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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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11 圧倒的戦力差に怯える余裕もない噺

 海底都市までは四半日を要する。


 それは水圧に気を配り、乗員乗客の安全を第一にしての用心からだが、今回は緊急を要する。


 それでもどれだけ急がせても、やはりそれなりの時間が掛かる。


 セイラの話によれば、ソフィーリアに援軍を出せる距離にある都市は二つ、キラーヴィとセファーランス。


 それぞれが軍を動かしてくれたなら、ともすれば既に沈静化しているかもしれない。


 だがその願いは、楽観が過ぎたようで、激戦は継続中だった。


 地上は既に日が落ち、瞬く星のみが煌めく暗闇の世界。


 その瞬く物もない深海は、感覚器官の発達していない人種ひとしゅでは、何が起こっているかも感じる事のできない世界。


 のはずが、海底都市ソフィーリアのある海底には、光を放つプランクトンが広く滞留しており、屋内でロウソクを灯す程度の明るさが、そこにはあった。


『ウイック、準備はいい?』


 潜水服に着替えたアンテとウイック、交戦地帯から少し距離を取り、ハッチを開いて外に出る。

 魚人軍後方部隊の位置を確認し、アンテが合図をする。


 ウイックの最大攻撃術式、“秘弾ひだんの秘術”が深海に一条の光を放ち、多くの魚人を葬った。


 クレバーネの花の成分で安定した魔晶石。


 花の成分を分析して、アンテと悦楽のビシャナが作ってくれた制御装置のお陰で、理力の充填、圧縮、制御を気易くこなす事ができ、間を置かずもう一発を放ったところで、魚人軍は一時後退した。


 その機に乗じて、亀甲船は海底都市に着岸、アーチカ姫を先頭に、人魚の首相と面談する事となった。


「大分慣れてきたみたいだね。ウイック」

「ああ、溺れる心配がないってのがいいな。安心してジタバタできる」


 水に慣れるのと、泳げるようになるのとはイコールにならないが、怖がらなく居られたなら、秘術士のウイックは十分戦える。


 浅い海では自由に泳ぎ回って見せたマニエル。


 さっきウイックが魚人を退けさせた後に外に出てみたが、この深海でも人魚と同等の泳ぎができた。


問題は近接戦闘を主体にする二人と、飛び道具が使えないアンテの機動力の確保。


「よく来てくれました、伯爵。それと姫殿下」


 ソフィーリア代表のカンパーニ=フェニーナ。


 ブルーの鱗と長い直毛の金髪、なによりデカイ胸に目がいく。真っ赤なビキニが、振り子のような動きにあわせて、大きく揺れ動く。


「状況は?」


 姫様に戦況報告をすると、皇女殿下は、海底都市首相と同じ様に眉を顰める。


「我々の戦力は八百余りありました。これまでの被害は百を超えています。負傷者も三百に及び、半数がやられた事になります」


 まさかの大苦戦を強いられているのは、予想外の敵との物量差による。


「一万三千!?」


 魚人の大群が攻めてきたとは聞いていた。

 しかしその圧倒的戦力差で、よく持ち堪えたものだ。


「先ほどの秘術攻撃のお陰で、恐らく3~400匹は葬られたと思われますが、差はまだまだあります」


 それだけの差があると、亀甲船の存在だけで云々は通用しない。


「その点は大丈夫。あの船は元々潜水艦だからね。攻撃力も持っている。十分戦力になるよ」


 ずっと潜行艇として定期便に利用してきたが、アンテの見立でそれは嘗て、戦闘兵器として作られた物だと判明。


 この会見の場にいないアンテは今、船員に艤装の説明と、操作のレクチャーを行っている。


「それでも状況は厳しいな。これではこちらから行動を起こす事はできないぞ。敵がどのタイミングで、どう仕掛けてくるかは分からんが、こちらは戦闘態勢を崩さずに、様子見だな」


 アーチカ姫殿下が陣頭指揮を執る事となり、残った人魚と、治療を終えた人魚の配置を確認する。


 ウイック達はアンテのいる港へ向かった。


 こちらの五人とカザリーナは、単独行動が許されている。


「それじゃあイシュリーとミルの潜水服にも追加補助が?」


「うん、間に合わせだから、ウイックのプロテクターの部品を使ってね。二人分がやっとだけどね」


 アンテはバックパックの機能を使えば、水中でも不自由がない。


 ミルとイシュリー、接近戦が求められる二人の為の機能を追加、これが今できる全てだ。


「カザリーナさんは亀甲船で戦闘指揮をお願い、海賊流の海戦術を期待するよ」


 アンテは地上のベンレッタ出航後、使用を可能とした艤装の全ての指揮機能を、艦橋で制御できるようにした。


 これで本来、その砲門の一つ一つに船員が付く必要があったのを、カザリーナが一人で、艦橋から操作する事ができる。


 海賊としてはおとなしめの彼女は、意外な事に海賊船では、砲手を任されていると聞き、お願いする事にした。


 それぞれがそれぞれにできる事を調えたが、はやりこの乱戦、戦いの要は秘術士という事になるだろう。


 人魚の中にも30名ほどの術士はいるが、中でも牽制役のウイックの働きが要となると予想される。


 どうにか船外活動もできるようになったものの、不安要素があまりに大きい。


『亀甲船に肉薄する敵はミルとイシュリー、それと僕で対処するとして……』


「ウイックの事は任せといて」


 亀甲船の大きさから言って、三人は周囲に散って護衛に付く必要がある。


 それでも足りないほどなのに、ウイックの面倒までは手が回らない。


『よろしくお願いするよ』


 海底都市ソフィーリア防衛軍、第2後衛部隊副隊長のセイラ。


 首相命令でこちらの補佐に回されたらしいのだけど、援護を専門とする彼女は、ウイックのお守りとしては正に適任と言える。


 これで魚人の大群相手に、どこまで太刀打ち出来るかは分からないが、やれる事はやった。


 鍛冶師に会いに行っていたミルが戻ってきて、亀甲船は出港した。

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