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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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30 「やっと皆が集まり、助けに行った先で唖然とする噺

 空間が歪むのを体感すると、復帰した地点には既に三人の姿があり、最後の合流となったミルは、アンテに理力変換器のお礼を言う。


 この装置にはこの場にいる全員が大いに助けられた。


 アンテもまた師匠であるマーリアに心で感謝する。


「この先の林を抜けたところにいるそうよ」


 誰よりも早くここに飛ばされてきたマニエルがジャコウから聞いたとおり、直ぐに林を抜ける事が出来、そこにいたのは魔女セレーヌとウイックの二人だけ。ではなかった。


「なんであんたがここにいるのよ!?」


「あら、ミルさんお疲れですか? 声だけは立派に出ておいでですけど」


 ウイックは横になり、フルーツを頂いている。


 ミルは倦怠感の抜けない体に鞭打って、男の頭元までズカズカと歩み寄る。


「私達の苦労を余所に膝枕とは、いいご身分ね。ウイック」


 黒ずくめのゴシックロリータは、ああいやいや、何故か黒い看護衣に着替えている法術士は、ウイックが口を開けるたびに、フォークで刺したカットフルーツを食べさせてあげている。


 なんとも仲睦まじい様子に、イシュリーとマニエルも怒り心頭。


「なんなの、このいかがわしい恰好の女」


「いかがわしいだなんて、これは歴とした癒しのアイテム、“なぁす服”と言う物ですよ」


 マニエルの問いに、律儀に応える黒衣の天使。


「本当だ、今気付いたよ。けど看護衣じゃあダメなのか? なんだよ、なぁす服って」


 ウイックは手を見上げた二つの膨らみに当て、丁寧に揉みながら、衣服のチェックを始める。


「いい加減にしろ!」


 近くまで来たミルはフォークを奪ってウイックの額に刺すと、男を起き上がらせた。


「あんたもいい様にさせてんじゃあないわよ。このアバズレ」


「まぁ、酷いですわ。ワタクシの名前、覚えていらっしゃらないの? もしかして物忘れ? 既に老化が始まっているのでしょうか?」


「いい加減にするのはあんたも一緒のようね、エルラム」


 ウイックの額に刺さるフォークを今度はエルラムの足目掛けて投げつけるが、こちらは障壁に阻まれ、弾かれて地面に落ちる。


「はあっ、はっはっはっはあ……、ウイックだけでなく、お主等もホンに面白いな。どうだ、皆揃って妾の元に来ぬか?」


 コントじみたやりとりにご満悦の魔女様。


 ウイックも囚われの身となっていたようでもなく、少女達は一度緊張の糸を緩めた。


「折角の申し出だが、こいつらも条件を満たしたわけだしな」


「もしかしてウイックさん、ずっと観てたんですか?」


 皆が苦労してきたのに、あまりにも寛いだ態度が気になっていたが、イシュリーの言うとおり、四人の状況を知っていたのであったなら、この落ち着きようも納得がいく。


「こやつは分身をお主等の側にずっと置いておったぞ」


「あっ、こらセレーヌ! そう言うのは言わないのがお約束だろ。俺はこいつらを信用して任せたんだからな」


 言わずが花も、ばらされると恥ずかしい限りで、皆がクスクスと含み笑いを漏らす。


「恰好付けようとして、締まりがないわね」


「ウイックらしいよ。昔から詰めが甘いんだよね」


「わ、私は感動しました。ありがとうございます。ウイックさん」


「ずっと見てたって事は私のはだか……、なっ、なんでもない」


 少し赤ら顔のウイックが新鮮で、少女達は声を高らかに笑った。


 ただ一人、黒ずくめの少女だけがどこか冷めた表情で声を潜めていた。


「ウイックさんの分身って、一度にどれくらい作れるんですか?」


 イシュリーのこの質問に全員が興味を示した。


 魔女も法術士も注目する中、ウイックは少し考えて。


「出すだけなら23体くらいかな? けど何かをやらせる。特に戦闘となるとかなり数は限られるぜ。他の秘術も使ってって事になるからな」


 分身を作る為の理力量を制御できれば、誰にでも作れると言うその依り代は。


「髪の毛ですか?」


 イシュリーはキョトンとしているが、どこかの国の物語に出てくるお猿さんが同じように分身を作れると、その昔に読んだ事のあるミルとアンテは大笑い。


「にしてもあんた、魔女様を呼び捨てって、私達が苦労していた間に何してたのよ」


 法術士の事もあり、ミルはウイックに詰め寄り。


「なに、妾達はもう乳繰り合う仲になったからな。ウイックには特別に呼び捨てにする事を許しておるのだ」


 秘術士に代わってしゃしゃり出てきた魔女がまた、誤解を呼ぶ言い回しで答えるのに、仲間達が裏切り者を見るような目で、無言の圧力を掛けてくる。


「メダリオンだ」


「はあ?」


「魔女様がくれたんだよ。俺が欲しいって言ったら、自分に“操体そうたいの秘術”を試すのを条件にな」


 そう言って取り出したのは二枚。


 これは魔界の領土をほとんど主張せず、代わりに魔門界の全てを治める権利を、他の魔王に認めさせた戦利品。


 メダリオンに興味を示した魔女様が探知させたところ、この世界には三枚が有る事が分かり、その全てが魔門界にある事が分かった。


「三枚?」


「一枚はワタクシが頂戴したのですよ」


 そう言ったエルラムの手にも一枚。


「それってどういう事?」


 ミルだけでなく、後ろの三人もウイックに注目。


「しょうがねぇよ。こいつは俺達よりも早くからここに来てたんだからよ」


「それでもセレーヌ様をより楽しませたという事で、ウイックさんの方が多く頂戴できているのですから、苦情なんて受ける筋合いではありませんよ」


 それを決めたのが持ち主の魔王なのだから、文句を言える権利は誰にもない。


「それでその一枚が魔女セレーヌ様に適合したという事ね」


 呆れた話ではあるけど、二人の仲が深まった理由がそれだと魔女様から言われれば、これも不満を抱いたとて、口にする事は誰にもできなかった。

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