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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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7 特殊な構造の港町を紹介する噺

「こいつに乗るのか? なんか直ぐにも沈みそうだけど、大丈夫なのか?」


 キャプテン・ヴァンナに代わって随伴する少女、海賊見習いのカザリーナ=ヴァンナの案内で、ゲッヘル侯爵領の西側、国の境界にある街、ベンレッタにあると言う海底都市行きの定期船の波止場へやってきた。


 波止場と言ってもここは建物の中。大きな屋敷の中がまさかの港になっているのだ。


「なるほどね。これは潜行艇せんこうていってやつだね。水圧から船を護る為に大掛かりな術式で強度を上げてあるんだ。しかし大きいな。渡航船だもんね。動力は何を使ってるんだろう?」


 嬉しそうに亀甲船を眺めるアンテは、奇妙な形の船体を桟橋を走り回って観察する。


「あのぉ……」


 一人の老人が現れ、ウイックに声を掛けてきた。


「もしかしてあの方?」


「うん? アンテの事か?」


「ほう、アンテさんと仰る? あの方は帝都の技術者様ではありませんか?」


 かしこまっているが、スーツ姿に蓄える髭も手入れが行き届いており、オールバックの髪が清潔感をにじみ出している。


「おお、クラウス=フォン=オーベルクシュト伯爵ではないか」


「これはこれはアーチカ殿下、そうですか、殿下が技術者様をお連れ頂いたのですか」


 親衛隊のお供二人を引き連れて、何故かここにいるアーチカ姫。ウイックは首を傾げ、改めて老紳士の顔を眺めた。


「すまんなオーベルクシュト、彼らは私の連れだ。再三問い合わせを受けている技術者の手配は、まだできておらんのだ」


 話は少し逸れるがアーチカ皇女、海賊のアジトでのキャプテン・ヴァンナに犯した不純行為に興味を抱き、あろう事か一皇女姫様の身でありながら、同様の行為を所望した。


 流石にこれには、ウイック以外の全員、特に親衛隊の二人は猛反対。


 秘宝研究の第一人者でもあるアーチカ姫は、メダリオンの効力をどう発動するのかを知りたいだけなのだが、その思いは誰にも伝わらず、押し問答が長い時間続けられた。


 あまりの熱意に押された二人は、では先ず自分達が無害であるかを検証すると言いだし、結果としてはウイックが一人、三人の美女から美味しい想いをさせてもらったと言う話なのだが……。


 それとこれとを結びつけていい物かはさておき、こうして旅の同行を求めるという、またしても蛮行を断る事ができず、親衛隊を引き連れて、ここまで付いてきてしまったのだ。


「いや、待てよ」


 暫く伯爵と話をしていた姫様は、アンテであれば問題を解決できるのではないかと思い至った。


「ウイック殿、アンテ殿はカガクと言う技術を習得されていたのであったな」


「ああ、俺も何度か設計書の類を見た事があるが、全く理解できなかった物を、あいつは独自の発想で、更に発展させているらしい」


「彼女にちょっとお願いはできないだろうか?」


 掻い摘んで説明すると、目の前にある亀甲船。今はまだ問題なく動かせている。


 船としてのメンテナンスは、普通に船大工が行っているので問題ないが、海底に向かう為の潜行機

能と水圧対策の機能のメンテナンスをできる技術者を、帝都に依頼しているのだが、何度か来た技術者は誰も扱える機構ではなかった。


 その技術者の一人が言った、「これは確かカガクと言う技術で作られた物だ」と。


「見てもらうくらいはいいんじゃあないか?」


 こうして話をしている間にアンテが戻ってきた。


「本当に? 僕が見てもいいの?」


 目を輝かせ、アンテは伯爵に付いて、亀甲船の中に入っていった。


「さて、我々もどうだ、街の中を見て回らんか? 定期船が出るのは明朝という話だしな」


「すまんが俺はちょっとどこかのカフェで、お茶でもさせてもらう。どうにもこの磯の香りにまだ馴染めなくてな」


 ウイックが爺むさい事を言って嫌がる。


「ウイックは私が診てるから、ミルさんは殿下と回ってきたら」


 アンテに付いていったイシュリーとカザリーナもいない。


 街中を見て回りたいと思っていたミルは、少しだけウイックの事を気に掛けたが、マニエルが診ていてくれるのならと、姫様にに付いて、親衛隊と併せて四人、並んで建物を出て行った。


「確かこの上の階に喫茶室があるって言ってたわよ」


 同じ建物内だけど、桟橋のある港の潮の香りから逃れるように、二人はやたらと天井の高い一階から、二階の飲食店フロアへ。


「立派な飲食街なのに、あんまり人がいないな」


「下の階は会員限定だけど、ここは一般のお客さんも使えるのにね。時間帯のせいじゃない?」


 桟橋は一階にあるが、地上の入り口はこの階にある。


 断崖絶壁の街、ベンレッタには浜辺はなく、崖を削り掘って港が作られている。


 そうまでして、なぜ船着き場を苦労して作ったかというと……。


 ここは帝国最西の国境の街。


 国を分ける、中央大陸でも有数の大河があり、何故この様に大きな河が、こんな場所で滝になって、海に水が落ちる地形が生まれたのか、地学者にも解析はできていない。


 この大瀑布が生み出す渦の流れを利用して、この街は海底都市と繋がっている。


 その特殊な渦が波打つ中、少し遮蔽物があるだけで、意外にも穏やかな海が生まれ、海底に続く渦と、穏やかな内海を持つ、特殊な街だから断崖を削ってでも、港が必要となったのだ。


「一般の人は海に続く桟橋を使って、海底に向かう者は、秘密の通路を使って亀甲船の元へか。よくできてるな」


「この飲食街を利用するお客さんは、朝の捕れたての魚を求める人がほとんどだから、こんなお昼前の半端な時間は、あまり利用しないんだって。ディナータイムにはかなり混み合うみたいだよ」


「どっからそんな情報集めてきたんだよ」


「へへっ、親衛隊の子からの情報」


 ウイック達のパーティーで最もコミュニケーション能力が高いのはマニエルだと言えよう。


 ミルも冒険者として、情報収集能力は高い方だが、こういった一般的な情報を交換する能力は、また別と言えた。


「あそこ、あのお店がお勧めらしいよ」


 兄妹は一件の喫茶店に入る事にした。

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