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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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13 キリのない戦いに、終止符を打つ策を練る噺

 海底での戦闘は、激化の一途だった。


 当初、人魚側が掴んでいた魚人の数とは違い、ウイックの“索敵さくてきの秘術”で確認したところ、現時点で1万6000匹。


 恐らくは小康状態の間に、援軍が加わったものと思われるが、まさかの敵の数に、人魚軍兵の疲弊の色は隠せなくなってきた。


 総司令官のアーチカ姫は、大胆に大群を使って、敵兵を一カ所に誘き出し、そこへ今一度ウイックの“秘弾ひだんの秘術”を放ち、一度に4000匹を消し去った。


 先の二回と今の一撃、異常な破壊力を持った衝撃に、まだまだ攻勢に立つ魚人に動きの乱れが生まれた。


「行くわ」


 ミルはバスタードソードを双剣に持ち、まるで空中遊泳をするように、自在に深海を泳ぎ回り、陣形の崩れた魚人達を次々に切り捨てていった。


 同じように、潜水服に術式付与を施され、両手両足から激流を生み、思考のままに方向転換を可能にしたイシュリーも、眼前に現れる魚人達の全てを殴り倒していく。


 マニエルは人魚でもないのに、見た目は生身の人種ひとしゅのまま、尻尾を尾ひれのように振るい、小さく出した翼で体の向きを操り、アイアンネイルで敵を切り裂いて回った。


 アンテは大技を放った後の、無防備なウイックの護衛に付いた。


『にしても本当に減らねぇな。一体どこからこんな湧いてくるってんだ?』


『まさかだけど、また増えてない? 崩れた陣形も戻りつつあるよ』


 ウイックは再度索敵を更に広範囲に発動させ、一カ所、妙な動きのあるポイントを見つける。


『ウイック、僕も前に出るよ。セイラ! 彼の事をお願い』


 アンテは誰よりも早い推力で、一気に前戦へ。


 理力銃も理力剣も、水中では機能を十分には発揮できない。


 サイドアームに取り付けたのは水中銃。撃ち出す槍には、理力で固めた氷の刃。


 連射もでき、その飛距離も理力銃に匹敵する。


 四人の少女達は、一騎当千の働きを続ける。


『セイラ、俺達も動くぞ』

「どこに行く気よ。ろくに泳げもしないのに」


 確かにまだミルやイシュリーのようには、潜水具を上手く使えないが、もうここにいても、流石に“秘弾ひだんの秘術”を撃つ事はできない。一日に三発も撃てたのも、奇跡に等しいのだ。


 それにこのままではジリ貧。


 索敵で見つけたポイントに向かってみるのも手だと、こんな自分を任せられるのが、セイラだけなのでお願いする。


「しょうがないな。けどそこって敵の本陣じゃないの? 一番魚人が集まっている場所でしょ?」


 確かに二人だけで向かうのは危険極まりないが、前戦を維持する為には、四人を引かせるわけにもいかない。


『俺は電撃を操る術も使える。セイラにはできるだけ密着してもらい、結界で身を守り周囲の敵を焼き尽くす。防御は俺に任せてくれ! だからセイラには俺を速やかに運んで欲しいんだ』


 なんの攻略法もなく、玉砕覚悟で突っ込んだりはしない。


 疎通の護符で仲間達にも、作戦の皆を伝える。


 アーチカ姫からも人魚達に指令を出してもらい、花道を作ってもらった。

 ミル達や人魚達が魚人共を引きつけてくれる。


『行くぞ! “防雷ぼうらいの秘術”を発動する』


 背中にしがみつくセイラ、オッパイの感触が心地いい。


 そのままの姿勢でウイックを抱えたまま泳ぎ始めると、人魚のスピードについて来られない魚人共を振り切って、驚く事に目的のポイントまで、危険な場面は全くなく、あっと言う間に到着した。


 ウイックの読み通り、水の中で雷の術は効果覿面。


 不用意に近付いてきた敵は痺れて、もれなく失神をしてしまう。


 その様子を見たマニエルも、竜人が使える雷の力で、多くの魚人達を戦闘不能にしていく事に成功する。


 果たして索敵で見つけた異常箇所には、奇妙な渦と、その中心の暗闇から湧いて出てくる魚人の姿があった。


『もっと近付けるか? ここからじゃあ、まだよく分からねぇよ』


 ウイックは“遠見とおみの秘術”、遠くの物を近くで見えるように感じさせる補助秘術を使うが角度が悪く、その根本を確認する事ができない。


 流石に敵の本陣ともなる、中心地に近付いただけあって、周りは無数の魚人だらけ、このままでは完全に囲まれてしまう。


『ウイック!』


 完全包囲を受ける直前、ミルを始め、ここまでの道を切り拓いてくれたみんなが合流する。


『あそこだ。あの渦の向こうに何があるのか見たいんだけど、流石にこれ以上は近付けそうにねぇんだ』


 今は数を減らせてはいるが、あの渦をなんとかしないと、これ以上の消耗戦は、こちらの全滅に繋がる。


 今ならまだ、後方を人魚と亀甲船に任せておける。


 魚人が主力を亀甲船に向かわせている。こちらに迫る敵の数なら!


『ここで大暴れしてくれ、その間に俺はセイラに、あの渦の向こうへ連れて行ってもらうからよ』


『待って、ウイック。それは危険すぎるよ。なんなら僕が護衛に……』


『いや待てアンテ。敵陣中央に向かうんだ。相手の目を抜くのなら最少人数でないとな。それに囮役が派手に暴れてくれねぇと、かえってこっちが目を付けられる』


 隠密行動をするよりも、むしろ危険なのは囮役の方、人数を減らすのは良策ではない。


 ウイックの意見に異論はない。


 腰に手を回し、胸を背中に押し当てているセイラの体勢が気になるが、少女達は秘術士に全てを任せ、個々に散って、魚人達との大乱闘を再開する。


『それじゃあセイラ、いっちょ頼むわ。わりぃな、損な役回りで』


「別にいいわよ。この戦争は私達の問題、むしろあんた達は巻き込まれただけでしょ。本当にごめんなさい。まさかこんな事になるなんて」


『なぁに、もうすぐ決着だ。俺達の完全勝利でな』


 渦の中心からまた魚人が顔を出そうとしている。


 アンテの打ち出した“魚雷”とか言う、大きな筒が渦にぶつかり大爆発。


 渦が消滅する事はなかったが、援軍を全滅にし、大きな潮の濁流を生み、相手が混乱するタイミングを逃さず、ウイック達は突っ込んだ。

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