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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第三幕   大海原にて天と地を臨む男の探遊記
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6 隠された真実、事は更に大変な話だった噺

 キャプテン・ヴァンナの条件を果たし、“惨禍さんかしらせ”の拠点に戻ってきたウイック達。


「そっちも上手くいったんだな」


 海賊に捕まったアーチカ第三皇女を、救い出す為に出兵された海軍に事情を説明し、内偵中だった侯爵の罪状を仕上げさせ、姫様は海軍に海賊団に協力を命じた。


「最初から姫様の手の平の上で踊らされていたって事か」


「侯爵が海賊退治を依頼してきた時からな。黒い噂はずっとあったから、証拠集めはそんなに手間ではなかったそうだ」


 軍の船を五隻も犠牲にしたが、空の鎧も一緒に沈めることで、侯爵の目を眩ます事もできた。


「なにせ、先日の作戦には、侯爵の息の掛かった船員も乗っていたからな。大きな作戦だったから慎重に慎重を重ねた。キャプテンが報復を目論んでくれたお陰で、交渉の手間も省けて、見事に大成功に治める事ができた」


 ゲッヘル侯爵は既に帝都へ護送中。


 もうここには姫様と、数名の姫様親衛隊以外の帝国海兵は誰も残っていない。


「私の為に結成された女騎士団だ。よろしく頼む」


 ここには二人だけだが、団員は七名。日頃の鍛錬でスタイリッシュな美女ばかり。


「ウイック、今はややこしくなるから、悪い癖は出さないでよ」


 ミルの忠告は手遅れで、いや、キャプテンが自ら望んで、ウイックの好きを許しており、アーチカ姫がその様子をつぶさに観察していた。


「お前は何をやってるのだ?」


 姫様だって、男女の営みを知らないわけではない。


 この様な状況で、何をしているのかを聞いているのだ。


「すみません姫様。こう見えて必要な作業なんです」


 代わって謝るミルは、いつまでも揉み続けるウイックの喉笛を握り潰した。


「それでどうだった?」


「悪いなキャプテン。好きにさせてもらったのに、どうもあんたとは通じ合えないみたいだ。あんた懐が深すぎるよ」


「そうか、う~ん、面白そうだったのにな」


 海賊の頭目に立つと言う事は、簡単に心を開く事のできない立場。


 会ったばかりのウイックに全てをさらけ出す事はできなかった。


「一体どういう事だ?」


 まだよく分かっていない姫様に、ここでウイックは秘宝ハンターをしている自分の紹介をする。


「メダリオン?」


「ああ、今回の目的はミルのグレートソードの修理だが、俺達の目標はこいつなんだよ」


 異空間から取り出して、アーチカ姫に渡す。


「と言う事は、魔晶石に関わりがあるのだな」


 ミルの大剣が直るまでは情報収集もできないものと思っていたが、まさかの展開。


「何か知ってるのか姫様?」


「ああ、帝都の宝物殿にある書庫で読んだ事がある。魔晶石に纏わる伝承」


 古の神話大戦の後、混沌とする世界の歪みを正す為に、最後に神々が残した負の遺産。


「歪んだ理を喰らう怪物。嘗ては大魔王と恐れられ、この大海洋界は混沌の世から幕を開けたとされている」


「ちょっと待ってくれ、大海洋界が生まれ、世界は安定したんじゃないのか?」


 世界はそんな単純にはできていなかった。


「器は確かに全てを受け入れるに十分だったが、そこに注がれた各世界のマナを、混ぜ合わせるにはまだ、この世界は何の土壌も育ってはいなかった」


 調和することなく混ざり合った理は、神々も想像していなかった、混沌たる存在を生み出した。


「大魔王の名は“ヴァファムーア”、北の大陸極地に降臨し、生まれたばかりの世界を消滅しかねない力を秘めていた」


 魔王を名告ってはいたが、もちろんの事、魔門界の魔王達とは異なる存在。


「全ての世界のマナを集め、魔力に似た力に置き換えていたから、魔王に分類はされたけど、天使も精霊も、魔人も冥府の人外も、対抗しうる術を見出す事はできなかった」


 世界の歪みを安定させるに至ったのは、他ならぬ新世界、大海洋界で生まれた新たな命、人種ひとしゅが編み出した錬金術と秘術。


 全ての世界の力を暴走させることなく一つに集め、理の力として大魔王に対抗し、これを封印した。


「その聖戦で生み出された封印具が魔晶石。大魔王から依代を奪い、魂を封じ込めた」


 だがそれはあくまで封印しただけ、魔晶石が闇の暴走を受けきれなくなれば、いずれ最大の災厄が復活する。


「そこで、魔晶石を常に浄化する役目を与えられたのが、このメダリオンと言うわけだ」


 13枚のメダリオンは、世界各地に散り散りに保管され、マナをコントロールする効果を持続させている。


「お前の体にある魔晶石が本物なら、やはりお前は通り名のままの破壊神として、扱わなくてはならなくなる」


 破壊神だの、大魔王だの、そんな想像もできない存在に祀り上げられても困るが……。


「ランドヴェルノの、お前の母君がメダリオンを集め、メダリオンをコントロールする為の姫巫女を見つけ出すよう仰ったのは、正しい事なのだろうな」  


 まさかこんな所で重要機密を聞く事になるとは思っても見なかった。


「事が事だけに、一般に公表するわけにはいかんからな。この事は帝国と、幾つかの国の盟主しか知らん事だ」


 これでマーリアの研究は立証され、これまでの行動も間違ってはいない事が分かった。


 メダリオンを全て集め、そのマナをコントロールする力で魔晶石から解放され、体を取り戻す。


 そして改めて魔晶石を厳重に封印する。


 その為にも、仲間の為にも、大剣を直してくれる鍛冶師にあって、目的を果たす。


 この日はゆっくり休むとして、いよいよ明日は海底都市へ。

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