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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第二幕   類い希な生い立ちを過ごした男の探遊記
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10 開催、少女達の熱き戦いの噺

 三人掛けのソファーに少女達が、向かい側に二つ並んだ一人掛けの椅子にウイックと、一緒に戻ってきたマーリアが腰掛けた。


 母子の表情は険しく、少女達の緊張も高まる。


「悪いが二人との冒険は一時休止しなきゃなんねぇ」


 昨日二人の意志を確認したばかりなのだが、大きな問題が発覚し、そうも言ってられなくなった。


「理由は何? 納得させたいなら包み隠さず、本当の事をいいなさい」


 驚きを隠せないイシュリーと、少し腹を立てた様子のミル。


 反応は正反対だが、どちらも説明を求めているのは一致している。


「理由な。言わなきゃだよな……、そうだよな」


 歯切れの悪い様子は、いつも不貞不貞しい自信家にはあるまじき行動。


「隠してもしょうがないでしょ。あんたが自分で言うって言ったんだから、腹括りなさい」


「分かってるって、……俺はこれから魔門界に行く事になった。精霊界みたいに人種ひとしゅに友好的な世界じゃあないからな。俺もあそこじゃあ、どんな事が起こっても安心しろ。って言ってやる自信がねえ」


 魔門界は魔物門で大海洋界と簡単に繋がる事のできる、一番近い世界として認識されているが、人種ひとしゅが足を踏み込んだ史実は数えるほどしかない。


 何があるか分からないという事もあるが、魔物や魔人など、他者に害為す存在が闊歩する世界、どれだけ生存能力が高くとも、他人の安全まで約束することなんてできやしない。


「侮らないでくれる? 自分の身は自分で守る。厳しい世界だからって目を背けてたら、あんたにも、あのいけ好かないゴスロリにもいつまでも追いつけない。死んでも仕方ないなんて言わない。必ず生きて、今よりももっと強い自分になってみせる」


「私は貴方と生きていくと決めたんです。生きるために貴方を待つのは嫌です。私って、こう見えて欲張りなんです」


 ウイックの言わんとする事は理解できる。


 ただそれを理由にされても、自分の信念を曲げる事を二人は良しとしない。


「そうか、じゃあみんなで行くか」


 こうまで言われては拒む事は出来ない。


「これでいいんだろ師匠?」


「……どういう事?」


 母子のやり取りを見て首を傾げるミル。イシュリーも同様の反応を見せる。


「貴方達の覚悟を聞いて起きたくてね。私がもう一度確認するように言ったの」


 ウイックが釘を刺したのは脅しでも何でもない。

 それをモノともしない決意がなければ、話を先に進める事もできない。


「少し観察してみたんだけど、魔晶石の状態は、私が見てきた中で一番活性化していてね、このままにはしておけないのよ」


「それは魔門界に行く事で解決できるんですか?」

「それは分からないわ」

「はい?」


 きっと今の大海洋界で一番魔晶石の事を把握しているであろう、マーリアでもハッキリとは言い切れない状況、少しでも可能性があるのなら、と言ったところなのだろう。


「そう、結果を出せる保証はないの。でも試すしかないからね。それに必要な材料を取りに行くのよ」


 それが魔門界にあると言う保証もない。文献を読んで出てきた内容、そこに一縷の望みを託すしかないのだ。


「ハイリスクなのに、骨折り損になる率が高いからな。それでも俺はお前達にも来て欲しいんだ。けど俺の我が儘ってことなら、それはしちゃあいけないと師匠に言われたんだよ」


 試すような事をしてごめんなさいと、改めて謝罪し、この子のために本気になってくれてありがとうと、感謝を述べた。


「それじゃあ私は、これからミル、貴方の装備を調整するから、夕飯の準備、貴方達にお願いするわね。料理はできるわねよ」


 食材は豊富に揃えてあるが、何を作るかは任せると言われ、二人は腕を捲った。


「任せてください。私は神殿で一人暮らしをしてますので、もちろん自炊もしっかりやってますから」

「ソロのハンター歴も長いですからね。自分で料理もできないんじゃあ、とっくに餓死してますよ」


 自信満々なのは心強いが、得意料理にはかなり差がありそうだ。


 食卓も賑やかになりそうで楽しみも増し、マーリアは助手にウイックを連れて工房へ。


「私も料理は得意だから、三人で勝負よ。誰が一番ウイックの舌を唸らせるか、一番の人が今晩ウイックの添い寝。それでいいわね」


 ヤケにテンションの高いマニエルだが、ミルはそんなご褒美望んではいない。


 乗り気のイシュリーには悪いが、いち早く辞退しておいた方がいいかと思い手を挙げたのだけれど。


「なに、逃げる気? さては本当は料理ヘタなのね」


 などと発破を掛けられ、引くに引けなくなったミルも全力で料理対決に参加し、食べきれないご馳走の数々を目にしたマーリアに、しっかりと怒られたのは言うまでもない。

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