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若くして大秘術士と謳われる男の探遊記  作者: PENJAMIN名島
第一幕   若くして大秘術士と謳われる男の探遊記
26/192

25:秘術士と法術士、相対する噺

 男に馬乗りにされたイシュリーは、今まさに服を剥ぎ取られようとしている。


 抗うことを許されず、なすがままのイシュリーは強く目を瞑り、歯を食いしばって耐えようとしていた。


「おっさん、調子に乗ってんじゃあねぇよ」


 それはずっと心の中で念じ続けた、助けを願った男の声だった。


 目蓋を開けると、自然と涙がこぼれ落ちた。


「なんだお前、どこから出てきやがった!?」


 突然背後からの殺気を感じて、男はイシュリーから離れて立ち上がる。


「大丈夫かイシュリー」


 男とイシュリーの間に入り込むウイックは手を差し出した。


「はい、大丈夫です。貴方の純血も守れました」

「そ、そうか。それはよかった」


 洞窟内のあちこちで男の呻き声が上がっている。


「くそ、なんだ。なにが起こってやがる!?」


 気が付けば辺りには、お楽しみを邪魔しに割り込んできた、目の前にいる男と、全く同じ顔をした九人の影が暴れ回っていた。


 次々と伸されていくゴロツキども。


「ウイックさん、本当に来てくれた。私、心の中でずっと願ってて……」


 イシュリーは初めて見る身断の凄まじさに目を丸くし、同じ方法で身代わりを城に置いて駆けつけてくれたと説明するウイックに、思いっきり抱きついた。


「おいお前ら、俺をほっぽって盛り上がってんじゃあねぇぞ」


 あっと言う間に、立っているのは自分だけとなったリーダー格の男は、じんわりと後ずさりながら、呪文の詠唱を呟き出す。


 当然の事ながら詠唱を必要としない、ウイックの放った風の刃が先に敵を捉え、あっさりと男はこの世を去った。


「藍玉の皆さんもいらっしゃったんですね。みんな無事でよかった」


 まだ少し腰の抜けたままのイシュリーは、ウイックに抱きついたまま周囲を見回した。


「ミルさんの姿がありませんが?」


 藍玉騎士団は、紅玉騎士団員一人一人の安否を確認している。気が付けば辺りの精霊力も元に戻り始めているようだ。


「この人達、なんだったんでしょう。いったいどこから?」


 大分落ち着いてきたイシュリーは、自分の足にしっかり力を入れ、ウイックから手を離した。


「あの、お尻そろそろいいですか?」


 臀部に感じる刺激を止めてもらい、イシュリーは足下に転がる仮面を拾い上げて装着する。藍玉騎士団長を見つけ、話を聞こうと歩き出すのをウイックは引き留めた。


「この先にちょっと厄介な奴が来てるんだ。こいつらはそいつにくっついて最下層の門から入って来たのさ。わりぃけどイシュリー、ちょっとミルの所に急ぐ。お前は騎士団が回復するまでここで守っててやってくれ」


「はい? でしたら私も……」


 イシュリーもミルのことは心配しているだろうけど、相手が相手だけに疲労の溜まった少女には我慢してもらう必要がある。


「どうやら私ではお役に立てないと言うことですね?」


 やむを得ず首を縦に振るイシュリーを置いて、ウイックはミルの元へ。


 ミルもイシュリーと同じように、足下の覚束ない状態になっていたが、いつも通りにウイックに強烈なボディーブローで突っ込みを入れるくらいの体力は残していた。


「悪いなミル、ちょっとこいつとは因縁があってな。ここからは俺がやらせて貰う。お前はイシュリーの所に行っててくれ」


 突然やってきて、全て承知しているウイックには聞きたいことが山ほどある。


 だけど今はその時ではない。ウイックに言われなくても、自分では足手まといなるだけなのは分かっている。


 しかしできる事なら闘いの行方を見届けたい。


「頼むよ、ミル」

「分かったわ。後でまた……あんたの好きなことさせてあげるから」


 ここは全てを相棒に任せて、後ろ髪を引かれながらも走り出すミルを見送り、ウイックは二人きりとなったエルラムに向きを変える。


「こっちの話が終わるまで、待っててくれてありがとよ」


「いいえ、ワタクシはただ、貴方と二人きりになりたかっただけですから」


 うそぶくエルラムは不用意に近付いてくると、徐にウイックの唇を奪おうとする。


「そういうのはいいわ。お前とはそんな気分にならないからよ。場所変えないか? ここじゃあ狭いだろ」


 女を拒絶しながらも、手は彼女の胸元に向かうが、そちらも相手に逸らされて宙ぶらり、二人は少し間を空けた。


「嬉しいですわ。ワタクシと思いっきり遊んで頂けると言うことですわね」


「ちょうどいい拓けた場所も見つけてあるからな。思う存分殺り合おうぜ」


 ミルと約束していた、勝てばメダリオンを譲ると言う話。それについても了解を得て、二人は連れだって地上を目指す。

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