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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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12 カガクの錬金術師の実力を拝見する噺

 今日、魔物門が現れたのは、町から過ごし離れた森の中、普段から低級な魔物が出てきては、冒険者協会の初級レベルの冒険者が討伐に向かっているが、この日はそう言うわけにはいかなかった。


「キメラですって!?」


 出現した魔物は全て中級以上、強力な魔獣が12匹確認されている。


 中でも一番の衝撃だったのがキメラの存在。


 多数の魔獣の中で、一際異様な魔力を孕んだ獅子が、翼を大きく広げ、尻尾の蛇で威嚇し、大鷲のかぎ爪のような前足で襲いかかってくる。


 当然、初級冒険者が戦えるわけもなく、ウイック達は全速力で現場に向かった。


 魔獣は群れで行動しない物が多い。時間が経つと直ぐに散ってしまう恐れがある。間に合う事を祈って猛ダッシュ!


「見えた。まだ辺りを警戒してる。動き出す前に捉えられたな」


 ウイックが一歩先に出る。


「突っ込むぞ。大物はアンテがやれ! ミルは一緒について行ってくれ」


 森の中の敵にもこちらに気付かれ、二匹のサーベルキャットが飛びかかってくる。


「イシュリー、二人を頼む」

「分かりました」


 なぜか付いてきているマーリアとマニエルをイシュリーに任せ、ウイックは力為す言葉を発す。


 森の木々がざわつく、刹那に二匹のサーベルキャットは、木の根の先端に貫かれた。


 大きな牙の二匹の猫を襲ったのは、“操樹そうじゅの秘術”と言う術。


 ウイックの制御下に入る木々が、根っこや枝が槍のように尖って魔獣を攻撃したのだ。


 この術は有効範囲にいる、意識を持たない有機物を操作する術で、木だけでなく草も花も本能のみで生きる虫なども、自由に操作できるようになる。


 魔獣達はツタに動きを抑えられ、虫達に視界を遮られてしまう。


「よし! アンテ、行け!!」


 火系の術が使えれば、魔獣なら一瞬で多数を片付ける事ができるが、森を焼かないため、森の生き物を最小限の被害に抑えて護るために、ウイックは時間は掛かっても一体ずつを相手にしなくてはならない。


 アンテとミルは、この場のボスと目されるキメラの前に躍り出て、攻撃を開始する。


「ミルさん、こいつは僕に任せて。後ろはきっとウイックが抑えてくれる。けどそっちから魔物が流れてこないか、そちらの警戒をお願いしたいんだ」


 アンテはまだ手の届かない距離で足を止め、ストレージから取り出した持ち手のある歪な恰好の箱、理力を用いる飛び道具“理力銃りりょくじゅう”を構える。


 キメラはアンテを敵と認め、森の中だというのに炎を吐いてくる。


 こちらも理力銃で応戦、親指大の理力の塊を連続で撃ち出す。


 アンテの攻撃はキメラの吐く火球を打ち消し、更には魔獣の右足と左の翼にもヒット。叫び声を上げるも、全くダメージを感じていないかのように羽ばたき、木々を避けて上空に舞い上がる。


「しまった、あいつ空から町に向かうみたいだ」


 今までもマーリアと一緒に魔獣退治をしてきた。経験値はそれなりにあるつもりだったが、キメラがこんなに簡単に目の前の敵を無視して行動するなんて、アンテは思ってもいなかった。


「何やってんだ。捕まえてやるから、仕留めろよ!」


 自分の仕事をしっかりとこなしながら、ちゃんと辺りを見通していたウイックは、蔓を束ねて上空にいるキメラの後ろ足に絡ませた。


「サンキュ-、助かった」


 アンテは腕の長さほどの筒を、弾の飛び出す穴に填め、脇で銃の持ち手を固定する補助具も付けて、専用の望遠鏡を装着すると、遠見を始め、すぐさま理力の弾を撃ち放った。


 飛び出した二発の弾は、キメラの両方の翼をへし折った。


「今度のは魔力障壁を分解する弾だからね。平気なわけないでしょ?」


 落下するキメラ、そのまま蔓で絡め取る事もできたが、任せろと言ったアンテには責任を取ってもらわないといけない。


「今度こそ決めろよ」


 ウイックは目の前にいたグレートボアの土手っ腹に、“光束こうそくの秘術”で大きな穴を穿った。こんがりと焼けた匂いが香ばしい。後一仕事とばかりにキメラを地面に、アンテの目の前にひっぱり落とした。


「今度こそ、いいところを見せないとね」


 ゴーレムの手を付けたサイドアームで殴りかかると、キメラはかぎ爪で応戦するも、一撃一撃の破壊力はアンテのゴーレムハンドの方が上回り、嫌う魔獣は後ろに下がり、火球を吐き出す。


 この攻撃は最初に接近した時と同じ、全てを長筒や望遠鏡を外した状態に戻した理力銃で打ち落とす。


 攻撃が効かないと見るや否や、キメラはアンテ目掛けて突進してくる。


 カウンター狙いで殴りかかるが、アンテのサイドアームは横っ飛びしたキメラに見事にかわされ、今度は敵からのカウンター返し、尾っぽの蛇が襲い来る。


「気をつけて、蛇には猛毒が!?」


 手の届く範囲に迫るキメラの進路をミルが遮り、注意を引きつけてくれる。


「このバックパックの防御障壁は、自動で展開されるから平気ですよ」


 磁力を利用した障壁で、飛び掛かってくる蛇の頭を弾き飛ばし、体が伸びきったところを、理力を固めた刃でできた剣、“理力剣りりょくけんで本体から切り落とす。


 蛇の頭をサイドアームで潰し、ミルを睨んで動きを止める本体の首を理力剣で一凪。


「どういう仕組みかよく分からないけど、すごい切れ味ね」


 首を刎ねられ動かなくなるキメラ、今回魔物門騒動で現れた魔獣は全て討伐された。


「広い場所でないと使えない物は出せなかったけど、僕が主に使うのはこの三つ、理力付与のされたプラズマブレードと、理力の弾丸を撃ち出すブリットガン、それとこのサイドアームには様々なアタッチメントがあるんだけど、今使ったのがゴーレムハンドね。その他には……」


 一度で覚えるには不可能と判断し、ミルは思考を停止。


 合流したイシュリーも一緒に聞いて、知恵熱を出して目を回した。

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