あれ?』

 青白く光る玉。


 その物はあまり大きくないので、“遠見とおみの秘術”を使っても、あまり詳しくは分からないが、水晶のようにも思える。


『ここからじゃあ、あいつが何らかの障壁に護られているのかも、そもそもの強度を想像する事もできねぇな』


 ここで“秘弾”を撃てれば、渦ごと消滅させる自信はあるが、流石にもうそれだけのマナを集束させる気力は、振り絞れそうにない。


 となると現状で最大の破壊力を持つ、“光束こうそくの秘術”でやるしかないが、深海の暗闇で威力を発揮させるには、可能な限り近付く必要がある。


『あいつらの注意はみんなの方に集中しているな。セイラ、もうここまででいいぜ。後は沈んでいくだけだ。俺だけでもここからなら近付けるから……』


「バカ言ってんじゃあないわよ。ホントに後先考えないお人好しね。みんなが言ってた通りだわ。すっごく男前だけど、女を嘗めないでよね。いいわよ。あそこに突っ込めばいいんでしょ」


 顔を見る事はできないが、セイラの手に必要以上の力が入っているのが伝わってくる。


 緊張の度合いは半端ではないが、覚悟だけは本物だ。


『それじゃあ頼む』

「行くわよ!!」


 勢いをつけて急降下をする二人に、気付いた魚人達が襲ってくる。


 しかし“防雷ぼうらいの秘術”が威力を発揮し、近寄ってくる者は痺れて動けなくなるか、黒焦げになる。


 青白い玉を目視で確認できる位置まで来た。


 間違いなく水晶の類だ。障壁の存在も感じ取る事ができる。


 だがこの程度の障壁なら、問題にもならない。


 ウイックは雷の防御を解き、光の束を撃ち放った。


『くそ、壊せなかったか!?』


 海溝が口を開く真上、沈むことなく制止しいる水晶は、しかし光を失い、謎の渦も消えてしまった。


『よし、これで雑魚が増える事は……』


 油断などなかった。


 光束を放った後、すぐに防雷を張るのだが、ホンの僅かな隙間から飛び込んできた魚人が、結界の中にまで入り込んでくる。


 ホンの一瞬の差で押し込んでくる魚人は、結界に体を切断されながらも、勢いは殺されることなく、ウイックは潜水帽を叩き割られてしまう。


 セイラも組み付かれ、牙や爪で傷つけられる。


「この、こいつら……、ちょっとウイック!?」


 潜水帽を失ったウイックは、水中で呼吸をする事はできない。


 苦しさにもがくと、直ぐに静かになる。


 死んでしまったのかと慌てるセイラは、再びもがき出すウイックを見て、さらに狼狽え、急いで口吻をする。


 口移しに、人魚が体内に取り込んだ酸素を送り込んだ。


 呼吸は肺で行う人魚は、エラから水中の薄い酸素を取り込むと、肺にため込む。


 人種ひとしゅとは違い、かき集めるように酸素を溜め込む事ができる人魚。


 セイラはその濃縮された酸素を、ウイックの肺胞にまとわりつける事で、僅かな時間ではあるが、無呼吸でも平気でいられるようにした。


 落ち着きを取り戻すウイックにホッとした瞬間、手は彼から離れ、セイラは絶命する寸前の魚人に引き摺られて、海溝深く沈んでいく。


「ダメ、もう力が……」


 体を噛みちぎられ、爪で切り裂かれて、大量に出血した為か、意識が遠のき、落ちる力に逆らう事ができなくなる。


「はやく、……みんな。でないと彼、が……」


 降下する途中で例の水晶にしがみ付こうとしたが、石は浮力を失い、セイラに抱えられて、一緒にその場から消えた。


『ウイック、大丈夫なの?』


 ほんの少しの間を置いて、辺りの魚人達を一掃したミル達が、潜水服の性能で沈むことなく漂うウイックを見つけて寄ってくる。


 最後に合流したアンテが、マニエル用のを予備として持っていた潜水帽を被せ、回復を待つ。


『ところでセイラは?』


 彼女がどこにもいない事に気付いたマニエルに言われて、辺りを探すが、どこにも見当たらない。


 セイラの探索も急がれるが、ウイックを落ち着ける場所に移すのも急務だ。


『ウイックが息を吹き返したよ』


 潜水帽を失った時間がどのくらいかは分からないが、どうにか吐息は安定を取り戻した。


 それでも心配な事に代わりはないので、急いで亀甲船か都市に戻らなければならない。


「私、もう少しだけあの子のこと探してみる。ウイックのことはお願い」


 自分もみんなと同じように、彼の事が心配であるだろうに、マニエルはなにより、自分が一番水中での行動を楽にできると判断して、探索を買って出てくれた。


 戦場の騒動は、収束の兆しを見せている。


 逃走を始める魚人達の中から、数匹を捕まえることもでき、迎えの亀甲船に乗り込んだ一同は、潜水服を脱いで、この時には意識を回復しているウイックも一息つく。


「それじゃあ、セイラはまだ見つかってねぇんだな」


『うん、念話にも反応しないし、これだけ広いと探しようもないよ』


 疎通の護符はセイラにも渡してある。


 それに答えないとなると、マニエルだけでは探しようもない。


 後は人魚の部隊に任せて、マニエルを亀甲船に戻らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ