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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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32 黒衣の法術士の事と、転移の碑石についての噺

 五人の少女、それぞれに複雑な感情が入り交じる中、苦情は出ないので、自己紹介を続ける。


「先ずはこいつ、マニエル=ランドヴェルノな」


「ランドヴェルノ!?」


「おう、俺の妹なんだが……、どうしたエルラム?」


 マニエルの名前を聞いただけで、妙な反応をするエルラムは、ウイックが間柄を告げると動きを止める。


「それでこっちがアンテロッサ=フローランだ」


「はっ! そちらもランドヴェルノの関係者の方ですか……」


 我に返ったゴスロリ少女は、眉間の皺を更に深くする。


「なんかずっとおかしいぞ。エルラム?」


 肩を戦慄わななくのを見て、流石のウイックも気にせざるを得ない。


「ウイックさん、申し訳ありませんがワタクシはこれで帰らせて頂きます。邪魔をしないというのも立派なお手伝いですもんね」


 勝手な理論を展開すると、エルラムは転移門を発生させて、姿を消した。


「セレーヌ? あれで帰っちまったが、別にいいよな」


「お主がいいならいいぞ。妾はあやつの理論が気に入った。確かに敵対する者が邪魔をしないというのは、大きな助けになるだろう」


 面倒事が減ったとして納得するしかないか、いや仲間の様子からしてベストの結果と言えるのか。


「ねぇ、ウイック」


「なんだよアンテ」


「彼女確か、イングラムって言ったよね」


 少し悩む素振りで、記憶の糸を紐解くと、納得の表情に変わるアンテ。


「彼女はデヘン=イングラムの関係者かな?」


「デヘン?」


「その昔、ランドヴェルノに、そんな名前の錬金術師がいたんだけど」


 ランドヴェルノにはアンテのみならず、カガクに興味を示す者は幾人もいた。


 デヘン=イングラムもそんなカガクに魅入られた一人だったのだが、そんな見た事もない一職人の名前をアンテが覚えていたのは……。


「窃盗?」


「うん、資料の一部を盗んで逃げ出したんだよ」


 ランドヴェルノでは、貴重な資料を分類分けし、書き写した物を工房横の資料室に、原書を物置で厳重保管している。


 デヘンが持ち去ったのはもちろん書き写しの方だが、少し特殊な物を持ち出したので、工房内で今も語り続けられているのだ。


「ああ、あの話か。しかしそんな名前までよく覚えていたな」


「ちょっと変わった名前だからね。それに彼女の恰好を見て思い出したんだ」


 デヘンが持ち出した資料は、着衣に様々な効果を与え、アイテムを手に持つ必要なく補助が受けられる便利グッズの製法書。


 しかしそのデザインが……。


「すごく奇抜な物ばかりでね。多分さっきの“なぁす服”も? きっと術式道具だよ」


 精霊界で着ていた“ぶるまぁ”もその類だろう。


「衣類だから基本は術式道具なんだけど、機械サポートも織り交ぜたカガク技術も使われてるんだ」


 エルラムのゴスロリにしたって、どんな世界から伝わった物かは知らないが、この五世界では誰も見た事のない着衣だから、きっと工房の資料から作った物に間違いないだろう。


 工房でそんな盗難にあったのは、後にも先にもその一回限り。


 世界でただ一つの金庫という物が生み出されて、今は資料の全てがそこに収めてある。


 ウイックに取り付ける前に、魔晶石を収めていた箱も、そういった類の物だった。


「これからもあいつの衣装は、色々と楽しませてくれそうだな」


 改めて思い返すとエルラムの衣装は悪くない、満更ではない様子のウイックを見て、イシュリーとマニエルは頬を膨らませ、何故かミルとアンテも不機嫌な表情になっている。


「それでセリーヌ、そのガイザって魔王の所には、どうやって行けばいいんだ?」


「安心せい、我らが魔王領は必要に応じて、互いに行き来できるようになっておる」


 大海王界でも多くの碑石が確認されている転移門だが、それを設置したのは神話の神とされている、魔界でも使われているし、エルラムなどは個人的に自在に操っている。


「彼女のはきっとあの黒いドレスをマーカーにして、設定されたゲートとを繋いでいるんだと思う。そう言った技術は実は工房にもあるんだけど、石碑の設定を弄るのは御法度とされてるんだ」


 工房のあるバンセイアと、獣王の神殿を繋いだのは先先々代の工房主。


 実験は成功したのだが、それが原因で魔物門が発生しやすくなった。なんて報告書が見つかっていて、ゲートは日常的に使う事はできているが、魔力の強い者が近付くと活性化してしまう事が判明している。


「だから俺に、あの丘の碑石に近付くなって言ってたのか」


 一同は城の地下に移動し、そこにあった碑石を利用する。


 いよいよクレバーネの花を採取しに、セリーヌの開いたゲートを五人は一斉に潜った。

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