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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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17 出し惜しみなく、全力で魔王攻略に挑む噺

 初撃のラッシュを全くモノともせず、しかし全く効いていないわけではないことを、魔王本人が教えてくれたが、ダメージは一切与えていない事も知らしめてきた。


「あれを受けてノーダメージとか、有り得ねぇよ」


 夢物語でも魔王討伐は、勇者が仲間と協力してどうにか為し得るもの。ウイックが一人で立ち向かって、どうにもできないのは至極当然の事だ。


「なんて言い訳を考えている場合じゃあないよな」


 先ずはあの魔力障壁をどうにかしなくてはならない。

 幾つか試してみたい手立てがあるにはあるのだが。


「エルラムの術でドレインキッスだっけ? 大体のイメージは掴めるけど、黙ってやらせてもらえるとも思わんしな」


 恐らくは面白がる魔女セレーヌなら、頼めば試させてくれるのだろうが、ウイックには自分から唇を重ねる事に抵抗があった。


 秘術を初め、こういった術式は明確なイメージをもって、自然界の何に干渉して、マナをどう意識して利用するかを、脳内で固めれば形になる。


 新たな術を構築するのは、実はそんなに難しい話ではない。


 イメージと使用するマナとの相性次第で、発揮される性能差が出てくるので、ちゃんとした研究機関が、時間を掛けて検証する必要があるのだが、ウイック考案の術式は、そのまま採用される事が多いとして、分野では有名になっていた。


「エルラムからもう少し話を聞ければ、ちゃんと使える術にできると思うんだがな」


 恋愛に興味のないウイックには、キスをするイメージが湧いてこないのだった。


 事象をもたらす時、何らかの行為が必要な術は、その行動が持つ作用と言うのが大事になる。


 エルラムが口吻をしてきたのには、それなりの意味があるはずなのだ。


「よし、やっぱりこの手で行くか」


 考えてもまとまらないプランはさっさと切り捨て、次にウイックが選んだ手段は。


「こいつもぶっつけだけどな。いくぜ! “理解りかいの秘術”だ」


 ある意味裏技と言えるこの術は、理を解く事で、対象が集めた理力を分解する力が作用する。


 魔界に在って魔王相手に、魔力分解がどれほどの効果を発揮するか分からないが、その結果の確認はすぐにできた。


「お主!? よくも妾の玉の肌に傷をつけてくれたな!」


 魔女セレーヌの周囲に展開されていた、魔力障壁を掻き消す事に成功した所に、風刃と炎矢をぶつけると、攻撃は魔王に届き、小さな切り傷と火傷を負わせる事に成功した。


 いつ依頼のダメージだろうか?


 言うまでもなく大した傷を負ったわけでもないが、精神的ダメージは計り知れなかったのだろう。


 実際には既に完治している傷に、痛みなんて全く感じる間もなかったのだが、その刹那に怒りは頂点に達し、魔女はその実力の片鱗を男に見せつけた。


「なんて威力だ。やべぇ、防ぎきれねぇぞ! こんなの」


 魔女は浮遊すると、眼下に向けて翳した左掌から、魔力光弾を無数に生み出し、ウイック目掛けて降り注がせた。


 その一発一発がウイックの秘術で言うところの大技に匹敵する。


 それを全て理力障壁で受けきる事はできず、今ある最大の防御術式、“盾硬じゅんこうの秘術”を展開、防御に徹した。


 セレーヌが冷静さを取り戻し、攻撃を止めるまでに、ウイックの周囲は巨大な象二頭分の深さで、男の立つ場所以外の地面に大きな穴が穿たれた。


 広さとしては精霊界王都の王宮、あの謁見の間くらいはあるだろうか、よく凌げたものだと自身の秘術を誇った。


「なんかもう、為す術がないな。魔王討伐を勇者が単独で成し遂げるなんて、夢想でも無茶苦茶な話なんだな、やっぱり」


 後ろでは四人が奮戦している。今のペースでも対アークデーモン戦が決着するまで、持ち堪えることはできるだろう。


 しかしそれは魔女が痺れを切らすまでの話。


 例え、さっきの手順で魔女の魔力障壁を掻き消し、炎氷雷撃の三立てを喰らわしたとしても、それで倒せる相手ではないだろう。


 本人の耐久力が全く分かっていないので、それを実施する覚悟が生まれない。


 ほんのちょっと傷を負わせただけで、これだけの報復を受けたのだ。


 生半可にダメージを与えたら、あっさり消滅させられるだろう事を臆したとして、何の羞じにも思いはしない。


「向こうの悪魔の数は20匹ちょっとか……、そろそろいいかな?」


 周囲警戒をする“索敵さくてきの秘術”で、後ろの戦況を確認したウイックは、徐に諸手を挙げて、魔女セレーヌに対して降参を認めた。


「本当に良いのか?」


 逆鱗に触れたのはホンの一時、冷静さを取り戻しているセレーヌは、上空から降りてきてウイックと目線を揃える。


「お主は妾の物となるのだぞ」


「それなんだが、一つ取引がある」


「降参しておいて条件を出してくるか。よいよい、内容次第で、お主の望みを聞き入れてやろうではないか」


 二、三言、言葉を交わした後、間もなくアークデーモン共を一掃するであろう少女達に、魔女セレーヌは勝利宣言をした。


 動きを止める少女達、残りのアークデーモンも姿を消し、絶望感が四人を襲った。

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