31 探しに来た素材の情報が手に入る噺
「さて、本題に戻すぞ」
いつまで観ていても飽きないのだが、さっさと話を進めて、この先の展開も楽しみたい。
「お主等の探しておるクレバーネの花なんだがな」
魔晶石が暴走状態で不安定なままのウイックを救うアイテム。
花の成分を抽出して生成する材料を、マーリアとアンテで作った装置にセットすれば、魔晶石の為の魔力制御を補助する薬が完成する。
「妾の領土には咲いておらんのだ」
「そうなのか?」
魔女様は件の素材のありかを知っている風に話していたが、場所の特定まではできていないような感じで。
「花のある場所を知っている者に、心当たりが有るという事だ」
「つまりそいつを紹介してくれるってことか?」
ウイックの問に、しかし魔女様の表情は険しい。
「実はな……」
魔女セレーヌの魔界での所有地は、実のところ今いる居城のみで、周囲を囲う長城から外は別の魔王のテリトリーなのだそうな。
「妾は魔門界の主権を勝ち得るために、魔界を擲ったのだ。正直、あまり魅力も感じないからな魔界は」
魔王の言葉とは思えないが、それが事実なのだから受け入れるしかない。
「で? そいつに会えば、探し物が見つかるのか?」
「そこなのだ、問題は。そやつはな……」
魔王の名はガイザと言うらしい。
まだ生まれて800年ちょっと、30才過ぎに魔王化したばかりの小僧だと説明される。
「天使とか悪魔とか、魔王とかって次元が違うな」
と言うのはさておき。
「そやつはどうも妾を倒して、名を売りたいのか、事ある毎に絡んできおっての、毎度返り討ちにしてはおるのだが……」
魔王として覚醒するだけの実力を持っているので、セレーヌとしても十分に楽しめるから、討ち滅ぼす事はせず、それなりに遊んでやっている。
「俺と同じって事か、実力の程は違うんだろうけどな」
「いんや、確かに破壊力は桁違いだが、あやつは単細胞だからな。いろんな工夫をしてみせる、お主の方が遊んでて楽しいかの、ウイック」
死ぬ思いで全力で放った技でほぼ無傷と、遊び程度に振るった技で死にそうな思いをさせられた実力差で、どれだけ満足してくれたかは分からないが、あれを期待されて、また死ぬ思いをさせられるのかと思うとゾッとする。
「お主ならあやつとも上手く渡り合えると思うぞ」
とにかく今ある情報はこれのみ。
しかし他の魔王領であっても、侵入がばれる前に、目的の物を見つけて、戻って来さえすれば……。
「ちゃんと話は通してある。妾の使いの者が行くとな」
「……!?」
いらぬ世話を……。
「妾のお気に入りの玩具だと言ってあるから、殺される事はないだろう」
いやいや、旗揚げの看板に箔を付けようと躍起になっている敵の懐に、贔屓にしている冒険者が行くと伝えてって……。
その後の展開が目に見えるようだ。
「安心するがよい、あやつは筋肉絶対主義ではあるが、本気で妾の怒りに触れるような愚か者ではない。妾がその気になれば、その領土共々、一瞬で討ち滅ぼされる事くらいは理解しておるだろう」
十分なお膳立てをしてやっただろう? と言う顔が気に障るが、いらぬ世話が過ぎると突っぱねるわけにもいかない。
表向きには対等に扱われているが、こちらは潰されないように、何かと気を遣うしかないのだ。
「あ、ありがとうなセレーヌ。そんじゃあ、そのガイザって魔王に会って、クレバーネの在処を教えてもらえって事だな」
後ろ盾は十分。後は上手く渡り合う。その為には全員が一丸となって、上手く交渉する必要がある。
「えっ? こいつも一緒に?」
ミルはあからさまに怪訝な顔になり、その想像通りの反応にエルラムは溜め息を溢す。
「ワタクシも貴方と同じ意見ですのよ。ですがセレーヌ様よりメダリオンを賜る際に、ウイックさんのお手伝いをするようにと、条件を頂きましたの」
その条件を受け入れてアイテムをゲットした以上、約束を違えるわけにはいかない。
「俺もそれでいいって言ったんでな。今はこいつも俺達の仲間だ」
明確に宣告されて悪い気のしないエルラム。
お互いの自己紹介、初めて会う二人の為にウイックが簡単に説明する。
「本当に信用していいの? はっ! もしかしてこいつも、ウイックの心を射止めようとしてるんじゃあないでしょうね!?」
「射止める? まぁ、敵対はしてるから命を狙われてもおかしくはないな」
「はははっ、ウイック、マーニーが言いたいのは、そう言う事ではなくてね」
エルラムとの確執と、ウイックの魔晶石の不調の原因だと伝えた後の反応で、そちらの警戒が勝つなんて思っていないから、アンテが訂正してくれても、ピンとも来ない様子に苦笑いが浮かぶ。
「法術士としても剣士としても、当てにできる奴だからよ。今回はセレーヌとの契約もあるし、ヨロシクやってくれ」




