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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第一幕   若くして大秘術士と謳われる男の探遊記
33/192

32 強力な魔獣を相手に、二人の苦闘が描かれる噺

 二人で続ける攻撃も成果を出せないまま暫く、辺りの精霊が徐々に戻り始めていくと、イシュリーの技も威力が増し、グレートソードを繰り出すミルの攻撃がアークアースドラゴンの猛攻を上回り、魔獣の動きは鈍くなっていく。


「堅いわね。関節攻撃は効果が出てるけど、致命打にするには鋼の皮膚を破んなきゃ」


 イシュリーが後方からドラゴンの背中に乗り、頭の方へ駆け上る。


 可動式のかぎ爪を180度回転し、握り拳で後頭部を思いっきり殴りかかる。


「これもダメ!? ドラゴンの頭蓋は熟知しているのに、弱点を突いても全く攻撃が通っていません」


 二人は走り回り、隙をついては強力な攻撃を仕掛けるが、どれほどの損傷を与えているのかが量れない。


 ドラゴンは固有スキル“アースクエイク”で反撃もしてくる。魔力を帯びた衝撃で、指向性のある振動が襲いかかり、二人の足下にだけ局地的な地震が起こる。


 動きを止められた瞬間に、ドラゴンブレスを撃ってくる。


「面倒くさい奴ね。結構時間経ってるけど、……ウイックはまだ動けなさそうね」


 ミルのグレートソードにはかなり強力な理力付与が行われており、四大元素を使った衝撃波なんかも出せるのだが、イシュリーもそうだが、精霊力が薄まっている為に使用できずにいる。


 獅子奮迅の働きではあるが、決定打を生み出せず、それでも攻撃を続けた。


「少しは力が入るようになってきたが、自然回復を待つとなると、まだ時間が掛かりそうだな」


 二人の奮闘を観戦しているのも悪くない。そう思えるほど安心して見てられるものの、どう考えても、先に体力を使い果たすのがどちらかは、火を見るよりも明らか。


「一発だ。あいつを消し飛ばす一発さえ打てればいい」


 まだ戦闘に参加できるほど回復してはいないが、後先考えずに全力を振り絞ることを決断するウイックだったが……。


「いいや、お前はもう何もしなくて良いぞ」


 秘術士の右側に立ち、声を掛けてきたのは。


「誰だあんた?」


 気安く語りかけてきたので、顔見知りだと思ったが、その顔に何となく見覚えがあるような? 知っている誰かに似ているのは間違いない。


「もしかして女王陛下のお袋さんか?」


 年の頃で言えばミルやエルラムに近いように見えるが、ここはメルティアンの郷、23歳の子がいるが、見た目が18歳というのも珍しくないのではないだろうか。


「何を言っておる? 私だ、ティーファだ」


「いやいやいや、あの陛下嬢ちゃまがそんなナイスな体型な訳ないだろ」


「本当に貴方は不届き者ですね」


 左側から出てきたのもまた見知らぬ顔。いや、この顔は……。


「お前は……エレノアか?」


「呼び捨てにしないでください。でもまぁ、見ての通りです」


 その姿は23歳、年相応の、少し妖艶さを纏った大人な感じが漂ってくる。


「いったいどうして……、ああ! 精霊力が薄いからか」


「そうだな。今は体内の精霊力で動いておるが、その分若返りまでカバーできんからな」


 普段は力を使わないと年齢相応の体型を維持できず、逆に今は力がないから幼い姿ではいられないでいる。


「しかしお主、牢屋破りまでして仲間の元まで来たのは立派だが、こんなところでへばっておるようじゃ、まだまだだな」


「牢屋破りはしてないさ。俺はまだあの城にいるだろ?」

「減らず口を……」


 全身鎧を纏った騎士が五人、二人の後ろに並び、命令を待っている。


「まぁよい。お主はゆっくりしているといい、後はこの私、ティーファ=ベルビアンカ=ラクシュバームとその近衛師団“暁の乙女”に任せるが良いぞ」


 騎士団長エレノアの号令で、鎧騎士達はミル達の元へ、前線へ駆け出していく。


「しかし斥候部隊の報告を受けて来てみれば、まさかアークアースドラゴンが生息していたとはな」


「よくここが分かったな? 洞窟からここってそんなに近いのか?」


「近いと言えば、近いが我が隠密部隊は優秀だからな。このような騒ぎが起これば直ぐに見つけてくれる。さて私もそろそろ前に出る事としよう」


「なんだ、女王様自ら戦うのか?」


「国を治める者として、私以上の精霊術士、剣術士はおらんからな」


 最強の戦士だからと言って、国王自らが打って出る必要があるのは、アークアースドラゴンが最大級の災厄と認められているからだ。


 精霊の力も戻りつつある。これだけの戦力が加担してくれると言うのなら、ここでもう少し休んでいられるだろう。


 いざとなれば全てを投げ打つ覚悟は出来ている。


 この旅を始めるときに、そう腹をくくって故郷を出たのだから。

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