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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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26 閉ざされた心に光が溢れる噺

 ランドヴェルノ工房の工房主、マーリア=ランドヴェルノは全てを承諾した上で、アンテの両親からもお願いされ、練金を叩き込んでくれる事になった。


 アンテが工房の書庫にある資料の中から、一番興味をそそられたのは、元来の薬の製法や秘術を付与した理力道具の作成法よりも、物理を駆使した機械構造の理論書だった。


 アンテが様々な発明をしていくのはまたの話として、工房に出入りするようになって直ぐの話に戻り。


「アンテ、お前にスゲー物を見せてやるよ」


 そう言われて連れて行かれたのは工房の物置。


 建物は一緒なのだが、物置には一度外に出てからしか入れない。


 仕事に必要な資料は書庫にあるので、こちらの物置には工房の職人も必要がない限り、誰も入ってくる事のない密室。


 広さとしては一般家庭の一軒家ほど、多くの資料や試作品の類が所狭しと棚に納められている。


 その入り口から最も遠い奥に、頑丈そうな金庫に納められた、奇妙な緑色の光を放つ石を見せてくれた。


「何これ?」


「よく分かんねぇ、母ちゃんが魔晶石って呼んでるのは聞いた事あるけど、どう言った物なのかは分かってないんだと」


 全く分からないが、すごい物だとその身をもって感じているウイックは、知り合って間もないが親友だと思っているアンテに、本当に嬉しそうに宝物を教えてくれた。


「こいつを見てると気分がよくなるんだよな。本当はあんまり見に来てると怒られるんだけど、お前には特別に見せてやりたいと思ったんだよ」


 確かに綺麗な宝石にも見える、不思議な光を放つ石は神秘的にも思えた。と同時にアンテには禍々しさも感じられる、ウイックとは全く逆の印象を受ける物だった。


「さ、触ってもいいの?」


「うーん、多分大丈夫だろう。俺だって触ったからって何かある訳じゃあないしな」


 どうしてそれに触れようと思ったのかは、今になっても分からない。


 だがしかし、アンテが魔晶石に触れると、緑の光はホンの少しだけ赤味を帯びて、直ぐに緑色に戻ったが、その瞬間はとても気持ち悪い感情が湧き上がり、吐き気を催して、手に持った石を落としてしまった。


 今もってそれが原因で合ったかどうかも分からないが、この後直ぐにレベルの高い魔物が数多く町を襲い、ウイックは大怪我を負い、アンテも一時視力を失う怪我をした。


 その後の治療で見えるようにはなったが、低下した視力を取り戻す事はできなかった。


 目が見えるようになった時には魔物は全て退治され、魔物門も掻き消され、ウイックの治療も完了していた。


 アンテが全てを知ったマーリアに叱られる事もなく、責任を感じる必要は何もないと言われても、自分を責め続けるアンテに、秘術で催眠を施し、今まで通りウイックの友人で居られるようにしてもらったから、今も親友だと言ってもらえる。


 アンテにはもうそれだけで一生分の願いが叶った思いで、それ以上を望むのをやめるようになった。


「ビシャナさん、なんで僕に今更こんな物を見せるんだ。今じゃあ催眠術も解けて、全部自分の責任だって事も理解した上で、平常心を保つように努力してるのに」


 場面は変わり、今の自分の姿に戻って、目の前にいるのもウイックではなく、ミルとイシュリーと竜人化したマニエルだった。


 少女達が必死にアークデーモンに向かっていく姿。


 もちろん自分も一緒になって戦ったが、なんの報酬もないのに、想い人のために命懸けになれる3人を前に、封印していた想いが顔を覗かせてくる。


「……ビシャナさん、シュミが悪いよ」


 この結界の掛かった夢から脱出する条件。


 アンテには夢魔の考えがようやく理解できた。


「本当にお節介な魔人様だね」


 大きく深呼吸をして、目を瞑り、とびきりの笑顔を見せると、暗闇の空間は光に満ち、アンテを元いた空間に復帰させた。


「おめでとう」


 拍手で迎えるサキュバス。


「これで貴方の勝ちね」


 自力で結界を破ったアンテは勝負に勝った。


 しかしそう感じる事はできないアンテは首を横に振った。


「うぅうん、やっぱりこの勝負は僕の負けだよ。だって僕の心は、ビシャナさんの思惑通りになっちゃってるんだから」


「そう? 私は十分楽しませてもらったんだけど、それならこの後のその結果も楽しみにさせてもらう事にするわ」


 勝者のいないまま、勝負の決着はついたのだった。

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