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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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16 上級悪魔に立ち向かう少女達の噺

 ミルは右手で頭を刎ね、左手で襷掛けに切り伏せる。二振りで二匹を屠り、目の前の一匹を右手の返す振り下ろしで縦に両断する。


 マーリアから貰ったバスタードソード、秘術の秘の字も知らないミルだが、ランドヴェルノ工房の技術で、剣には理力が宿り、威力はもちろん衝撃波のパワーも上がっている。


 理力に必要なマナをアイテムで変換吸収して、全く術に精通していないミルでもこれだけの力を発揮する。


「何匹でも掛かってらっしゃい。いくらでも相手になるわよ」


 辺りは敵だらけ、仲間の姿は見えないが、奮闘中である事は伝わってくる。


 この状態では距離を取って闘う事はできない。誰も援護も得られないまま、皆が個々に近接戦闘を強いられるが、誰一人と腰の引けている者はいない。


 イシュリーは両の拳に、魔力から変換した精霊力を集め、一撃の破壊力を増強する。


 アークデーモンの防御力はドラゴンに匹敵する。しかし獣王の正拳突きは打たれた箇所を一度で吹き飛ばす猛攻で、次から次へ悪魔を消滅させていく。


「この装置を使えば、今の私でも獣王拳が打てる。これなら相手がアークデーモンでも闘えます」


 戦闘経験のないマニエルの、その戦闘力の高さが特筆すべき点であろう。


 戦い方も避け方もハチャメチャだが、硬度の高い体は、防御も攻撃もてんでデタラメでも、悪魔を黙らせる働きを見せている。


「竜人化しても私は可愛いけど、あんたらなんかに優しくはないんだからね」


 アンテはサイドアームにゴーレムハンドではなく、シザースハンドを取り付け、右手には理力銃、左手には理力剣を持ち、自動展開する防御障壁も問題ない。攻防一対の戦術で、四人の中で一番の戦果を上げている。


「僕だって、錬金術師として体は鍛えてきたんだ。こうして機械サポートがあれば、高位の悪魔を相手に闘う事だって!」


 30匹のデーモンを倒すのに掛けたのは、井戸の水を火にかけ、沸騰するくらいの時間。

 出だし好調の四人は、ようやく集まる事ができた。


「二人ともすごいじゃない。アンテは一度闘ってるの見てたけど、マーニーも冒険者として、十分やっていける強さなんじゃない?」


 戦闘の興奮も相まって、煽てた事を後で大いに反省するミルだが、今は勢いはこちらにある。四人は再び四方に散り、各個撃破を継続した。


 各々がまた3~5匹の悪魔を退治した時、それは実感できるほどに急変した。


「なにこれ!? こいつらレベルに差でも付いてたの?」

「ち、違います。こ、これは……」


 最初に焦りを見せたのはマーニー。敵が明らかに強くなっているその理由にアンテが推測を立てる。


「闘っている間にレベルアップしてるんだよ。どうやってかは分からないけど、この短時間で、あっと言う間に強くなったんだ」


「アークデーモンの特性よ。仲間が滅ぶ時に発する怨念を残りの者が吸収する。仲間の経験値を受け継ぐ事ができるの」


 ミルはその習性を初めから忘れてはいなかったのだが、まさか上限がないのではと思えるほどに、どんどんとレベルアップしていくとは思っていなかった。


「それでもまだ後れを取るほどではないわ。アンテはマーニーのフォローに回ってあげて、私たちはこのまま各個撃破を続けるわよ、イシュリー」


「はい、分かりました」


「……しょうがないわね。アンテ! 当てにしてるからね」


 素直に承諾するイシュリーと、こちらは少し意外だったが、アンテを素直に受け入れたマーニーは、勇んで前に飛び出した。


「さてと、私も遊んではいられないわね」


 ストレージにバスタードソードをしまい、愛刀のグレートソードを引っ張り出す。


 こちらにも理力補助機能で魔力が上乗せされている。


「一気に数を減らすのはここまで、ここからは力押しで確実に数を減らす」


 イシュリーも腕に金属の爪を付け、アンテもアタッチメントをゴーレムハンドに換装済み、マーニーはそろそろ後ろに下げる必要があるようだ。


「マーニーは下がって、アームバンドを着けなさい。これ以上竜人化が進んだらまずいわ」


 いつの間にかお尻の上辺りから生えてきた尻尾は、破壊力十分の強力な武器と化しているが、それだけ魔力に蝕まれているということ。


「私、まだやれるよ」


「アンテ、貴方の強化版魔力吸引機、成功の確率は?」


「100%と言いたいところだけど、こればっかりはやってみないと、絶対は言えないかな?」


 完全に竜人化すると、ヘタをすれば脳に障害が起きるかもしれない。マーリアが出発前に話していた。


 マニエルが同行を許可された条件は、ミルの言う事をきちんと聞く。だった。


 しょうがなく渋々にだが、言われたとおりにミルの指示に従い、アームバンドを着けて、理力制御の装置で魔力を体内から吸い出す。


「アンテはそのままマーニーに付いていてあげて。後は私たちで残りを片付けるわよ」


 程なく悪魔の数は半分を切り、益々悪魔のレベルが上昇するが、その能力向上も限界が見え始めている。


「ここが正念場。さっさと終わらせて、ウイックを援護して、魔女セレーヌを屈服させるわよ」


 時々、ちらちらとそちらの方に目を向けているが、あのウイックが夢のような強力な秘術を使用して、それでも決定打を与えるに至っていない。


 それが感じ取れるだけに、向こうが気になってしょうがない。


「ブラストアークドラゴンを討ち取ったあの術なら、あるいは……」


 しかしその為には、理力をまとめ上げる時間を作らなければならない。


「ミルさんスミマセン、私の方もあれの準備に時間が掛かってしまって」


「大丈夫よイシュリー、このままでも押し切れるわ。ウイックにはあと少し、踏ん張ってもらいましょう」


 イシュリーはカガクの力を借りて、奥義である獣王拳を使えるようになった。


 気合いを込め、渾身の一撃を打ち放つ。


「拳圧が獣の形になってる。すごい破壊力ね。物理障壁まで使い出したアークデーモンが、宙を舞う木の葉みたいに吹き飛ばされてる」


 ミルのグレートソードを用いた剣技も、イシュリーの格闘術に負けずとも劣らず、魔法障壁も物理障壁も何のそので叩き潰し続け、残りは30匹。アークデーモンのレベルアップは頭打ちとなっているようだ。


「あともう少し、私達の敵じゃあなかったわね」


 肩で息をするくらいに疲労が重なってはいるが、ミルもイシュリーもまだ体力は残っている。


 しかし敵の数が20匹を下回ったあたりで、少女達は絶望を感じる事態に見舞われるのであった。

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